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高速がスゴイ! ホンダ新型「ステップワゴン」は走れるミニバン!? 走行性の高さと裏腹な気になるポイントとは

くるまのニュース / 2022年6月19日 11時50分

ホンダのミニバン「ステップワゴン」がフルモデルチェンジし、6代目モデルが発売されました。ターボ車、ハイブリッド車それぞれに試乗。さらに、「エアー」「スパーダ」も乗り比べました。

■6代目となる新型ステップワゴンが登場

 ホンダ「ステップワゴン」は、「オデッセイ」「CR-V」に続く「クリエイティブムーバー(生活創造車)」第3弾として1996年に発売。あれから26年がたち、6代目となる新型モデルが2022年5月27日に正式発売されました。

 同年1月に初公開されるも、なぜ発売まで4か月のスパンがあったのか。それは最大のライバルである、トヨタ「ノア/ヴォクシー」が1月13日にフルモデルチェンジして発売されたことへの対策でした。

 直近のステップワゴンの販売はボロ負け。「新型でその流れを変える!」という想いもあり、先行公開することでユーザーをライバルに流れさせないとの目的があったと予想しています。

 そしてそんな新型ステップワゴンに公道で初試乗をおこないました。どのようなクルマに仕上がっているのでしょうか。

 まずは「エアー」から。内外装は「シンプル&クリーン」と「いいモノ感」が上手にバランスされており、従来モデルのノーマル仕様は「エアロが付かない安いグレード」というイメージがありましたが、エアーはエアロ系の「スパーダ」とは異なる個性を持っています。

 ただ、重箱の隅を突くと、遠目で見たときに軽ハイトワゴンのように見えてしまうのが、残念なポイントかもしれません。

 シンプルな内外装の一方で、スパーダと比べて装備内容が簡略化されているのは問題です。

 例えば、ハンドルがウレタン仕様(スパーダは革巻き)だったり、スパーダに設定のあるシートヒーター(運転席/助手席)や全列USBチャージャー、2列目オットマン(7人乗り仕様)、パワーリアゲート、LEDアクティブコーナリングライト、ブラインドスポットインフォメーションが、エアーにはオプションでも用意されません。

 開発者は「エアーとスパーダは同等の扱いです」といいますが、ユーザー目線では「結局安いヤツなのね」と思ってしまうのではないでしょうか。

 とくにパワーリアゲートが選択できないのはちょっと痛いところ。この辺りはスターティングプライスに関わるので悩ましいのですが、それなら価格訴求のベーシックグレードを別に用意したほうが良いでしょう。

 早速、ガソリン1.5リッターターボ搭載のエアーに試乗してみます。

 以前おこなったテストコースでのチョイ乗りの印象が良かったので期待してスタートしたものの、街乗りでは「あれっ?」というのが本音でした。

 具体的にいうと、1.5リッターターボは過給応答性アップによるドライバビリティ向上や剛性バランスが整えられた車体やショックを優しく包み込む乗り心地など、基本素性アップは実感できますが、どこかクルマ全体がシャキッとしていない緩さを感じました。

「なぜ?」と想いながら高速道路に入ります。速度域が上がるとそれまで印象とはまったく違います。具体的にはエンジンとトランスミッションのマッチング、芯のある信頼できるステア系、ノーズの入りの良さ、ロール感が少ない安定したコーナリング姿勢、リアの安心感など、まるで眠りから覚めたような印象。

 なかでも、コーナリング時の一連の流れの連続性と一体感はミニバンとは思えないレベルなのです。

「ミニバンなのに、なぜ美味しい領域が高めなの?」と感じましたが、これは新型ステップワゴンがハイブリッドの「e:HEV」メインで開発をしている証拠です。

 ちなみにガソリンターボとe:HEVの重量差は100kg。重いe:HEVに合わせた設計であれば、軽いクルマで負荷をかけたほうが走りの印象は良くなるというのは納得です。

 その印象を開発責任者の蟻坂篤史氏に伝えると「あっ、やっぱりわかってしまいました?」と苦笑い。

 そのうえで、「日常域でシャキッとしない理由は、フロントサスペンションのナラシが不十分なところ。もう少し走り込むと良くなると思いますよ」とのことでした。

 その言葉に思わずガクッときましたが、無駄に頑張りすぎてしまう辺りは、良くも悪くもマニアックで「ホンダらしいな」と。ターボの新型ステップワゴンを買ったらジックリとクルマを育ててください。

■ハイブリッドは“電動車感”が増した!

