超大画面! 次世代「Apple CarPlay」世界初公開! 日本でも普及進む? 欧米とは異なるインフォテイメント事情
くるまのニュース / 2022年6月15日 19時10分
アップルが次世代「CarPlay」を発表しました。日本でもCarPlayを搭載する車種が増えていますが、欧米と比べると、日常的に使用している人は多くないようです。日本のる車内インフォテイメント事情はどうなっているのでしょうか。
■メーター表示までカスタム可能! クルマの領域に大きく踏み込んだ
アップルが開発者向けカンファレンスの「WWDC22」で、次世代「CarPlay(カープレイ)」を世界初公開しました。
カープレイは、iPhoneと車載器が連携するアップル独自のシステムで、日本でもさまざまな国産車に採用されています。
次世代カープレイでは、ダッシュボード内のスピードメーターやタコメーターなどのデジタル表示をカスタマイズすることも可能となりました。
それによって、カーナビやSNSなど、インフォメーションとエンターテインメントを融合させた「インフォテイメント」から、クルマの基本構造である「走る・曲がる・止まる」領域や、またクルマ全体にかかわるデータ解析の領域に大きく踏み込んできた印象があります。
今回の発表時点で、次世代カープレイの採用を決めた自動車ブランドは、アップルの資料の表示順で、レンジローバー、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、日産、フォード、リンカーン、アウディ、ジャガー、アキュラ、ボルボ、ホンダ、ルノー、インフィニティ、ポールスターの14ブランドとなります。
アップルといえば、自動運転BEV(電気自動車)の、いわゆる「アップルカー」を研究開発していることを、ティム・クックCEOがアメリカのメディアのインタビューのなかで明らかにしています。
ただし、アップルカーについては事業性の観点から、アップルが独自に自動車メーカーとして車両を生産するのか、またはホンダとソニーのようにアップルも自動車メーカーと協業するのかなど、さまざまな可能性がアメリカのIT業界のなかで囁かれています。
また、アップルカーはあくまでも自動車産業の実態を確認するための実証試験にとどめて、事業性が高いソフトウエア関連事業やデータの管理・解析に関する分野にアップルは新規事業を集約するのではないか、という見方もあります。
そうしたなかで、今回の次世代カープレイ発表となったというわけです。
カープレイはこれまで、段階的にアップグレードされてきましたが、今回はバージョンアップというより、大きな次のステージに入ったと呼べるのではないでしょうか。
時計の針を少し戻すと、アップルは2013年のWWDCで、カープレイの前身となる「iOS in the car」構想を発表。
それに対抗するように、グーグル(現在の親会社はアルファベット)は2014年に、アンドロイドフォンと車載器との連携システム「Android Auto(アンドロイドオート)」を発表しました。
IT業界のツートップが相次いで自動車産業界に参入したことで、近い将来には自動車の産業構造が急激に変化するのではないかという見方がグローバルで一気に高まったといえます。
その後、2010年代半ばになり、ドイツのメルセデス・ベンツが、自社の新規事業戦略としてCASEを提唱。通信によるコネクテッド、自動運転、シェアリングなどの新サービス、そして電動化が多角的に連動する時代がやってくると予測しました。
アップルとグーグルとしては、カープレイとアンドロイドオート、そしてアップルカーとグーグルカーなど、量産型ビジネスの改良と実証試験を続けきたのです。
そうしたなかで、カープレイとアンドロイドオートについては、インフォテイメントの領域からCASE全体との連携を模索するようになります。
■日常的にカープレイを使う人が日本で増えない訳
今回発表された次世代カープレイは、2013年からのカープレイ開発と実用化の流れのなかで、大きな転換期であるように思えます。
一方、日本市場に目を向けると、カープレイを搭載する国産車が増加しているものの、日常的にカープレイを使っている人があまり増えていない印象があります。
トヨタ初搭載となった「カローラ」のディスプレイオーディオ
例えば、トヨタが新車組み込み式のディスプレイオーディオを国内でも販売し、”スマホアプリがクルマで使える”として、カープレイとの連携を強調してきました。
ところが、ディスプレイオーディオの開発担当者は「日本の場合、欧米と比べてカープレイやアンドロイドオートの普及がなかなか進まない」という実情を漏らしています。
背景にあるのは、やはり日本が世界屈指のカーナビ大国であることが大きく影響しているといえるでしょう。
日本では1990年代から電機メーカー各社がこぞってカーナビの開発を進め、ディーラーオプションとアフターマーケットでカーナビ市場が大きく拡大。
そのため、軽自動車から高級車まで、日本では新車組み込み型カーナビを基本とした、車内インフォテイメントが確立されてきたという流れがあります。
これに対して欧米では、上級カーナビのコストメリットに対するユーザーの受け止め方やカーナビ機器の盗難に対するユーザーの不安、そして行先の表示方法を地図ではなく文字で書いて教えるという社会通念など、さまざまな理由から組み込み型カーナビが大衆化するスピードが日本とは大きく違いました。
そうした日本とのギャップを埋める役目を果たしたのが、PND(パーソナル/ポータブル・ナビゲーション・デバイス)でした。ブランドでは、アメリカのガーミンや、オランダのトムトムが主流となったのです。
PNDへの依存度が高かった欧米では、2000年代後半から一気に普及したiPhoneとアンドロイドフォンをPNDのように車内で使う人が増えていき、安全運転の観点から社会問題化。
そうした社会課題への解決策という側面が、そもそもカープレイやアンドロイドオートにはありました。
アップルとグーグルとしては、それを足がかりに、人の移動とクルマの移動とのデータ連携を実現し、多様なビジネスとの融合を狙ったのです。
今回の次世代カープレイ導入を機に、日本市場を含めたグローバルにおいてアップルがCASE領域でどのような新戦略を打ってくるのか、これからも動向を注意深く見ていく必要があると思います。
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