デザインがイケてるだけじゃない! まるで「天が二物を与えた」ような昭和の車3選
くるまのニュース / 2022年5月27日 6時10分
クルマの外観デザインは販売台数にも大きな影響がある重要な要素ですが、秀逸なデザイン性のみならず、優れた機能性も兼ね備えた欲張りなモデルもありました。そこで、昭和の時代にデビューした「才色兼備」なクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
■デザインと機能の両面で優れた昭和のクルマを振り返る
デザインには正解がないといわれますが、クルマの外観は販売台数を左右する重要な要素のひとつです。デザインに優劣をつけるのは難しいですが、多くの人が受け入れたデザインは優れているといえるでしょう。
また、デザインが優れているだけでなく価格やスペック、装備などがバランスよく設定されていることも、ヒットの条件です。
各自動車メーカーはそうした条件を考慮しながら新型車の開発をおこなっているはずですが、必ずしもヒットにつながるとは限らないところが、新型車開発の難しいところではないでしょうか。
そこで、大ヒットにしなかったとしてもデザインと機能の両面が秀逸だった昭和のクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「ライフ ステップバン」
現在の軽トールワゴンを先駆けていたデザインの「ライフ ステップバン」
現在、日本の自動車市場で4割ものシェアを誇っている軽自動車ですが、なかでも軽トールワゴン/ハイトワゴンがトップセラーに君臨しています。
この軽トールワゴン/ハイトワゴンのスタイリングを50年も前に確立していたのがホンダ「ライフ ステップバン」でした。
1972年に発売されたライフ ステップバンは、軽乗用車の初代「ライフ」のシャシをベースに開発されたセミキャブオーバータイプの軽バンです。
外観は全長2995mm×全幅1295mm×全高1620と全高が高いボクシーなフォルムの5ドアバンで、リアゲートは開口部が大きい上下二分割式を採用していました。
また、軽バンでは主流だったキャブオーバータイプでは、フロントシート下にエンジンを置き後輪を駆動するFRが一般的でしたが、ライフ ステップバンはFFだったことからプロペラシャフトが不要となり、低床で使い勝手のよい荷室を実現。
内装ではデスクにもなるフラットなインパネにペンホルダーを装備し、リッドを閉めたまま伝票の投入ができる大きなグローブボックス、折りたためばフラットなフロアとなるリアシートなど、商用車としてのユーティリティを追求していました。
エンジンはライフと同型の360cc水冷直列2気筒SOHCシングルキャブで、最高出力は30馬力(グロス、以下同様)を発揮し、605kgと軽量な車体十分なパワーでした。
デザインも機能も優れたライフ ステップバンでしたが、ホンダは初代「シビック」の生産に注力することから、既存の軽トラック「TN」シリーズ以外の軽自動車の生産を休止すると宣言。1974年にライフ ステップバンは生産終了となりました。
なお、1973年にはライフ ステップバンをベースにした軽トラックの「ライフ ピックアップ」も発売されましたが、こちらは生産期間がわずか1年ほどと極端に短命でした。
●日産「サニー カリフォルニア」
アメリカ西海岸の光と風をイメージしてデザインされた「サニー カリフォルニア」
日産は1966年に、マイカー時代到来を見据えた大衆車のダットサン初代「サニー」を発売。ボディはセダンを基本としながらも、クーペ、バン、ピックアップトラックをラインナップしていました。
そして、歴代では最後のFR車だった4代目の「310型」サニーでは、ライトバンだけでなくシリーズ初のステーションワゴンが誕生。
1979年に発売されたサニーのステーションワゴンは「サニー カリフォルニア」と名付けられ、アメリカ西海岸のライフスタイルをコンセプトに開発されました。
プラットフォームはライトバンと共通でしたが、外観は積載量を重視するライトバンとは異なり専用デザインのボディパネルを採用し、リアハッチを大きく傾斜させたスタイリッシュなフォルムを実現。
また、サニー カリフォルニアで最大の特徴だったのが、オプションで設定されたボディサイドの木目調デカールで、当時、アメリカのステーションワゴンでは定番のドレスアップアイテムでした。
内装では5パターンのシートアレンジが可能で、5:5分割のリアシートを倒すとフルフラットの荷室となり、リアゲートもワイドな開口部と低い床面地上高とするなど、使い勝手のよさが追求されました。
エンジンは全グレード共通で最高出力80馬力を発揮する1.4リッター直列4気筒OHV「A14型」を搭載。
サニー カリフォルニアはアメリカナイズされたデザインから若者から支持され、木目調デカールは後のモデルにも設定されました。
ちなみに日産はサニー カリフォルニアをステーションワゴンではなく「5ドアスポーツセダン」と呼称しており、ライトバンのイメージからの脱却を図っていました。
●三菱「デリカ スターワゴン4WD」
ワンボックスワゴンでは初の4WD車で優れた悪路走破性を発揮した「デリカ スターワゴン4WD」
現在、ファミリーカーの定番モデルとなっているミニバンは、1990年代の中頃から急速に普及しました。
一方、ミニバンが普及する以前は多人数乗車が可能なクルマというと、ワンボックスバンをベースにしたワゴンでした。
そのワンボックスワゴンのなかでも日本初の4WD車だったのが、1982年に誕生した「デリカ スターワゴン4WD」です。
外観はキャブオーバータイプのスクエアなフォルムですが、最低地上高が高められて大径のオフロードタイヤを装着し、フロントにはブッシュガードを装備するなど、斬新なスタイリングを採用。
また、高剛性のラダーフレームにボディを架装し、同年に登場した初代「パジェロ」と同じ機構のパートタイム式4WDシステムを搭載するなど、メカニズムも本格的なクロスカントリー4WD車に仕立てられていました。
エンジンは当初1.8リッター直列4気筒SOHCのみでしたが、後にディーゼルターボが加わり、バリエーションを拡大。
足まわりは、フロントがトーションバースプリングのダブルウィッシュボーン、リアがリーフスプリングのリジットアクスルで、ロングストロークによって高い悪路走破性を実現していました。
本格的なオフロードカーに仕立てられたデリカ スターワゴン4WDは、アウトドア派のファミリー層から絶大な人気を獲得し、代を重ねるとワンボックスワゴンからミニバンへと進化を遂げ、現在の「デリカ D:5」へと系譜が受け継がれています。
※ ※ ※
最後に紹介したデリカ スターワゴン4WDに追従するように、他メーカーも4WDワンボックスワゴンを発売しました。
しかし、本格的にオフロード性能を追求したモデルはなく、デリカ スターワゴン4WDが唯一無二の存在でした。
現行モデルのデリカ D:5も唯一のオフロードミニバンで、ユーティリティと悪路走破性を高い次元で両立して人気となっていますが、先祖のデリカ スターワゴン4WDのコンセプトがいかに優れていたかの証といえるでしょう。
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