DIYで「バッテリー交換」サクッと取り替えるだけじゃダメ!? 手順ミスで高額出費も! 正しい交換方法とは
くるまのニュース / 2022年7月10日 10時30分
クルマに搭載される電子制御式の装備を動かすバッテリーは消耗品のひとつとなり、時期が来たら交換が必要です。自分で交換することも可能ですが、正しい手順で交換しないと後々面倒なことになるようです。
■現代のクルマのバッテリー交換時に必要な対策とは
クルマのヘッドライトやエアコン、ナビゲーションに加え電子制御式の装備は電気によって動いており、その電気を供給しているのがバッテリーです。
バッテリーは経年による劣化だけでなく、ライト類の消し忘れや、短い距離を頻繁に乗るシビアコンディションなどでその寿命は大きく変わってきますが、2年から3年ごとに交換する必要があります。
ネット通販でもカーバッテリーは数多く販売されているので、自分で交換しようと考えている人も多いのではないでしょうか。
以前のクルマは新品のバッテリーを付け替えるだけでOKでしたが、現代のクルマは高度に電子制御化されており、単純にバッテリーを外して付け替えるだけでは済みません。
手順を間違えるとパワーウインドウが動かなくなったり、アイドリングが安定しなかったり、カーナビが使えなくなるというトラブルが発生しやすくなるというのです。
一体なぜ、こういった不具合が起こるのでしょうか。
栃木県のT整備士に聞いてみたところ、「メモリーバックアップ」が重要なポイントだといいます。
現在のクルマにはCPU(コンピュータ)が搭載されており、車体各部に取り付けられたECU(エレクトリカル・コントロール・ユニット)が各センサーに何らかの異常を検知してCPUに情報を伝達。これを制御しています。
また各プログラムなどを活用するためにもECUは働いており、走行中で得た情報などをメモリーデータとして保管し、エンジンを切った状態でも「待機電力」でデータを常にセーブしているのです。
「単純にバッテリー交換してしまうと、たとえば、ナビゲーションで地点を登録した情報や、オーディオの放送局データだけでなく、アイドリングの適正な回転数やパワーウインドウのオート機能、バックモニターのガイドライン(後進時の映像に表示される車体の向き)などのデータが喪失してしまう可能性もあります。
これを防ぐためにも、バッテリー交換時にデータのメモリーを消さないという対策が必要です」(T整備士)
それが「OBD」への接続だというのですが、OBDとは何なのでしょうか。
「OBDは『オンボード・ダイアグノーシス』と呼ばれる自己診断機能のことです。
この機能を各ECUが持ち、異常を検知すると『故障コード』と呼ばれるエラー検知コードで知らせてくれるようになっており、不具合が出た場合どこが故障しているのかをすぐに確認できます。
バッテリー交換時に電力が切れるとCPUが自己学習で培ってきたデータが損失しまうので、これを避けるために、OBDに外部から電力を供給しながらバッテリー交換する必要があります」(T整備士)
現在の多くのクルマは、より進化した「OBD2」と呼ばれる診断機能を採用しています。バッテリー交換時にデータを保持するにはどうしたら良いのでしょうか。
「クルマにはOBD2専用のカプラーが搭載されているので、ここにメモリーバックアップ用の専用機器(多くはOBD2メモリーバックアップなどのネーミング)を装着し、CPUやECUへの電力を継続供給すればデータを保持した状態でバッテリー交換が可能になります」(T整備士)
■メモリーのバックアップを忘れると「初期化」が必要になる
OBD2に接続するメモリーバックアップ装置には複数のタイプがあります。
外部電源(別のバッテリーなどに繋ぐ)が必要なタイプと、乾電池などで稼働するタイプがありますが、DIYで交換する場合は後者のモバイル電源内蔵タイプがおすすめだといいます。
バッテリー
使い方は意外と簡単です。国産車の場合、たいていステアリング下のパネルを開けると、何も刺さっていないカプラーがあります。それがOBD2の端子となっており、ここにメモリーバックアップできる専用機器を装着。
スイッチをONにしてECUに電源を供給されていることを確認できれば、バッテリー本体をこれまで通りの手順で交換できます。
バッテリー本体の交換は、まず取り付け金具などを取り外し、バッテリーのマイナス端子(大抵は黒いケーブルのほう)のケーブルターミナルを先に外し、次にプラス端子(赤いほう)を外します。
そうすると古いバッテリーが取り出せるので、今度はプラス(赤)→マイナス(黒)の順にケーブルターミナルを繋ぎ、取り付け金具を元に戻せばOKです。
イグニッションをONにしてエンジンがかかればバッテリー交換ができていることになりますので、それからOBD2コネクタに接続していた装置を取り外します。
このあと、オーディオやナビの状態を確認しメモリーが残っているかも確認しておきましょう。
「ドイツ車に乗っているお客さまでOBD2を接続せずに自分でバッテリー交換した方がいらっしゃいましたが、案の定メモリーデータが喪失してクルマの調子が悪くなってしまったそうです。
結局、正規ディーラーでCPUをキャリブレーション(初期化作業)したというのですが、その費用が10万円前後もかかったようです。
余計な出費を抑えるためにも、メモリーバックアップは必ずおこなってください」(T整備士)
※ ※ ※
自分でバッテリー交換をしたとき、使い終わったバッテリーはどう処分するのが良いのでしょうか。
「クルマ用の12Vバッテリーは内容物に鉛や硫酸などが含まれているため、処理が難しい『危険物』となり、自治体によっては危険物の処理ができないこともあり、ゴミとしての回収は難しいと思ってください。
もっとも安全なのは、最寄りのガソリンスタンドや弊社のような整備工場、クルマを購入したショップ、危険物が取り扱える不用品回収業者で処分してもらう方法です」(T整備士)
引き取りに手数料がかかることもありますが、使用済みバッテリー内にある鉛はリサイクルできるので、無料や多少の手数料で引き取ってもらうことが可能です。
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