高性能なだけじゃなくデザインも超絶イケてる! 昭和のFFスポーツクーペ3選
くるまのニュース / 2022年5月9日 6時10分
現在、軽自動車からミドルクラスセダンまでFF車が主流となっていますが、黎明期から高性能かつスタイリッシュなクーペモデルも存在しました。そこで、昭和の時代に登場したハイスペックなFFクーペを、3車種ピックアップして紹介します。
■昭和の時代に登場した高性能かつスタイリッシュなFFスポーツクーペを振り返る
近年、日本車においては、軽自動車からミドルクラスセダン、大型ミニバンまでFF車が主流となっています。その理由は、広い室内空間の確保や優れた走行安定性、コストや重量の削減など、FF車には数多くのメリットがあるからです。
FF車の歴史は古く、20世紀の初頭にはすでに高度なメカニズムのモデルがつくられ、第二次世界大戦以前には普及が始まっていました。
日本では1955年に誕生した軽自動車のスズキ「スズライト」が初のFF車で、1960年代には次々に登場。普及が本格化したのは1970年代からで、1980年代には各メーカーの軽自動車、小型車では主流となり、現在に至ります。
さらに高性能なFF車も昭和の時代には発売されており、なかにはスタイリッシュなデザインのモデルも存在。
そこで、1960年代、1970年代、1980年代とそれぞれの時代を代表する高性能FFスポーツクーペを、3車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「ルーチェ ロータリークーペ」
「ハイウェイの貴公子」のキャッチコピーそのものといえる「ルーチェ ロータリークーペ」
マツダは1967年に、世界初となる量産ロータリーエンジン車「コスモスポーツ」を発売。高性能なロータリーエンジンを搭載しただけでなく、そのスタイルは50年以上前にデザインされたとは思えないほど流麗かつ未来感あふれるもので、すべてが先進的なスポーツカーでした。
その後、マツダはロータリーエンジン車のラインナップ拡大を進め、1968年にロータリーエンジン車第2弾の「ファミリア ロータリークーペ」を発売し、翌1969年には第3弾である「ルーチェ ロータリークーペ」がデビューしました。
ルーチェ ロータリークーペの外観デザインはマツダ自らが「ハイウェイの貴公子」というキャッチコピーを付けたほど美しい2ドアハードトップクーペで、フロントノーズからボンネット、ルーフ、トランクへとすべてが流れるようなラインによって構成されました。
また、丸型4灯のヘッドライトを配置した逆スラントノーズを採用し、斬新かつ精悍なフロントフェイスを実現。
この美しいスタイルだけでなく、搭載されたエンジンは最高出力126馬力(グロス、以下同様)を発揮するパワフルな655cc×2ローターの「13A型」ロータリーで、後に登場した「13B型」と共通の設計ではなく、ルーチェ ロータリークーペ専用に設計されました。
さらにルーチェ ロータリークーペは前輪を駆動する歴代でも唯一無二のFFロータリーエンジン車となっており、技術的にも特徴的なモデルでした。
走行性能は公称最高速度190km/hを誇り、まさにハイウェイの貴公子にふさわしい高性能クーペでしたが、価格も非常に高額で、当時の大卒初任給が約3万円だったところ145万円から175万円と、一般庶民には夢のようなクルマといえました。
ルーチェ ロータリークーペは発売からわずか3年後の1972年に生産を終了し、現存数も少なく、イベントなどでも滅多にお目にかかれない幻のクルマとなっています。
●日産「チェリー クーペ X-1R」
大衆車ベースながら迫力あるスポーツクーペに仕立てられた「チェリー クーペ X-1R」
欧州では1960年代から小型車を中心にFF化が始まり、広い室内空間を確保できる優れたパッケージングが注目されていました。
そこで日産はそのトレンドを早期にキャッチアップするかたちで、1970年に同社初となるFF車「チェリー」を発売。
当初のボディバリエーションは2ドアセダンと4ドアセダンで、チェリーはFFのメリットを最大限に生かし、小さなボディながらワンクラス上の「ブルーバード」と同等の広さを誇る室内空間を確保していました。
