「自動車保険」が半額近く安くなる!? なぜ沖縄県は他県と違うのか? 独自の「旧盆中の特約」も存在する理由
くるまのニュース / 2022年5月8日 10時10分
沖縄県の自動車保険は、他県と比較しても安いといいますが、その理由はなんなのでしょうか。また、旧盆中においては、沖縄県オリジナルの特約が存在しているといいますが、その特約とはどのようなものなのでしょうか。
■沖縄県の自動車保険料は安い!その理由とは
クルマを運転する人にとって欠かせない存在といえる「自動車保険」。
そのなかで沖縄県の自動車保険は、ほかの都道府県と比較しても安くなっているといいます。
その理由はなんなのでしょうか。また、旧盆中においては沖縄県オリジナルの特約が存在しているといいますが、その特約とはどのようなものなのでしょうか。
長距離のドライブや帰省などにおいて、クルマは欠かせない存在ともいえます。
そんな便利ともいえるクルマですが、クルマに乗ることによって、交通事故を引き起こす確率も高くなります。そのため、交通ルールやマナーなどをきちんと認識し、慎重に運転する必要があります。
しかし、交通事故は必ずしも完全に防ぐことができるものではありません。自分が意図せずとも交通事故に巻き込まれてしまい、加害者にも被害者にもなりうる危険性があります。
そのような状況に陥ってしまった場合に備えて、用意されているのが自動車保険です。
自動車保険は「自賠責保険」と「任意保険」に分かれ、前者は自動車損害賠償保障法によってクルマの所有者は加入が義務付けられています。
そんな自動車保険ですが、実は沖縄県の自動車保険料は日本本土の料金よりも安くなっています。
損害保険料算出機構によると、2020年度の沖縄県の自動車保険料(自賠責保険料)の基準料率は自家用乗用車(37か月契約)の場合には1万4270円となっています。
沖縄県以外の基準料率は同様の条件で3万170円となり、本土の約半分の料金となっていることがわかります。
損害保険会社の担当者は、沖縄県の自動車保険料が安い理由について以下のように話します。
「沖縄県が日本に復帰した当時、沖縄県民の所得率は本土都道府県民の所得率よりも60%ほど低く、本土の自動車保険料では沖縄県民の負担が大きくなってしまうことがひとつの理由として考えられます」
沖縄の施政権がアメリカから日本に変換された1972年度における沖縄県の所得率は、40万5997円。一方東京の所得率は1231万6987円となっており、約60%以上も差があります。
また、前出の担当者は続けて「沖縄県の自動車保険料が安い理由には、交通事故が発生する機会があまりなく、事故がもし発生したとしても、話し合いで解決できてしまうことがほとんどだったということも挙げられます」といいます。
実際に、2021年度の沖縄県の交通事故死者数は26人であり、全国平均の56人と比較しても約2分の1という非常に少ないことがわかります。
つまり、沖縄県の自動車保険料が安く設定されているのには、沖縄県特有の歴史や背景、文化や特徴が大きく関係していることがわかります。
■沖縄県オリジナルの特約「旧盆中の特約」って何?
実は沖縄県の自動車保険に関して、沖縄県の歴史や風習に大きく関係した特殊な特約が存在します。それが「旧盆期間中の運転者範囲に関する特約」です。
前出の損害保険会社では、基本契約にプラスオプションで選ぶことができる「他車運転補償特約」や「身の回り品補償特約」など、さまざまな特約が用意されています。
そのなかでも、沖縄県のオリジナル特約として用意されているのが旧盆期間中の運転者範囲に関する特約です。
この特約は、旧盆期間中(旧暦7月13日-15日)およびその前後1日について、一時的に運転者および年齢条件の範囲を拡大するものです。
なぜ、このような旧盆中の自動車保険の特約が用意されているのでしょうか。
前出の担当者は、旧盆中の自動車保険特約が用意されている理由について、はっきりとした経緯はないとしつつ、以下のように話します。
「沖縄県の歴史や文化の影響から、旧盆中の期間は沖縄へ帰省したり、家族や友人などと集まる人が多いです。
そのため、普段運転免許を持っていて、自動車を所有していない人などが、集まりでお酒などを飲んでクルマを運転できない所有者に代わって、所有者のクルマを運転するというような状況が生まれやすいです。
そこで、多くの人が安全に運転でき、心置きなく親戚や友人たちとの集まりを楽しんでもらうため、このような特約を用意したのではないかと思います」
沖縄の自動車保険は、俗に「沖縄料率」といわれる沖縄県の特有の保険料が設定されている(画像は沖縄県で借りたレンタカー)
また、7月13日から15日にあたる旧盆は沖縄県にとって、非常に大切な年中行事となっています。
盆の入りである7月13日は「ウンケー」といい、14日は「ナカヌヒ」、15日は「ウークイ」と呼ばれ、ウークイには、仏壇のある家に親族が集まり、祖先の霊を送ります。
このように、祖先をあの世に送り出し、親戚一同が同じ場所に集まる旧盆期間中は、親族の絆を今一度再確認する機会ともなっています。
旧盆中における自動車保険の特約は、沖縄県の文化や風習を大切にした地域への愛から誕生したのといえるかもしれません。
※ ※ ※
ちなみに、沖縄県では、世界各地の県系人の功績を称えるとともに、県民との交流を通してウチナー(沖縄生まれの人の意)ネットワークを拡大させ、ルーツやアイデンティティを次世代に継承していく「世界のウチナーンチュ大会」が実施されています。
このようなイベントからも、沖縄県民の地域愛や繋がりの強さは深いものであることがうかがえます。
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