SUVやミニバン全盛の今「立体駐車場」の高さ制限どうなってる? 商業施設とマンションで異なる「上限1550mm」の実態
くるまのニュース / 2022年6月4日 9時10分
商業施設やマンションなどにある「立体駐車場」や「機械式駐車場」は、省スペースで複数台のクルマが駐車できますが、その一方で高さや重量の制限が設けられていることがあります。背が高いSUVやミニバンが人気となっている今、機械式駐車場の実態はどうなっているのでしょうか。
■「立体駐車場/機械式駐車場」にはさまざまなタイプがある
限られたスペースにより多くのクルマが駐車できるようにと、商業施設やマンションなどを中心に「立体駐車場」「機械式駐車場」(以下、機械式駐車場)が設置されています。
しかし、高さや車重などの制限があるため、全高が高くて重量があるSUVやミニバンが主流となった現在、普通車サイズの機械式駐車場だと駐車できないケースも発生しているようです。
軽自動車でも「スーパーハイトワゴン」など背の高いモデルが増えていますが、駐車場の高さ制限はどうなっているのでしょうか。
立体駐車場とは、複数台のクルマが駐車できるように多層化された駐車施設の総称です。平地がそのまま駐車場になった「平面駐車場」との比較でそう呼ばれています。
立体駐車場にはさまざまなタイプがあり、大型の商業施設や空港などに多いのが、運転手が目的階までクルマを運転して駐車する「自走式立体駐車場」です。
これにもまた複数の種類が存在しており、各階をスロープで連結させた「フラット式」、駐車階を半階分ごとずらすことでスロープの長さを短縮できる「スキップ式」、スロープを兼ねた緩い勾配に駐車スペースを配置した「連続傾床式」があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、車両移動用装置を設置しなくて済む反面、設備に見合う広い土地が必要です。
これに対して、装置によってクルマを入庫・運搬して収容する機械式駐車場は、土地を有効活用でき、高い収容効率が魅力だといえるでしょう。
この機械式駐車場にもいくつかのタイプがあります。上に伸びる「タワーパーキング」には、クルマの載ったパレットをエレベーターのような構造で収容する「エレベーター式」と、観覧車のようにパレットが回転する「ゴンドラ式(垂直循環式)」があります。
さらにはリフトと台車を用いてパレットに載せたクルマを各車室に格納する、大規模な「地下式駐車場」などもあります。
そして、一般ドライバーに馴染み深い「多段式駐車場」は、マンションなどの限られた敷地内で収容台数を増やすために設置される、上下左右にクルマを載せたパレットが動くパズル式(昇降横行式)のものです。
ほかにも、2、3段のパレットが昇降する「2・3段ピット式(昇降式)駐車場」もマンションなどで多く見られます。
今回取り上げるのは、機械式駐車場のうち多段式駐車場と2・3段ピット式駐車場についてですが、マンション住まいの人にとっては、賃貸で自分の駐車スペースとなるだけに、現状がどうなっているのか気になるところではないでしょうか。
これまで大抵の機械式駐車場は、クルマを載せるパレットの大きさなどもあって、高さ制限は1550mm前後に設定されることが多いといわれてきました。
マンションなどに多く設置される多段式駐車場と2・3段ピット式駐車場は、全高1550mm以上や、全幅が広い大型車に対応するのは難しいのでしょうか。
機械式駐車場の保守・メンテナンスを手掛けるテクノパークの営業本部・臼井さんに聞きました。
「設置の環境によりますが、屋外であれば機械のリニューアルで可能になります。
機械式駐車場には以前から約2000mmまでの全高に対応できる『ハイルーフ』、約1800mmまで対応できる『ミドルルーフ』の駐車装置が、若干ですがございます。
ただし、ほとんどの機械式駐車場が普通車(1550mmまで)までの対応となっており、ハイルーフ対応タイプはまだまだ導入が少ない状況です」
※ ※ ※
最近では、ユーザーのニーズやバリューアップなども見込めるため、リニューアル工事でサイズアップすることは可能だといいます。
「それでもマンションで普通車対応タイプが多いのは、高さによる景観への影響や建築基準法の制限のなかで、収容台数確保を優先させる傾向があるからだと思われます」(テクノパーク 臼井さん)
また、ハイルーフ対応などは収容台数が減る可能性があり、台数を確保しようとすると建設コストも変わるため、なかなか普及しにくい部分もあるそうです。
■大型車へのニーズはどう対応?
同じ機械式駐車場でも、ビルや商業施設などに多く設置されるタワーパーキングに関してはSUVやミニバン人気ということもあり、大型車へのニーズが高いようです。
マンションに設置される機械式駐車場
「さまざまな車種に対応できるように、普通、大型、特大パレット、高さもハイルーフ、ミドルルーフといった具合に選択できるよう、各駐車場メーカーのラインナップは多岐にわたります。
実際にハイルーフ対応の新設のタワーパーキングは増加していますし、車幅は1900mmから2000mm、車重は2000kgから2500kgまで対応可能な機種も増えています」(テクノパーク 臼井さん)
それでも、やはり収容台数とコストが問題になっているといいます。
「商業施設建築時はテナント収益がメインで、駐車場収益はおまけ程度に考えられるケースが多いのが実情です。
駐車場を中心に設計されていないぶん、使い勝手の悪い駐車場になってしまうところも多々見受けられます」(テクノパーク 臼井さん)
確かに商業施設によっては駐車場へのアプローチが極端に難しく、公道から鋭角に曲がらないと入れないといった構造のものもあります。
また商業施設の建物自体が古い場合、駐車スペースまでのスロープも狭かったり、普通車を想定したパレットしか設置されていない場所もまだ多いようです。
「それでも大型車駐車へのニーズの高まりを受けて、ハイルーフ対応を導入するタワーパーキングが増えています。
ただし、たとえば30台が収容可能だとしても、普通車が20台、ハイルーフが10台といったように、一部の区画に限定されるケースが多いです」(テクノパーク 臼井さん)
ハイルーフにも対応しているタワーパーキングは増えていますが、マンションなどの集合住宅に設置される多段式駐車場や2・3段ピット式駐車場は、依然として高さ制限が設けられているところも多いようです。
集合住宅の機械式駐車場に駐車する場合は、適合するサイズのクルマを選ぶ必要があります。
※ ※ ※
今回話を聞いたテクノパークは駐車場のメンテナンスをおこなっており、駐車場メーカーではないものの、入れ替えなどで新しい駐車装置を導入したいとの相談も増えているといいます。
ちなみに、マンションなどの多段式駐車場や2・3段ピット式駐車場は屋外に設置されることが多いため、雨風などによるサビの発生や電気部品の不具合などを中心にチェック、メンテナンスするとのこと。
また、「機械式」というだけあり、稼働する機械部分にはグリスアップなども施されます。
機械式駐車場は、管理やメンテナンスされていないと重大な事故などが発生しやすいのですが、定期的なメンテナンスや消耗部品の交換をおこなうことで、機械式駐車場の耐用年数は25年程度まで延びるそうです。
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