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街中を「戦車が走る!?」なぜ? 「信号も待ちます。戦車も公道を走ります!」 異様な光景が見られるワケとは

くるまのニュース / 2022年7月31日 6時10分

普段街中ではあまり見かける機会のない「戦車」。実は一部の地域では戦車が公道を走っている光景が見られます。

■「戦車もくるま。公道を走ります。」

 公道を走る車両といえば、乗用車やトラック、バイクなどが挙げられます。一部の条件下では農業に使うトラクターなども走ることがあります。
 
 そうしたなかで、駐屯地の周辺では公道を戦車が走行する光景が目撃されます。どのような背景で公道を走るのでしょうか。

 日常見かける自衛隊のクルマといえばトラックがほとんどです。

 戦車が公道を走るなど怪獣映画やアニメのなかだけのようで非日常的なイメージです。

 ところが戦車も輸送車に載せられて移動するのではなく、映画やアニメのシーンのように公道を自走することもあるといいます。

 戦車にも一般のクルマと同じようにヘッドライトはもちろん、方向指示器やブレーキランプ、サイドミラー(脱着式)も付いており公道を走ることが可能です。

 もちろん交通法規を遵守し一般車に混じって交差点で信号待ちをしますし、右左折する際には方向指示器も点滅させます。

 有事の際には公道を走行することも想定しなければならないので「路上教習」も訓練の一環なのです。

 装軌式(いわゆるキャタピラ)の74式、90式、10式といった戦車は悪路走破性は優れていますが、どこでも走れるという訳ではなく色々な制約あります。

 一方戦車に見える装輪式(タイヤ)の16式機動戦闘車の走破性は戦車より劣りますが公道を走る制約は逆に少なくなっています。

 大分県玖珠町のホームページには「戦車道における戦車等の通行予定について」、北海道千歳市のホームページには「C経路通行予定のお知らせ」というお知らせページがあります。

 表題のC経路とは何のことやらわかりませんが、戦車などが東千歳駐屯地から北海道大演習場まで移動する際の公道を含む区間を「C経路」と呼んでいます。

 これらホームページは訓練や演習で戦車や装甲車などが公道を走ることを自治体が告知しているものです。

 これが戦車を公道を走らせる現実の大変さの一端です。装軌式の戦車や装甲車が走る経路は決められており、交差点などには誘導と安全管理の自衛隊員が立ちます。また周辺への振動や道路の破損を防ぐため低速で走行しなければなりません。

 90式戦車は重さ約50トン、10式戦車はやや軽量ですがそれでも約44トンもあります。

 どちらも路上最高速度70km/hとされており、公道を走る分には十分な速力のように思えますが、重さ50トンもの戦車がそんな速力を出せば激しい振動が起きて、道路を破損し周辺住民にも迷惑がかかるうえに危険です。

 演習場内でも戦車が走った後の路面は相当に荒れており、装輪車では走れない状態になっていることも多く、演習場整備を主に担当する「施設科」からは「戦車は壊し屋」と呼ばれているといいます。

 そのため、道路面の破損を防ぐため履帯にはゴムブロックを取付けますが、何十個ものゴムブロックをひとつずつボルト止めしていくのですから取付作業だけでも大変です。

■地元民には見慣れた光景!? 戦車が街中を走る様子とは

 千歳市の「C経路」を通る際には10km/hという速度制限もあります。交通の流れを阻害してしまいますので、車列の先頭には戦車が来ることを予告する先導車が走り、最後尾にはこの先に戦車が走っていることを知らせる後衛車も付きます。

 戦車の操縦手は視界が限られますので、車長と装填手が砲塔身を乗り出しながら前後左右の状況を常に確認します。

 交差点などの要所には誘導と安全管理の隊員が立ち、旋回するときには履帯のゴムブロックの摩擦で横断歩道などの白い塗面が汚損することを防ぐため、路面に水を入れたポリタンクで横断歩道や停止線にひんぱんに水を撒きます。

 この水も駐屯地から大型トラックでわざわざ運んできたもので、剥離したゴムブロック片を丁寧に手作業で回収。全と周囲の環境に大変に気を使っていることが分かります。

 時速10km/hとはいえ、重さ50トンの鋼鉄の塊が通過すれば地面から地響きが伝わってくる大迫力ですが、地元では日常風景のようで戦車が信号待ちしていても、コンビニの脇を通っても特に驚く様子もありません。

 待ち構えるマニアや、たまたま遭遇した観光客が驚いてカメラを向ける位です。

 低速の車列ですが渋滞を起こすわけでもなく、一般車が車列に混じったり戦車を追い越したりするのも慣れたものです。さすがに戦車を煽るようなツワモノも居ないようです。

一般車に混じって信号待ちする73式装甲車。塗面を保護する散水作業が続く。(画像:月刊PANZER編集部撮影)一般車に混じって信号待ちする73式装甲車。塗面を保護する散水作業が続く。(画像:月刊PANZER編集部撮影)

 一方装輪式の16式機動戦闘車は装軌式よりはずっと制約が少なく、エンジンをかけたらトラックと同じようにすぐに駐屯地から公道に出られます。

 こちらは基本的に安全管理の要員も事前に配置はされず、この臨機即応性が戦車とは違うメリットです。

 ちなみに宮城県大和町でも2018(平成30)年まで大和駐屯地から王城寺演習場まで戦車が公道を移動する告知が出されていましたが、2019(平成31)年に74式戦車を装備する第6戦車大隊が廃止され、第22即応機動連隊の16式機動戦闘車に更新されてから告知されることはなくなりました。

 戦車と機動戦闘車は似て非なるもので、走破性と公道走行の制約という真逆の特性をもっています。

 有事には戦車もそんなに行儀よく走ってはいられないでしょうが、戦車といえども縦横無尽に走れるわけではないです。

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