トヨタ新型「クラウン」が世界進出! SUV化でブランド再構築へ! 4仕様が一気に登場した訳
くるまのニュース / 2022年7月15日 18時10分
トヨタが2022年7月15日に世界初公開した新型「クラウン」は、クロスオーバーをはじめ、4つのスタイルで登場します。一体どのような狙いがあるのでしょうか。
■「クラウンを世界で売ろう!」
発表までさまざまなウワサが流れていたトヨタ新型「クラウン」。2022年7月15日に世界初公開され、やはり「セダンでなくSUVベースになる」という最初の情報通りになりました。
もう少し詳しく説明すれば、自動車を開発する場合、まったくの新型車というのは難しいため、既存のプラットフォームをベースにしなければなりません。
クラウンサイズのクルマであれば、トヨタのプラットフォームは必然的に「カムリ」や「ハリアー」と同じ「GA-K」というプラットフォームを使うことになります。
とはいえ、トヨタにとって大切なクラウンという車名を使うにあたり、経営陣も開発チームもさまざまなことを考えたのだろう。
クラウンの伝統である4ドアセダンを止めてSUVにするだけだと縮小均衡でしかない。
そこで考えたのが「セダンを止める」という小さい話じゃなく、「この機会にクラウンというブランドを再構築しよう!」という大きな戦略である。私(国沢光宏)も全貌を知って驚きました。
今までクラウンというブランドは基本、国内だけで使われていた(正確には中国や一部地域でも使われているのだが)。
しかも、最近はセダンだけのラインナップとなり、当然ながら販売台数だって限られてしまう。遠からず立ちゆかなくなることは容易に想像できたこと。
そんな状況を見て、中嶋さんと佐伯さんという「利益を出すトヨタ車」を作ってきた2人が考えたのは、「クラウンを世界で売ろう!」という大転換策だった。
考えて頂きたい。日本もアメリカも、トヨタとレクサスの価格差が広がってきた。同じプラットフォームを使う車種であっても、レクサスになると少しばかり高くなってしまう。台数だって期待できない。
だったらレクサスとトヨタの中間くらいのクルマを作ったらいいんじゃないか、ということです。
実際、新型クラウンはハリアーに近い価格でいながら、レクサス「RX」の質感に近づいた。
ハリアーを開発した佐伯さんに以前、話を聞いたとき「今までアメリカではハリアーを販売していなかったんです。考えてみたらそもそも初代ハリアーというクルマはレクサス用に作ったもの。だったらハリアーをアメリカで売ったら面白いんじゃないかと思いました」
ということで、現行ハリアーを「ヴェンザ」という名前にしてアメリカで販売したところ、予想以上のヒット車になったのです。
■国内でのライバルはハリアー でも新型クラウンのほうが上質!
SUVスタイルの新型クラウンは、当然のことながら日本でハリアーとバッティングします。そこで開発チームはハリアーより上質なクルマを目指しました。
この時点で新型クラウンが面白いクルマになっていることがわかると思います。
そもそも初代と2代目のハリアーは、同じく初代・2代目のレクサスRXと基本的に同じクルマです。したがって、ハリアーには高級なインテリアなども与えられていました。
そして新型クラウンは、ハリアーより上質なクルマを目指したのだからヤヤこしい(笑)。
新型クラウン(クロスオーバー)と豊田章男社長(撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)
一方、クラウンの開発チームは常に「トヨタ最上級」が開発目標としていますが、レクサスほどのお金のかけ方はしていない。
でもやっぱりクラウンです。ハリアーより明らかに上質な雰囲気に仕上がっています。
それでいてハリアーとの価格差はそれほど大きくない。クラウンというブランドを考えたら、むしろお買い得感すら出てきます。
ハリアーと新型クラウンで迷ったら、少なからぬ人が新型クラウンを選ぶのではなかろうか。逆にいままでクラウンに乗ってきた人は、もしかしたら新型を見て躊躇するかもしれませんね。
ただSUVになっても開発チームは長年クラウンを手がけてきた人たち。ドライビングポジションや乗り味に代表される「クラウンの文法」をしっかり取り入れているそうです。
ハンドルを握れば「クラウンだね!」になる可能性は大かもしれません。
※ ※ ※
中嶋さんと佐伯さんという「稼ぐトヨタ車」を手がけてきた2人の「野望」は国内だけに留まらなかったようです。
アメリカで、「クラウン」という、少しばかり大げさにいえば「トヨタとレクサスに続く第三のブランド」を作ろうとしている。前述の通り「少し上級なトヨタ」だ。
当然ながらSUVになった新型クラウンだけだとインパクトに欠けます。そこで一気に、クロスオーバー(SUV)、セダン、スポーツ、エステートという4つのモデルをラインナップする作戦に出たというわけ。
この流れ、おそらく「セダンが売れなくなったからSUVにしよう」という小さい動きから始まったと思う。けれど退歩や負けが嫌いな2人は、結果的に「攻め」の戦略を立ち上げたカタチです。
大型のセダンは「セルシオ」の後継モデルという位置づけになるだろうから、トヨタにとって久々のフラッグシップになります。アメリカでも「クラウン」という伝統的なブランドで新しさを出せるでしょう。
これは、新型クラウンの試乗が非常に楽しみです。
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