トヨタの商用バン「プロボックス」はスポーツカーと同じ方向性だった!? 高速道路を“最速”で走れる訳
くるまのニュース / 2022年2月21日 10時10分
商用バンとして絶大な人気を誇るトヨタ「プロボックス」。一部では「高速最速!?」とまでウワサされるほど速いと評判です。なぜ商用バンであるプロボックスが高速道路で最速で走れるのでしょうか。
■荷物の積載性が最優先! 走れる商用バン「プロボックス」
高速道路を走行中、追い越し車線をかなりのペースで走り去っていく「商用バン」を見かけた経験はありませんか。
「なぜそんなに飛ばす?」と同時に「なぜそこまで飛ばせるのか?」と思ったことがある人も多いでしょう。
商用バンのなかでも絶大な人気を誇っているのがトヨタ「プロボックス」です。そしてこのプロボックスがやたらと速く、ヘタすりゃ「高速最速!?」とまでウワサされています。
なぜ商用バン(とくにプロボックス)が高速で速く走れるのでしょうか。
商用バンは分類として「小型貨物自動車」に該当し、全長4.7m以下×全幅1.7m以下×全高2.0m以下というボディサイズと、エンジンの排気量は2,000ccまで(ディーゼルは無制限)が大まかに規定されています。
これに荷室のフロア面積が1平方メートル、(後席を使用しても)荷室面積が後席スペース以上で、後部座席の定員重量より積載可能な重量が大きい必要があります。
サイズ的にはいわゆる5ナンバーサイズ以下のワゴンボディか、キャブオーバーのワンボックスタイプかに分かれますが、今回の主役はワゴンタイプのボディです。
現在はトヨタのプロボックスと日産「AD」が販売されており、そのほかのメーカーが販売する商用バンは、それら2モデルのOEM車となっています。
通常の商用バンはまず乗用車ありきで、ベース車の装備を簡素化したり荷室部分を適合させるため改良されたりするのが一般的でした。
実際、ADは4代目「ウイングロード」と基本構造を共有していますが、プロボックスは独立車種としてエクステリアも専用となっており、デビュー当時の「ヴィッツ」のパーツを流用しつつも、その高い実用性とシンプルなエクステリアで、カスタムのベース車両としても人気があります。
そんな商用バンが高速道路で速く走れるのには構造的に秘密があるようです。
商用バンが高速で速い理由はいくつかありますが、まずは車重の軽さによるフットワークの良さがあります。
現行のプロボックスには1.3リッターと1.5リッターエンジン、または1.5リッターのハイブリッドがありますが、車重が1090kgから1160kgに抑えられているのが大きなポイントとなります。
もうひとつは、車体の強度が乗用モデルより明らかに頑丈なことで、わたしたちが普段乗っている乗用モデルは、快適装備が備わり、シートも乗り心地を優先し、防音や防震対策などが施されています。
その点商用バンは、快適性を犠牲にしてでも耐久性や強度を優先した作りになっており、重い荷物の積載を前提としたサスペンションの取り付け強度なども高められています。
これが逆にボディのシッカリ感へとつながり、想像以上にキビキビとした挙動で走ってくれます。そのため商用バンは、ヘタな乗用モデルより安心して速く走れるクルマに仕立てられているのです。
ちなみに、商用バンに装着されるタイヤも耐久性と強度が考慮されており、ホイール径は適切で、扁平率も高いものを使用。グリップ力こそ高くはありませんが、そもそも車重が軽いためハイグリップである必要性があまりないのも好都合なのだとか。
ATのセッティングも、重い荷物を載せてもちゃんと走れるように、乗用タイプよりも低めのギア比が採用されていて、エンジンのトルクがシッカリ出る回転数で使えるようなセッティングともいえます。
つまり実際に速いというより、トルクフルでシッカリ感のある運転フィーリングで、速度管理がしやすいクルマだというわけなのです。
※ ※ ※
ボディが頑丈でサスペンションもシッカリしていて、エンジンはトルクフルなセッティング、なおかつ軽量ということは、「スポーツカー」に求められる定義と同じだといえます。
見た目は地味で貨物積載を優先させた結果、商用バンはスポーツカーと同じ方向性のモデルになっているというのは面白いものです。
■営業車向けのアイデア装備が満載! 営業マンからの評価は?