 続いて、e:HEVのスパーダに乗り換えます。こちらはチョイ乗りのときの印象と変わらず一安心。

 日常域からシャキッとした走りを備えるのはもちろん、より低重心を感じるクルマの動きとタイヤが路面をカチッと踏みしめているような安心感の高さを備えています。

 そして、高速域ではエアーよりもハンドリングの正確性の高さを感じました。

カスタム系のホンダ新型「ステップワゴン スパーダ」カスタム系のホンダ新型「ステップワゴン スパーダ」

 この印象も蟻坂氏に伝えると「それはエアロの効果(=空力操安アップ)が大きいと思います。また細かいことになりますが、革巻きステアリングの触感の違いも出ていると思います」といいます。

 さらに、ターボ車+100kgの重さが効いているようで、実用域での足の動きはよりスムーズかつシットリとした印象。乗り心地の良さに加えて動的質感もプレミアムミニバンに片足を踏み込んでいると感じました。

 パワートレインは、元々絶対的なパフォーマンスでは新型ノア/ヴォクシーの「THS II」、日産「セレナ」の「e-POWER」より優れていましたが、新型はそれに加えて制御の一新によるフィーリングの進化が大きいです。

 具体的には、実用域ではモーター/バッテリーをより積極的に使う制御により“電動車感”が増しています。

 高速道路などさらに力が欲しいシーンでは、発電用エンジンの車速とエンジン回転数の連動感を高める制御で、新型「シビック」ほどではないものの、良くできたガソリン車のようなシームレスで滑らかなフィーリング。

 この辺りはe:HEVの「モーターとエンジンの美味しいところをリアルタイムで最適に制御して使う」という考え方がより実感しやすくなっています。

 ただ、せっかく制御が変わって大きく進化しているにも関わらず、ネーミングが「e:HEV(イーエイチイーブイ)」と従来から変わっておらず、その違いは乗らないと分からないのが残念。せめて、「バージョン2」や「フェイズ2」などはいうべきだと思います。

 高速道路では進化した「ホンダセンシング」のACC+LKASを試しましたが、先代とは雲泥の差で正確かつ滑らかな制御になっています。実はハード&ソフト共に一新されているのですが、こちらもe:HEVと同じくネーミングはホンダセンシングと先代から変更なし。これではユーザーに進化は伝わりません。

 せっかくなのでもう少しいわせてもらいますが、2列目キャプテンシート仕様に採用された「前後左右にスライドできる機構」も同じ。すごく便利な機能なのにそれを端的に示すキーワードがない。例えば「360度ミラクル・スライドシート」とか、よりわかりやすいネーミングで訴求するのはどうでしょう。

 このように、進化をユーザーが直感的に理解できるようなキーワードが無いことこそが、ホンダに欠けている部分だと思います。

 良くいえば「口下手な技術者集団」、悪くいえば「伝え下手」ともいえますが、その辺りはアピール上手な日産を少し見習ったほうが良いのではないでしょうか。

■上質感あふれる「スパーダ プレミアムライン」はどう?

 そして、最後は「スパーダを超えるスパーダ」、最上級グレードの「スパーダ プレミアムライン」のe:HEVモデルです。

ホンダ新型「ステップワゴン」の最上級グレード「スパーダ プレミアムライン」ホンダ新型「ステップワゴン」の最上級グレード「スパーダ プレミアムライン」

 スパーダに対して、エクステリアはプラチナ調クロームメッキ加飾と専用17インチアルミホイール+205/55R17サイズのタイヤを装備。

 インテリアはスエード調表皮&プライススムースのコンビシートなどを装備。ちなみにセカンドシートにシートヒーターが装着されるはこのグレードのみです。

 全体的には新型ステップワゴンのキャラクターを考えると少々背伸びした感はありますが、「オデッセイ アブソルート」(4代目)のユーザーだった筆者(山本シンヤ)としては、「その後継といっても良いかな!?」と感じさせるスポーティとプレミアムを上手にバランスさせた雰囲気です。

 スパーダに対してタイヤ&ホイールの違いのみですが、乗り味は結構異なります。スパーダから薄皮一枚はがしたかのような正確性の増したステアフィール(とくに切り始め)と一体感が更に増したハンドリングが印象的でした。

 ミニバンはセカンドシートが最優先となりますが、スパーダ プレミアムラインは少しだけドライバーを優先した味付けです。

 乗り心地は街乗り領域では硬さは感じる部分もありますが、決して不快ではなく心地良いコツコツ感。17インチの55偏平を履いていることを考えると、快適性は優秀。走りと乗り心地のバランスは先代の「モデューロX」に近いと感じました。

 ただ、欲をいえば、シートの表皮がほかのグレードよりもやや硬めで沈み込みが少なく、コーナリング時に体が支えにくいのは少々気になりました。ただ、これも距離を重ねて馴染んでくれば解消すると思われます。

 そんな印象を蟻坂氏に伝えると、「そうでしょ! 実は17インチタイヤは相当こだわって開発したんですよ。新型の進化をより実感できるグレードだと自負しています」と教えてくれました。

 しかし、ここでも個人的に気になるのは「プレミアムライン」というキャラクターがよくわからないネーミングです。むしろ「ステップワゴン アブソルート」のほうがわかりやすかったのではないでしょうか。

※ ※ ※

 新型ステップワゴンは、良い意味でここ最近薄めだった「ホンダらしさ」が強く感じられるモデルだと思います。

 筆者が考えるホンダらしさとは「実用車+α」の性能を備えることだと思っています。

 恐らく、総合的に見ると新型ノア/ヴォクシーのほうがバランスは優れていると思いますが、指名買いしたくなる“何か”は新型ステップワゴンのほうが多いように感じました。

 2022年後半には日産セレナもフルモデルチェンジが予定されているといわれています。

 もちろん販売台数も大事なのですが、個人的にステップワゴンはせっかく原点に戻った己の立ち位置をマイナーチェンジでライバルに寄せることだけはしてほしくないと願っています。

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