なぜ車内に「ドライバー1本を所持」で逮捕!? 「ピッキング防止法」の違反とは…本当に逮捕されるのか?
くるまのニュース / 2022年6月2日 14時10分
鳥取県でクルマのドアポケットにドライバーを隠し持っていたとして、75歳の男性が逮捕されました。逮捕容疑は、正当な理由なく「指定侵入工具」を所持していたことによる「ピッキング防止法違反」とのことですが、インターネット上では「ドライバーをクルマに積んでいたら逮捕される可能性があるのか」と驚くユーザーの声が見られています。
■逮捕容疑は「正当な理由なくドライバーを所持していた」
2022年5月26日、鳥取県警鳥取署は、クルマのドアポケットにドライバー1本を隠し持っていたとして、75歳の男性を逮捕しました。
インターネット上では「ドライバーをクルマに積んでいたら逮捕される可能性があるのか」と驚くユーザーの声が見られています。
では、本当にドライバーを車内に積載していた場合には逮捕される可能性はあるのでしょうか。
逮捕容疑は、正当な理由がないにもかかわらず「指定侵入工具」を所持していたという、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律、通称「ピッキング防止法」の違反です。
ピッキング防止法では、「特殊開錠用具」の所持および販売、授与に加え、「指定侵入工具」を隠し持つことを規制しており、これに違反すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金となります(「特殊開錠用具」の販売・授与については、2年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
「特殊開錠用具」とは、おもにピッキングに利用される特殊な器具を指し、「指定侵入工具」とは「特殊開錠用具」に該当しない、ドライバーやバールなど住居などへの侵入の際に利用可能なものを指します。
ピッキング防止法は、ピッキングによる住居侵入被害が広く知れ渡るようになった2003年に施行され、おもに空き巣犯などに対して効果を発揮しています。
しかし、今回の報道をうけて、インターネット上では「ドライバーをクルマに積んでいたら逮捕される可能性があるのか」と不安を覚える人が多く見られています。
実際、クルマのなかにドライバーなどの工具を積載する人は決して少なくありません。
近年減少傾向にありますが、一部の車種には工具セットが純正装備となっているものもあり、ユーザーの自覚がないうちに「ドライバーを隠し持っている」という疑いが掛けられる状態になっている可能性もあります。
犯罪目的でなかったとしても、所持していることで逮捕される可能性があるのであれば、ユーザーにとっては大問題です。
厳密にいえば、逮捕されることと有罪になることはイコールではありません。
とはいえ、現実的には逮捕されてしまった時点で社会的に大きな影響を受けることは避けられず、裁判で争うとしても多大な手間と費用が掛かります。
しかし、鳥取県警の担当者は「ドライバーなどの一般的な工具については、正当な理由があればまず問題になることはありません」と話します。
この担当者は、その上で次のように続けます。
「今回の事件について具体的にお話をすることはできませんが、一般論でいえば、『正当な理由』とは仕事などで使用することが明確な場合などが該当します。
また、DIYを趣味としている人で、そのために使用するのであればまず問題はないでしょう。車載工具についても、一般的なものであれば同様です」
つまり、今回逮捕された男性は、こうした理由がなくドライバーを所持していた可能性が高いようです。
■警察官の「さじ加減」で逮捕される可能性はある?
一方で、「正当な理由」については、現場に臨場した警察官の裁量にゆだねられている部分も多く、極端にいえば、警察官の「さじ加減」で逮捕されるかどうかが決まってしまうのではないかという声もあります。
実際のところ、警察官には一定の裁量権が認められており、犯罪行為を発見してもすべて検挙する必要はないとされています。
これは、軽微な犯罪をすべて処理することは現実的に不可能であることに加え、犯罪行為を見かけたらすべて検挙しなければならないと規定してしまうと、検挙できなかった場合には罰則規定を与えなければならず、いずれにせよ、警察機能が成り立たなくなってしまうためです。
そういう意味では、警察官の「さじ加減」は存在するといえますが、一方で警察官は警察官職務執行法によって行動が厳密に規定されており、緊急の場合をのぞいて、ひとりの警察官が単独で判断することはほとんどありません。
各警察官は上長の指揮によって行動し、警察組織は検察庁によって監督されると規定されており、これに反すると罰則を受けることになります。
つまり、ひとりの警察官が「さじ加減」で逮捕をしたり、犯罪を見逃したりすることが簡単にはできないような仕組みとなっています。
最近では車載工具としてジャッキのみの場合もある
そのため、もし、車内のドライバーや工具に対して職務質問を受けたとしても、やましいことがないのであれば、堂々と説明をしましょう。
そもそも逮捕とは証拠隠滅を防止する目的が強いため、隠したりごまかしたりするほうが心象が悪くなってしまうかもしれません。
※ ※ ※
今回と近いケースとして、銃刀法違反が挙げられます。
例えば、料理人が適切な方法で包丁を所持していれば検挙される可能性は低いといえますが、そうでない人が包丁を持ち歩いていれば、大きな問題となることは間違いありません。
ピッキング防止法と共通していえるのは、所持していることそのものよりも「正当な理由」があるかどうかが重要であるということです。
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