昔の軽自動車は個性派ばかりだった!? 往年のスタイリッシュな軽自動車3選
くるまのニュース / 2022年1月28日 6時10分
近年、日本の自動車市場でトップセラーといえば軽自動車です。なかでも軽トールワゴン/軽ハイトワゴンが主流となっていますが、デザインについては画一的な印象があります。しかし、かつてはかなり個性的なモデルも存在。そこで、往年のスタイリッシュ軽自動車を、3車種ピックアップして紹介します。
■画一化されていない頃のスタイリッシュな軽自動車を振り返る
日本独自の自動車規格である軽自動車は1949年に法律で制定され、1954年には現在のようにボディサイズと排気量が厳密に決められました。
軽自動車は庶民の足として普及しただけなく、軽トラックなど商用車が小口の物流を支える存在となり、現在は日本の自動車市場でトップセラーに君臨しています。
なかでも近年、各メーカーの主力となっているのが軽トールワゴン/軽ハイトワゴンです。
しかし、限られた小さなボディでいかに内装のスペースを稼ぐかが軽自動車の課題であり、軽トールワゴン/軽ハイトワゴンはどれも似通ったスタイリングとなり、画一的な印象があります。
一方、昔の軽自動車にはかなり個性的なモデルも存在。そこで、往年のスタイリッシュ軽自動車を、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「ミニカ スキッパー」
スタイリッシュなだけでなく斬新なアイデアも盛り込まれていた「ミニカ スキッパー」
軽自動車は、1955年に当時の通産省が発布した「国民車構想」を軸に開発され、マイカーの普及を担っていました。
その後、1960年代の終わりには軽自動車へのニーズも変化し、高性能化が進み、軽自動車市場ではパワー競争が繰り広げられていました。
さらに、同時期には外観のデザインでもライバルに差をつけるために、スポーツカーやスペシャリティカーも次々に誕生。
そこで三菱は1971年5月に、軽自動車市場に「ミニカ」の派生車として「ミニカ スキッパー」を投入しました。
外観はスポーツクーペの「コルトギャラン GTO」のデザインをオマージュし、流行のファストバックスタイルを採用しました。
とくにフロントフェイスはGTOと同じく丸目4灯ヘッドライトを装着して精悍さを表現し、リアは斬新なガラスハッチの「ハイカットオフテール」で、さらに後方視界を確保するために日本初の「スクープドウインドウ」がボディ後端に採用されました。
スクープドウインドウは現行モデルのトヨタ「プリウス」も採用しており、リアガラスとは別に取り付けられている「小窓」で、当時としてはかなり斬新でした。
また、バケットシート、カーステレオ、ラジアルタイヤなど、登録車に匹敵する充実した装備となっていました。
スポーティな外観だけでなく、トップグレードの「GT」には360cc水冷2サイクル2気筒の「2G10型」ツインキャブエンジンが搭載され、最高出力38馬力(グロス)を発揮。最高速度は120km/hに到達しました。
その後、排出ガス規制の強化に対応するため、1972年10月に水冷4サイクルの「バルカン」エンジンに換装され車名を「ミニカ スキッパーIV」に改め、1974年まで生産されました。
●ダイハツ「リーザ」
実用的な軽自動車ながら室内空間よりも外観のデザインを優先した「リーザ」
スズキは1979年に初代「アルト」を発売。徹底的なコスト削減に加え、商用車登録とすることで物品税が免税されるという税制を利用するかたちで、47万円という低価格を実現して大ヒットを記録しました。
その後、ライバル各社からも「軽ボンネットバン」が次々に発売され、1980年代の軽自動車市場では主流となりました。
同時期のダイハツの軽自動車というと実用性を重視した軽ボンネットバンの「ミラ」が主力商品でしたが、1986年に、ミラをベースにしたスタイリッシュなモデル「リーザ」を発売。
リーザは若い女性ユーザーをターゲットに開発され、外観は全高を低くしたクーペスタイルの3ドアハッチバックで、リアシートの居住性や荷物の積載性よりもデザインが優先されていました。
搭載されたエンジンは最高出力50馬力を発揮する550cc直列3気筒ターボと、32馬力の自然吸気2タイプで、トランスミッションは2速AT(後に3速ATに換装)、4速MT、5速MTが設定されました。
「プライベート感覚」や「ファッション感覚」といった感性に訴えかけるコンセプトが受け入れられ、実際に女性ユーザーを中心に人気を集めました。
そして、1991年にはリーザのルーフを切り取り、ソフトトップを装着したオープン2シーター車の「リーザスパイダー」が登場し、まさに「バブルの申し子」といえるモデルとして今も語り継がれる存在です。
リーザは一定のニーズがあり660cc規格になった後も継続して販売されましたが、シャシが旧規格のままだったことから1993年にフルモデルチェンジせずに生産を終了。前年の1992年に、実質的な後継車として「オプティ」が発売されました。
●ホンダ「ビート」
デザインとともに各部の作り込みもかなり本格的だった「ビート」
ホンダは1974年に、初代「シビック」の生産に注力するため軽トラック以外の軽自動車の販売を終了しました。
その後、1985年に初代「トゥデイ」を発売し、軽ボンネットバン市場に改めて参入を果たしヒットを記録。さらなる軽自動車の開発を進めました。
そして1991年には、軽自動車初となるミッドシップ2シーターのオープンカー、「ビート」を発売。
外観はオープンとクローズ、どちらの状態でもスタイリッシュで、軽自動車という限られたサイズながら美しいフォルムを実現。
リアアクスルの直前に、横置きに搭載された660cc直列3気筒SOHCエンジンは、独立3連スロットルの吸気システムを採用することで、660cc自然吸気エンジンでは現在に至るまで唯一となる最高出力64馬力を発揮しました。
足まわりは前後マクファーソンストラットの4輪独立懸架で、軽自動車初の4輪ディスクブレーキを標準装備し、フロントが13インチ、リアが14インチの前後異径タイヤの採用など、ミッドシップスポーツカーにふさわしい仕様となっていました。
ハンドリングはクイックながら安定志向の弱アンダーステアのセッテングで、64馬力を使い切って走る楽しさが味わえました。
ビートは1996年に一代限りで生産を終了。すでに絶版となってから25年以上経ちますが、現在も愛好家が数多く存在することから、ホンダは一部の純正部品を再生産するなどユーザーサポートをおこなっています。
※ ※ ※
最後に紹介したビートのデザインは、イタリアの名門カロッツェリアである「ピニンファリーナ」が関わっていたのでは、という噂があります。
発売当時のファクトブック(プレスリリースとは別の詳細な資料)には、デザインスケッチとともにホンダのデザインチームの写真が掲載され社内デザインを強調していますが、これまで真相は明らかになっていません。
可能性があるとすればデザインの原案や、かつて「シティ カブリオレ」のソフトトップの設計をピニンファリーナが担当していたので、同じくソフトトップの機構やスタイリングでアドバイスを受けていたのではと考えられます。
いずれにしても、ビートのデザインが優れているからこその噂ではないでしょうか。
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