そして、1971年には3ドアハッチバックの「チェリー クーペ」が登場。左右後方視界を無視したようなリアサイドの大胆な造形が特徴的で、カタマリ感のあるスタイリッシュなフォルムは大衆車と思えないほどスポーティでした。
エンジンはFRの「サニー」用に開発された1.2リッター直列4気筒OHV「A12型」をベースに横置きに対応して改良され、トランスミッションをエンジンの下に配置した「二階建て構造」となっており、コンパクトなパワートレインを実現。
高性能グレードの「クーペ X-1」ではツインキャブ仕様で最高出力80馬力(グロス)を発揮し、さらにトップグレードの「クーペ X-1R」は4輪にリベット留めのオーバーフェンダーが装着され、レーシングカーのイメージから若者にも新時代のFFスポーツクーペとして訴求しました。
実際にチェリー クーペはツーリングカーレースに参戦を果たし、雨のレースではFRのサニーを打ち負かすなど、好成績を残したほどです。
その後、1974年に2代目の「チェリー F-II」へフルモデルチェンジし、1978年には実質的な後継車である初代「パルサー」へと系譜が継承され、日産はFF車の拡大を本格化しました。
●ホンダ「バラードスポーツCR-X」
本格的なライトウェイトFFスポーツカーとして開発された「バラードスポーツCR-X」
ホンダは1967年に、同社初の軽乗用車かつFF車の「N360」を発売。最高出力31馬力と高性能な360cc空冷2気筒エンジンを搭載し、広い室内と安価な価格から大ヒットを記録しました。
その後、1972年には新時代の大衆車でFFの初代「シビック」が誕生し、経済性に優れると共にFF車のメリットをよりアピールしたことで、日米でヒット作となりました。
そして1983年に、初の本格的FFスポーツカーである「バラードスポーツCR-X」を発売。
バラードスポーツCR-Xは、3代目シビック、同セダンの姉妹車だった2代目「バラード」と主要なコンポーネンツを共有して開発された3ドアハッチバッククーペで、シビック、バラードよりも3か月ほど先行してデビューを飾りました。
ボディはシビックよりも180mmも短いホイールベースの非常にコンパクトなサイズで、セミリトラクタブルヘッドライトのシャープなフロントフェイスに、ファストバックのスポーティなデザインを採用。
トップグレードの「1.5i」に搭載されたエンジンは最高出力110馬力の1.5リッター直列4気筒SOHC CVCCで、現在の水準からすればパワフルなエンジンではありませんでしたが、わずか800kg(MT)と軽量な車体によって優れた加速性能と運動性能を発揮しました。
この軽量なボディを実現するために、フロントマスク、ヘッドライトフラップ、フロントフェンダー、ドア・ロアガーニッシュ、サイドシルガーニッシュを軽量で耐久性の高いプラスチック製パネルとするなど、技術的にも意欲作でした。
その後、1984年のマイナーチェンジでは、最高出力135馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒DOHC16バルブ「ZC型」エンジンを搭載した「Si」グレードが追加され、FFスポーツカーとしてのポテンシャルがさらに向上。より実用性が高いシビックSiと人気を二分しました。
※ ※ ※
国内メーカーの高性能FF車の代表的な存在といえば、ホンダ「シビック タイプR」が挙げられますが、2022年中には新型の正式発表が予定されています。
先代の「FK8型」は最高出力320馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHC VTECターボエンジンを搭載し、FFでは出力的に限界ともいわれていましたが、新型ではさらなるパワーアップは間違いないでしょう。
高性能なFF車という存在がすでに貴重ですが、純粋な内燃機関を搭載した最後のタイプRと目されており、大いに注目されています。
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