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「きっかけは4年前の米国だった」日野がエンジン認証で不正 なぜ今? 原因は? 会見で語られた発覚の経緯

くるまのニュース / 2022年3月7日 19時10分

日野が、トラックやバスに搭載しているエンジンの認証申請において、不正行為があったと発表しました。発覚の経緯や不正が見逃されてきた背景などについて、会長と社長は緊急記者会見でどのように釈明したのでしょうか。

■不正発覚のエンジン搭載車は出荷停止に

 またしても、自動車メーカーによるエンジン認証に関する不正行為が発覚しました。

 今度は、トラックやバスを手掛ける日野自動車です。

 日野は2022年3月4日、下義生会長と小木曽聡社長が出席して緊急の記者会見を開きました。

 冒頭、小木曽社長は「エンジンの排出ガスと燃費に関する認証申請で性能を偽る不正を確認できたため、エンジンと、それを搭載する車両の出荷を停止し、国土交通省と経済産業省に報告しました」と経緯を説明。

 その上で、顧客など関係する人たちに対して「多大なるご迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」と、下会長と一緒に深く頭を下げました。

 対象のエンジンは、中型エンジン「A05C(HC-SCR)」と大型エンジン「A09C」「E13C」の3機種です。

 これらのエンジンは、中型トラック「レンジャー」、大型トラック「プロフィア」、大型観光バス「セレガ」に搭載されています。

 このほか、不正行為があったかどうか現段階では判明していないものの、燃費性能に問題があると分かった小型エンジン「N04C(尿素SCR)」についても、出荷停止の対象としています。

 当該エンジン4機種は、2016年度排出ガス規制(ポスト・ポスト新長期規制)の対象であり、市場に出回っている搭載車の累計販売台数は、小型観光バス「リエッセII」を含めて累計11万5526台に上ります。

 不正の方法については、さまざまあることが分かりました。

 中型エンジン「A05C(HC-SCR)」の場合、走行距離が長くなってエンジンが劣化した状態での耐久試験で、排出ガス後処理装置の第2マフラーを試験の途中で交換していました。こうすることで、排出ガスの浄化性能が規制値に適合しないことを回避するという手口です。

 大型エンジンの「A09C」と「E13C」は、認証試験の燃費測定の際、キャリブレーション(校正)の係数を有利な数値に設定して、実際よりも良い燃費値を出していたのです。技術検証によって、諸元値(カタログ掲載の値)に満たないことが分かっています。

 そして、小型エンジン「N04C(尿素SCR)」は、不正行為の有無は判明していませんが、燃費値が諸元値を満たしていませんでした。

 これらのエンジンを搭載した車両は、排出ガスや燃費に関する税制優遇を受けていることも考えられます。追加納付が必要な場合は、日野が負担することになります。

■不正発覚、なぜこのタイミング? 原因は現場のプレッシャーか

 それにしても、なぜこのタイミングで不正が発覚したのでしょうか。

 その経緯について、きっかけは米国だったといいます。

 2018年11月、日野の社員が米国での排出ガス認証に関して同社のやり方に疑問を持ったことが始まりでした。米国の弁護士を起用して調査を進めたところ課題が見つかり、米当局に対して報告しました。現在も、米司法省から調査を受けている最中です。

 このように米国で課題が生じたため、一方の日本でも、2021年4月から社内調査として全機種の総点検を始めました。

 特に排出ガスの劣化耐久試験では、中型エンジンで7か月、大型エンジンで9か月かかるため、不正の実態がある程度分かるまで時間を要し、取りまとめは2022年2月末時点となり、今回の発表に至ったということです。

日野「セレガ」日野「セレガ」

 では、なぜこのような不正が見逃されてきたのでしょうか。

 会見では「現場における数値目標達成やスケジュール厳守へのプレッシャーなどへの対応が取られてこなかったことが、問題の背景にあると考えている」と説明されています。

 つまり、認証に関わる社員が、性能を満たさないことを知りつつ意図的に内容を変えたということです。経営側もそうした理解をしています。

 その上で、ひとつの部門が開発と認証の両方を担っていたことも問題だったとして、すでに2021年4月から部署を分けて、品質本部と異なるメンバーが認証試験をおこなっているそうです。

 今後の再発防止に向けて、小木曽社長は「会社経営においてコンプライアンス最優先の姿勢を明確にして、すでに着手している組織変更や業務プロセスの改善に加え、従業員一人ひとりの意識改革への取り組みを進めてまいります」と真摯な姿勢を示しました。

 こうした自動車メーカーによる認証不正というと、2016年に発覚した三菱やスズキの燃費不正問題を思い出す人も少なくないでしょう。

 筆者(桃田健史)も当時、国土交通省で開かれた各社の会見や、国の自動車関連施設などで詳しい取材をしました。

 その際、国交省からは、ほかの自動車メーカー各社についても燃費など各種認証試験での不正がないか社内調査を進めて国に報告するよう指示を出しています。

 その点について、今回の会見で下会長は、当時は不正がない旨で国に報告しているとした上で、「その点を含めて(2016年度規制以前の状況把握も踏まえた)特別調査委員会で検証する」と回答しました。

 特別調査委員会では、今回の不正事案の全容解明と真因分析に加えて、日野の組織のあり方や開発プロセスまで踏み込んだ再発防止策の提言を求めるとしています。

 働き方改革、そしてSDGsが企業経営で重視される今、まずは原因の徹底究明が望まれます。

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