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なぜ日本の「販売終了セダン」が中国で人気? 日産「シルフィ」は年間50万台販売! 日中で異なる販売戦略とは

くるまのニュース / 2022年5月19日 9時10分

日本市場において、2021年10月に販売終了(掲載終了)となっていた日産のたコンパクトセダン「シルフィ」ですが、中国では年間50万台の販売を誇るNo.1モデルとなっています。なぜ隣国の中国でシルフィは人気となっているのでしょうか。

■日本では販売終了も…中国では爆売れの「シルフィ」 その理由とは?

 中国では、とある日本のセダンが大人気で、近年は毎年50万台近くを販売しています。 
 もちろん、乗用車販売台数ランキングのトップ争いの常連です。そのクルマは、日産「シルフィ」。
 
 日本では、2021年10月に販売終了(掲載終了)していたコンパクトセダンのシルフィですが、なぜ中国では人気なのでしょうか。

 シルフィは日産が2000年8月に発売したセダンで、2代目のG11型までは「ブルーバード シルフィ」という名前で知られます。

 初代となるG10型は9代目サニー(B15型)をベースに開発され、その保守的な見た目はミドルエイジ層をターゲットとしたものでした。

 2012年に登場した3代目モデルでは、北米専売モデルの「セントラ(日本名:サニー)」と統合し、型番も「B17」と、サニーの型番を引き継ぎました。

 また、この世代から日本での販売名は「シルフィ」に改められ、53年間続いた日産の名車「ブルーバード」の系譜はこれをもって幕を下ろしています。

 2019年には現行型であるB18型シルフィが登場。ワールドプレミアの場所に上海モーターショーを選んだことからも、シルフィが中国市場に重きを置いていることがわかります。
 一方で、本国・日本では先代型となるB17型がモデルチェンジを迎えることなく、2021年に販売終了となりました。

 日本におけるシルフィはモデルチェンジを迎えなかっただけでなく、中国やアメリカなどのほかの市場ではおこなわれたマイナーチェンジも施されず、ずっと2012年に登場した際のデザインのまま販売を継続。

 その後、日本での年間販売台数は年々下がる傾向にあり、とくに2019年では前年比で2割減の約1800台にまで落ち込んでいました。

 本国ではふるわなかったシルフィですが、中国ではそのようなことを微塵も感じさせないほどの人気を誇っています。

 それも、2018年以降は特に爆発的な伸びを記録しており、毎年約50万台の販売台数を記録しています。シルフィが中国でそこまで人気となっている理由はどのようなことなのでしょうか。

 2021年の中国における乗用車販売台数ランキングを見てみると、1位はシルフィ(中国名:軒逸)で、販売台数は50万160台となっています。

 また、それ以前のデータを見てみても、2020年は54万2725台、2019年は47万707台、2018年は48万1216台、2017年は40万4726台と、日本では「セダン不人気」といわれているのに販売台数は年々上昇傾向にあります。少なくとも、日本での状況とはまるきり違うことがわかります。

 シルフィは2005年に中国へ上陸し、東風汽車との「東風日産」が生産・販売をおこなっています。

 その長い歴史の間で、シルフィは「性能が良い」「壊れにくい」「経済的である」などの高い評価を得てきており、今やその立ち位置は不動なものとなっています。

 また、根底にあるのは中国で未だ根強いセダンへの人気です。

 SUVが今ブームを席巻している世の中で、もちろんそれは中国も例外ではありません。

 ですが、中国では典型的な乗用車の形である「セダン」への憧れを持っている人が多く、それがSUVと同等の人気を誇る理由でもあります。

 その証拠に、2021年の乗用車販売台数ランキングではトップ10のうち、セダンは6車種、SUVは2車種のみです。

 ちなみに5位は32万1912台を販売したトヨタ「カローラ」となっており、これも中国でとくに人気な日本車の1台といえます。

 もちろん、そもそもシルフィが人気というのもありますが、実はこの販売台数にはあるカラクリがあります。

 それは、併売されている旧型モデルや純電動モデルも合わせた数字であるということです。

 現在、中国ではB18型シルフィが最新モデルとして販売されていますが、それと同時に先代モデルのB17型シルフィが「シルフィ クラシック(中国名:軒逸 経典)」として販売されています。

 また、2018年の北京モーターショーで発表されたB17型シルフィがベースの純電動モデル「シルフィ ゼロ・エミッション(中国名:軒逸 純電)」もラインナップに含まれています。

 これらすべてを合算してシルフィとしてランキングに名を連ねているわけです。

■中国ならではの併売戦略! 新旧併売は常套手段だった?

 ですが、これは何も日産がズルをしているというわけではありません。

 中国ではほかの自動車メーカーでも一般的に見られる販売手法です。

 各自動車メーカーは売れ筋車種を最新モデルだけでなく、旧モデルも「クラシックモデル」と名付けて販売する傾向にあります。

 ランキングでは10位にフォルクスワーゲン「ボーラ(中国名:宝来)」がランクインしていますが、このクルマも先代モデルや純電動モデルを併売しています。

 シルフィにおいては、最新モデルが11万9000元(邦貨換算:約237万4000円)で販売されているのに対し、併売されている先代モデルが9万9800元(約199万1000円)からとなっており、多種多様な消費者に向けてさまざまなオプションが用意されています。

 また、2021年11月にはB18型シルフィをベースにした中国市場初のe-POWERモデル「シルフィ e-POWER(中国名:軒逸 電駆版)」も登場したことから、ますますシルフィの勢いは加速していくことでしょう。

旧型モデルをベースにした純電動モデル「シルフィ ゼロ・エミッション」(撮影:加藤博人)旧型モデルをベースにした純電動モデル「シルフィ ゼロ・エミッション」(撮影:加藤博人)

 そんな日産 シルフィですが、2021年は2年連続でランキング1位であったものの、2020年に比べて約4万2000台販売台数が下落してしまいました。

 それに加え、超格安EVとして日本でも話題となった上汽通用五菱「宏光MINI EV」が1位に迫る勢いの42万6484台を販売したこともあり、うかうかしていられる状況ではないのかもしれません。

 中国の自動車市場は日々進化中、瞬く間に変化を迎える面白い市場でもあります。

 このような急速な変化のなかでシルフィがどのように生き残っていくのかは、新たに投入されたシルフィのe-POWERモデルが命運を握っているのかもしれません。

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