続々と登場する新型EV! 今後すべてのクルマがEVに代わるって本当? 「EVシフト」の真実とは
くるまのニュース / 2022年5月30日 17時10分
欧州ブランドの電気自動車(バッテリーEV。BEV)が続々と日本で登場しています。それだけでなく、2022年はトヨタ「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、日産「アリア」、三菱「eKクロスEV」と日産「サクラ」などの国産BEVも登場予定です。最近ではガソリン/ディーゼルのエンジン車がなくなり、すべてEVになるといった論調もありますが、はたして本当なのでしょうか。
■BEVにも「新しい乗りもの」と「内燃機関と違和感のないクルマ」の2種類がある
欧州カーメーカーからデビューしたバッテリー電気自動車(BEV)が続々と日本に上陸しています。
試乗できたものとまだ現物を見たこともないものもありますが、最近の欧州製BEVの傾向を探ってみましょう。
欧州のBEVは大きく2種類に分けられると考えます。ひとつは「新時代の乗りもの」という意味で、BEVらしく革新的な要素をふんだんに盛り込んであるもの。もうひとつは内燃機関(ICE)の自動車から乗り換えても違和感のないものです。
革新的なBEVはボルボ「C40リチャージ」です。
このC40リチャージは、スタート・ストップスイッチがないクルマです。乗り込んでシートベルトをして、ブレーキペダルを踏みながらセレクターをDレンジにしてアクセルペダルを踏み込めば発進できます。
降りるときはシートベルトを外し、ドアを開け、ブレーキペダルから足を放せば、自動的にセレクターはPレンジに入り、スイッチがオフになります。車内のナビやエンターテインメントもgoogleを使って、いつも最新の状態で使えるようになっています。このあたりはテスラが思い切ってやったことが世の中の人が受け入れている様子を見て、ボルボも採用したのだと思います。
もっと革新的なのはBMW「iX」です。最先端の電子的なギミックが盛りだくさんで、走り出すことは問題ないとしても、ドライバーが使いこなせるまでには何日もかかるでしょう。
たとえばダッシュボードの上のモニターを見ながらiDriveのコントローラで操作しますが、たくさんのアプリがあり、そこから色々動かしていきます。アプリの中にドライブレコーダというのがあり、駐車時に使う前後左右4つのカメラが衝突時の前後に最大30秒ずつ、計60秒の録画ができます。任意で撮影することも可能です。
また車内カメラというのもありました。階層が深いところまであり、その機能を探り当てられると楽しくなりますが、そこに辿り着けるオーナーはどこまでいるのかは疑問です。これはBMWからの挑戦状で、ユーザーがどこまで追いついて来られるかを見極めて、次のステップを決めていくのではないでしょうか。
アウディは「e-tron GT」や「e-tron スポーツバック」でその先進性をアピールしました。高級車として最新技術を投入し、価格もそれなりになりました。
しかし「Q4e-tron」はe-tron GTの半分くらいの価格設定になりましたが、技術による先進を謳うアウディのことなので、どんなクルマになったのか乗るのが楽しみです。
一方メルセデス・ベンツの「EQC」に乗ると、BEVということを忘れそうになります。
これは通常のICE搭載車から乗り換えたとしても、何のコクピットドリルを受けなくてもそのまま走り出すことができます。パワー・オン/オフのスイッチの位置、セレクターの位置と操作方法も同じです。新しいのは静かに走行していることくらいです。
■欧州では2035年以降に内燃機関エンジン車の販売禁止!?
欧州では近い将来、エンジンを搭載したクルマは販売できなくなると思われています。
EVの普及には急速充電器のさらなる設置や出力アップした高速充電対応の急速充電器の普及も欠かせない
欧州委員会(EUの執行機関)が2021年に発表した規制案は「2035年以降に発売できる新車は、排出ガスゼロのクルマのみ」、つまり販売できるのはBEV(バッテリーEV)かFCV(水素燃料電池車)だけという規制ができそうだからです。
しかしBMWとステランティスはこの規制に明確に反対を表明しています。
BMWのオリバー・ツィプセCEOは、充電インフラの不足、電気自動車の価格の高さを指摘し、さらに燃費の良いICE(内燃機関)を供給することが利益と環境の両方の観点から重要であるとして、ICEの全面販売禁止に反対を唱えています。BMWはバイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ(バイエルン地方のエンジン工場)という社名なのでICEにこだわっている訳ではないでしょうが、客観的な見方をしています。
ステランティスのカルロス・タバレスCEOは、価格が高くなってしまうBEVを買えない中間層の人たちの移動手段をどうするかについて言及しています。
ステランティスは14のブランドを持ち、総生産台数が600万台を超える世界第4位の自動車グループですから、安いクルマが作れず売れなくなると死活問題になります。価格が高いBEVが買えない人たちは、排気ガスをたくさん出す昔のクルマを乗り続けることになり、環境は良くならないという訳です。
規制案に対応して、いち早く動き出しているカーメーカーもたくさんあります。もちろん現在の規制案に反対しているBMWとステランティスも含めて、欧州ではBEVの新型車が続々と登場しています。それが冒頭の欧州車にBEVが増えた理由です。
欧州だけでなくアメリカでもGMのキャデラックブランドは2029年には100%BEVにすると宣言しました。
日本でも日産「リーフ」、三菱「iMiEV」というBEVが長年販売されていましたが、近年マツダ「MX-30EV」やホンダ「ホンダe」など新しいBEVも増えてきました。
2022年に登場するのはトヨタ「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、日産「アリア」。そして三菱と日産の軽EVの登場も近そうです。
※ ※ ※
バッテリーと電気モーターという新しいパワートレインが、環境に優しいクルマとして広まっていくのか、それが正しいことなのかということを考えなくてはならないときです。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)の勉強会で示されたデータでは、日本の半分のクルマがBEVになったら、原子力発電所をあと13基作らなければ電気が足りなくなるということでした。
BEVを走らせるために石炭を燃やす火力発電所の電気で充電するなら、もっとクリーンなエンジンで走ったほうがよほど環境には優しい訳です。
もちろん再生可能エネルギーで発電すればいいのですが、電気代が安い夜間電力でBEVに充電するのに太陽光発電は役に立たないわけで、日中に太陽光で発電した電力は大きな電池か水素にして、どこかに溜めておかなければならないのです。
これからの自動車がすべてBEVかFCVになることは当分ないと考えます。つまり欧州委員会の規制案がそのまま施行されることはないでしょう。
2022年の日本の夏は電気が足りないといわれています。そんな中でBEVに充電するのは気が引ける、ということにならなければ良いのですが…。
クリーンガソリン、クリーンディーゼル、HEV、PHEV、BEV、FCVなどから、使用用途に合ったパワートレインを選ぶことができるというのがいまの最適解ではないでしょうか。
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