放置してない? 緊急用「テンパータイヤ」は使ってなくても劣化する!? パンク時にやっちゃダメなNG行為とは
くるまのニュース / 2022年6月26日 10時10分
タイヤは時間とともに空気が抜けていくので、定期的に空気圧を調整する必要がありますが、これは緊急用として搭載される「スペアタイヤ」も同様です。しかし、スペアタイヤはトランク下などに入れたまま放置されることが多く、いざというときに使えない状態になっているケースもあるようです。
■「テンパータイヤ」は普通のタイヤより細くて小さい
緊急用として車載されている「スペアタイヤ」や「テンパータイヤ」は、パンクなどタイヤのトラブルがない限りはトランク下などに収納され、放置されがちな備品のひとつです。
しかも最近では「パンク修理キット」が標準化されつつあり、スペアタイヤの搭載が減っていますが、それでもまだ数多くのクルマに搭載されています。
ちなみに、スペアタイヤは標準タイヤと同じサイズ、基本的には同じ素材の5本目タイヤのことを示す一方、テンパータイヤ(テンポラリータイヤ:テンポラリーは一時的の意味)は小型&軽量化を考慮して標準タイヤより小さく細く作られているのが特徴。
テンパータイヤを使うときは、どんなことに注意したら良いのでしょうか。整備士のT氏に聞いてみました。
まずは標準タイヤとの違いはどのようなところなのでしょうか。
「大きいな違いは、軽量化&や簡素化のために、通常のラジアルタイヤに内蔵されるスチールベルトがテンパータイヤにはありません。
構造的にはバイアスタイヤに近いのですが、スチールベルトがないためトレッドの剛性が低いんです。
それでもタイヤにかかる荷重にも耐えられるように空気圧が標準タイヤの2倍以上となっていたり、通常より硬いゴム素材で作られていたりします。
また小型・軽量を実現したことからタイヤの性能は必要最低限しかなく、制限速度が80km/h、連続走行距離が約100km未満に限定されています」
最近はテンパータイヤを搭載せず、パンク修理キットを搭載する車種が増えているのはなぜなのでしょうか。
「テンパータイヤが搭載されなくなったのは、やはりコストとリサイクルの観点も大きいでしょう。
10年以上も使われないテンパータイヤも多いですし、使ってなくても最終的には廃棄される運命です。
さらに小型・軽量化されているとはいえ、収納スペースの確保が必要で10kg程度の重量もあります。
そのため、スペースも取らず、価格もテンパータイヤと比較して安いパンク修理キットが標準装備化されつつあるのだと思います」(T整備士)
※ ※ ※
2022年3月のJAFロードサービス出動要請では、「タイヤのパンク、バースト、エアー圧不足」は2万9781件(全体の17.14%)発生するなど、起こりがちなトラブルです。
出先でタイヤのトラブルが発生する可能性もあり、車載されたテンパータイヤやスペアタイヤが使える状態にあるのか、事前にチェックしておきましょう。
■使ってなくても空気圧とひび割れのチェックは必須
テンパータイヤはいつでも使える「パンクレスタイヤ」と勘違いされることがありますが、標準タイヤと同じくゴムを主成分としており、時間がたてば空気は抜け、日光に当たらなくても劣化は進んでしまいます。
テンパータイヤをチェックするとき、どのようなところを確認すべきなのでしょうか。
テンパータイヤは駆動輪に装着してはいけない
「まずは空気圧のチェックは定期的にしておくと良いと思います。
標準タイヤの空気圧が200kPaから250kPaの場合、テンパータイヤの適正空気圧は420kPa前後と2倍程度の設定になっています。
このあたりを目安に、車検時や定期点検などでエアー不足になっていないかを確認しておくことをお勧めします。
もうひとつは、目視による劣化の進行具合です。トランクの下などに横置きで収納されており、テンパータイヤ自体に荷重がかかっていないので変形の心配はあまりないと思います。
劣化の目安として、クラック(ひび割れ)が生じていないかを目視でチェックしてください」(T整備士)
実際、T整備士が担当した業務用トラックのユーザーは、経年劣化でひび割れたテンパータイヤを装着して、バーストしたことで入庫したケースもあるとのこと。普段使わないからこそ、劣化具合は確認しておく必要があるでしょう。
では、テンパータイヤを取り付けるときの注意点などはあるのでしょうか。
「取り付けに関しては通常のタイヤ交換と手順は一緒なのですが、取り付けるところには注意が必要です。
パンクやエアー不足などでトラブルを抱えたタイヤが駆動輪だったとしても、駆動輪にはテンパータイヤを使用しないことが重要です。
FF車なら前輪、FR車なら後輪が駆動輪となりますが、問題のないタイヤを駆動輪に移し替え、駆動輪ではない車輪にテンパータイヤを装着してください。
テンパータイヤは強度がないため、駆動輪に使用すると走行が安定しない恐れがあるためです」(T整備士)
ちなみに4WDの場合は、FFベースかFRベースかで判断し、主要駆動輪にはテンパータイヤを使用してはいけません。
また、タイヤによっては取り付ける方向が決まっているものもありますが、駆動輪に移し替えたときに逆向きになってしまっても、テンパータイヤよりは強度があるのでひとまずその状態で急場をしのぎます。
そして、できるだけ速やかにディーラーや販売店、タイヤ専門店などに持ち込むのがベストな対処法だそうです。
「トラブルのあったタイヤだけを新しいものに交換するのではなく、4輪全部を交換したほうが安全です。
また、テンパータイヤは一回装着しただけで使えなくなることはありませんが、耐久性がなく、ほかのタイヤの摩耗具合にも影響するということを覚えておいてください」(T整備士)
※ ※ ※
テンパータイヤやスペアタイヤを搭載していても、空気が抜けてしまっていては使い物になりません。
標準タイヤの空気圧をチェックするときに同時に確認したり、テンパータイヤの空気圧不足を応急処置するためにパンク修理キット用意しておくのもひとつの手段になるでしょう。
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