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走りに全振りした原点! 最初で最後の「テンロクエンジン」を搭載した「シビックタイプR」とは

くるまのニュース / 2022年5月16日 20時10分

ホンダは2022年中に、新型「シビックタイプR」の正式発表を予定しています。究極といえるほど走行性能を高めた「タイプR」シリーズの最新モデルですが、その黎明期に誕生した初代シビックタイプRとはどんなクルマだったのか、振り返ります。

■センセーショナルなデビューを飾った「EK9型 シビックタイプR」とは

 すでにプロトタイプがお披露目され、2022年中の正式発表が待たれるホンダ新型「シビックタイプR」。次世代型は通算で6代目にあたるモデルで、2022年4月には三重県・鈴鹿サーキットのテスト走行において、FFモデルで最速となる2分23秒120のラップタイムを記録するなど、歴代でも最高のパフォーマンスを発揮するのは間違いありません。

 ホンダを代表する高性能車である「タイプR」シリーズは、1992年に発売された「NSXタイプR」から始まりました。

 コンセプトは明確で、ストリートでの快適性よりもサーキット走行でのパフォーマンスを重視し、ストイックにボディの軽量化とシャシ性能の向上、エンジンのファインチューニングが施され、究極のロードカーを目指していました。

 その後、ホンダはタイプRのコンセプトを反映したモデルの拡充を図り、1995年には「DC2型 インテグラタイプR」を発売し、さらに1997年には「EK9型 シビックタイプR」がデビューしました。

 NSXタイプRに比べ超絶バーゲンセールといえたこの2台は、走り好きたちから絶大な人気を獲得し、シビックタイプRのみが現在まで系譜を受け継ぎ、新型へとつながっています。

 そこで、シビックタイプRの原点である「EK9型」はどんなクルマだったのか、振り返ります。

※ ※ ※

 前述のとおり1997年にデビューしたEK9型 シビックタイプRは、6代目シビック SiRをベースに開発されました。

 外観では専用のエアロパーツに加え、専用のボディカラー「チャンピオンシップホワイト」をイメージカラーとし(他の色も設定)、赤地のホンダエンブレムが装着されるなどNSX、インテグラのタイプRと同様の作法で仕立てられていました。

 全長4180mm×全幅1695mm×全高1360mmのコンパクトなボディは、派手さを控えつつも高速安定性を高める前後アンダースポイラー&リアスポイラーが装着され、足元には7本スポークで5穴の専用アルミホイールに、195/55R15サイズのブリヂストン「ポテンザRE010」ハイグリップタイヤが採用されました。

 シャシは前後3か所にパフォーマンスロッドを追加し、さらにサスペンションまわりとテールゲートまわりを中心に板厚がアップされ大幅に強化し、ボディのねじり剛性を35%向上。

 補強が加えられつつもエアコンとハイマウントストップランプのオプション化や、防音用インシュレーター、リアワイパー、リアヘッドレスト、リアシェルフなどの廃止、バッテリーの小型化、軽量フライホイールの採用によって、車重は1050kgとおよそ30kgの軽量化が図られました。

 また、4輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションではスプリングのバネレートとダンパーの減衰力アップに、リアスタビライザー径を15mmから22mmに大径化。さらに前後のトレッドを5mm拡大と車高の15mmダウンも相まって、旋回限界の向上とともに、アンダーステアが少なく立ち上がり加速に優れた小気味良い旋回フィールを実現しました。

 一方で、ハードなスプリングとサスペンションブッシュ類の硬度アップにより、公道での乗り心地は考慮されておらず、ちょっとしたギャップで常に車体が上下動を繰り返すほどで、普段使いは「苦行」といえました。

 ブレーキはサーキット走行時の安定した効きと耐フェード性を高めるために、ディスクサイズを前後とも1インチサイズアップしたフロント15インチ、リア14インチを装着。スポーティなセッティングの専用ABSを採用してしましたがレスオプションも可能で、より自然なブレーキフィールを求めるユーザーに対応していました。

 内装では、SRSエアバッグを内蔵した直径368mm(エアバッグレスオプション車は350mm)のMOMO製小径ステアリング、ホールド性を高めるレカロ製可倒式バケットシートとシートに合わせてコーディネイトしたトリム、チタン製削り出しシフトノブ、カーボン調メーターパネルなどが装備され、レーシーに演出されていました。

 ほかにも操作系ではシフトダウン時にヒール&トウがしやすいペダルレイアウトとし、ブレーキペダルをアクセルペダルに5mm近づけ角度を6度立たせるなど、操る楽しさを考え細部にわたって修正。

 搭載されたエンジンは自然吸気として当時世界最高クラスの高出力である、リッターあたり116馬力を実現した1.6リッター直列4気筒DOHC VTEC「B16B型」で、最高出力185馬力を8200rpmで発生。なお、1.6リッターエンジンはシリーズでも最初で最後でした。

 エンジンのチューニングメニューとしては、高圧縮化と低フリクション化したピストンに軽量・高剛性のコネクティングロッド、広開角&ハイリフトのカムシャフト、軽量吸気バルブの採用、全吸排気ポートの研磨がおこなわれ、エキゾーストパイプも大径化されるなど、まさにホンダがレースで培ったノウハウが注ぎ込まれていました。

 これほどまでの高回転型高出力エンジンながら、VTECによって低回転域のトルクも確保されており、優れたドライバリリティを発揮しました。

 5速MTのトランスミッションはセレクト方向、シフト方向ともストロークを短縮して軽快でスポーティなチェンジフィールも実現し、ディファレンシャルギアにはトルク感応型レリカルLSDが装着され、コーナリングからの加速時のトラクション性能を向上。

 初代シビックタイプRは、コンフォートな面を犠牲にしてまで高められた走行性能だけでなく、視覚的にもレーシングテイストを前面に押し出して、走る楽しみを与えてくれるモデルとして人気を博し、2001年に2代目へバトンタッチしました。

※ ※ ※

 これから登場する新型シビックタイプRはあらゆる面がさらに進化したモデルとなるはずで、性能的にEK9型と比べるのはナンセンスです。

 しかし、EK9型は軽量コンパクトなボディにハイスペックな1.6リッター自然吸気エンジンという黄金の組み合わせといえ、今も色褪せない魅力があります。

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