実際にプロボックスに乗っている人は、どんな印象を持っているのでしょうか。
都内の印刷会社で社用車としてプロボックスを普段使用している営業のMさん(30代・男性)に話を聞いてみました。
「社用車なのでさまざまな人間が運転するのですが、乗りにくいとか不満は聞いたことがないです。それぐらいタフな作りになっています。
実際、リアシートは長時間乗るにはクッションが薄いのですが、それ以外は非常に良くできた作りになっています」
トヨタ「プロボックス」(ハイブリッド)
Mさんが感心するところは、それまでの商用車にはなかった小物入れやテーブルなどをセンターコンソール付近に標準装備していることだといいます。
たとえばセンターコンソールにはノートパソコンなどが置ける引き出し式テーブルが備わっていたり、大きな書類も収納できるグローブボックス、またハンドルの左奥にはスマートフォンを挟めるホルダーが設置されているなど、営業車として使えるアイデア装備が充実しています。
「ナビも付かずオーディオもラジオのみというシンプルな設定ですが、スマホのアプリで代用できますし、もともとは営業や納品業務で使用するのが主要用途なので普通にラジオが聴けるだけでも十分です。
マニュアル式ながらエアコンも付いており、むしろ無駄な装飾がないぶん操作で迷うことがないのは良いです」(営業のMさん)
実際にバンとしての積載性も非常に出来がよく、大量の納品物はリアシートを折り畳めばかなりの荷物を積載可能。
ちなみにトヨタのウェブサイトによると、2名乗車時の最大積載量は400kg。A4のコピー用紙箱(22cm×31cm×24.5cm)なら最大で89個も積載することができるといいます。
「タイヤは今どき珍しい165/80R13(現行モデルは155/80R14)という可愛いものですが、扁平率が高いので、道路のデコボコを乗り越えても不快は感じにくいです。荷物を積んでも潰れるような感じはありません。
遮音材が少ないのか、エンジン音は車内に入ってきますが、我慢できないということはないです」(営業のMさん)
では、なぜ高速道路をハイスピードで巡航するプロボックスが多いのでしょうか。あくまでもMさん個人の感想ですが、「運転していて楽しい」というところにありそうです。
「会社から遠方のお客さまへ納品などをした帰りは空荷になります。すると、行きと同じペースで走っているつもりが、気がつくとけっこうなペースで走ってしまうということがあるんです。もちろん法定速度内の話ですが」(営業のMさん)
軽量かつ堅牢なボディや強度の高いサスペンションのおかげで、いわゆるシャキッとした走りを味わえるようです。しかもフロントはディスクながらリアはドラム式ブレーキでも、軽い車重の恩恵で制動力不足を感じることもないとMさんはいいます。
この軽量であることのメリットは大きいでしょう。「走る、曲がる、止まる」は軽量なほどスムーズです。80馬力程度しかない1.5リッターエンジンでも、軽量なボディのおかげで動力性能も良いのでしょう。
「追い越し車線を急いで走っているということではないのですが、営業時間内に戻ってきたい心理がアクセルを踏んでしまうのかもしれません。
乗り心地が良いとはいえないのでデートやプライベートには向かないと思いますが、アウトドアが趣味で荷物をたくさん積み込みたい人には、個人ユースでも十分に満足できると思います」(営業のMさん)
※ ※ ※
現在、プロボックスにはハイブリッドモデルもラインナップされており、WLTCモード燃費は22.6km/Lという低燃費を実現しました。
また、ガソリン車のエントリーモデルの149万1000円から、ハイブリッド車の201万4000円という価格帯も非常に経済的です。
プロボックスは、頑丈で軽量なボディや実用域を考慮したセッティング、さらに5ナンバーに収まるサイズによる狭い道での取り回しの良さも大きなメリットで、「道具」としての使い勝手に優れたモデルだといえます。
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