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「充電器」がEV普及の足かせに? どうなるインフラ拡充 まもなく到来「設備更新ピーク」なぜ?

くるまのニュース / 2022年3月5日 18時10分

EVが本格普及する上で、充電設備は欠かせない要素です。しかし現時点で、設置場所や稼働率など、ユーザーのニーズと必ずしも合致していない点も見られます。充電インフラの現状と、今後の課題を考えます。

■本格普及に必要なのは「充電インフラの拡充」

 ついに日本でも、本格的なBEV(バッテリー電気自動車)シフトが始まるのでしょうか。

 2022年の発売モデルでは、トヨタ「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、日産「アリア」、さらには日産と三菱が共同開発した軽EVなど、新型BEVが目白押しです。

 輸入車でも、テスラ「モデル3」は販売絶好調ですし、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ポルシェ、ボルボなど、BEVモデルラインアップのさらなる充実が続きます。

 こうした状況を踏まえ、自動車メーカーやインポーターの関係者に対し、「BEVシフトが色濃くなってきた現時点で、改めてBEV本格普及のために必要なことは何だと思いますか?」と聞きました。

 すると、やはり最も多かった答えは「充電インフラの拡充」でした。

 この考え方は以前からあり、BEV普及のための3条件の一つといわれてきました。

 3条件とは、「車両価格がガソリン車やハイブリッド車並みに下がること」「満充電での航続距離が充分にあること」、そして「充電インフラが整うこと」の三つです。

 まず、車両価格については、まだまだ高いとは思いますが、電池、モーター、インバーターというBEV主要部品の量産効果が徐々に現れてきており、モデルによっては一般ユーザーのショッピングリストに載るレベルまで下がってきたといえます。

 また、サブスクリプションモデルなど、新しいクルマの使い方が日本でも広まることで、車両残価を気にせずにBEVを楽しめるようになりそうです。

 次に、航続距離については、基本的に電池容量を大きくすることで対応できますが、そうなれば当然、車両の価格にも跳ね返ります。それを量産効果によって抑制することになります。

 また、全固体電池など新しい技術によって、従来と同じ体積(大きさ)でもエネルギー密度が上がることで航続距離がさらに伸びることが期待されています。

 そして、BEV関係者の多くが指摘した充電インフラについては、今まさに“大きな課題”といえるでしょう。

 地図情報関連企業のゼンリンによると、日本国内にあるBEVまたはPHEV(プラグインハイブリッド車)向けの充電施設は、2021年2月時点で急速充電器が7950基、普通充電器が2万1700基で合計約3万基あります。

 このうち、東京電力、中部電力、トヨタ、日産、ホンダ、三菱などが出資し、充電インフラの整備と拡充をおこなうe-Mobility Power(イーモビリティパワー)が連携している充電器は、急速と普通を合わせて2020年12月末時点で2万1700基です。

 イーモビリティパワーは、日産のZESP3(ゼロエミッションサポートプログラム3)や、トヨタのEV-PHV充電サポート、メルセデス・ベンツのCharge充電カードなど、国内外メーカー各社の充電に関する会員カードが使える仕組みを提供しています。

 当初、2014年にトヨタ、日産、ホンダ、三菱が共同で立ち上げた日本充電サービス(NCS)がありましたが、2019年10月設立のイーモビリティパワーがNCSの事業を2021年4月に承継し、充電サービスのさらなる拡充を目指しているところです。

■「充電渋滞」をどう解決するか

 さて、このイーモビリティパワーですが、2021年に経済産業省が開催した「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」に興味深い資料を提出しています。その内容は一般にも公開されています。

 資料では、充電インフラの現状における「設置場所の課題」を三つ挙げています。

 一つ目は、充電インフラが増えていることがあまり知られていないことです。

 二つ目は、北海道や東北など、充電器の空白地域が目立つこと。高速道路でも、SAやPAの間隔が70km以上離れている区間が全国で18区間あります。

 そして三つ目は、東京・大阪・名古屋など大都市部には充電器の数が多くても、設置場所が有料駐車場や自動車ディーラー施設内に偏在しており、ユーザーにとって使い勝手が悪いことです。

 また、充電器の稼働率でみると、稼働率が高い設置場所は「カーディーラー」が最も多く、次いで「コンビニ」「道の駅」「大規模小売店」、そして「SA・PA」と続きます。

 一方で、稼働率が低いのが「地方自治体の施設」「宿泊施設」「観光施設」「ガソリンスタンド」「ゴルフ場」「空港」など公共の性格を帯びた場所が目立ちます。

2022年発売予定の日産新型クロスオーバーEV「アリア」2022年発売予定の日産新型クロスオーバーEV「アリア」

 そして、ユーザーとして大いに気になるのが、いわゆる「充電渋滞」ではないでしょうか。

 まだまだBEV普及初期である現時点でも、高速道路のSAなどでは、急速充電で3台待ちといった状況がすでに現実になっています。

 基本的に、急速充電は1回30分が目途のため、仮に自分の前に2台のBEVがいる状況だと、自車の充電が終わるまで1時間半以上かかることを覚悟しなければなりません。

 こうした状況について、イーモビリティパワーは「充電器1台あたりの平均稼働率が20%を超えると充電渋滞が発生する時間帯が増える」と分析しています。

 つまり、1日あたり10回以上の急速充電をおこなう充電器で充電渋滞が発生しやすくなるというのです。

 対策としては、一つの充電設備で複数の充電口を持つシステムの導入があります。直近では、イーモビリティパワー、東京電力、ニチコンが200kW・6口(1口最大出力90kW)の急速充電器を開発し、2021年12月から首都高速の大黒PA(横浜市鶴見区)に設置し、今後は全国で拡充する予定だといいます。

 ただし、当然ながら充電器の導入コストが上がるため、採算性をどう確保するかが大きな課題です。

 また、既存の充電器は2010年代初めに国が推進したBEVとPHEVの普及政策の際に設置された設備も多く、充電器の寿命が8~10年ほどであるため、2022年から2024年頃に設備更新のピークを迎えることが確実視されています。

 そうした状況ですが、筆者(桃田健史)が各方面に取材している限り、充電器の稼働率が低い公共施設などでは、これまで採算性が悪かったことなどから、新たにコストをかけて設備を更新することを決めかねているケースが少なくないと聞きます。

 BEVの本格普及に向けて、改めて充電インフラの今後について、社会全体で考えるべき時期だと強く思います。

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