なぜシフトは「P‐R‐N‐D」採用が多い? 15代目「クラウン」もストレートタイプ! 車種で操作感異なるも配列が同じ理由とは
くるまのニュース / 2022年8月4日 7時10分
最近では、新車のうちほぼすべてがAT車となっています。AT車のシフトパターンは、「P‐R‐N‐D」であることが一般的ですが、なぜこの配列が多く見られるのでしょうか。
■シフトパターンはメーカーに関わらず「P‐R‐N‐D」なのはなぜ?
クルマのトランスミッションには大きく「AT」と「MT」が設定されており、現在の日本での比率は9割以上がATだといいます。
そんなAT車のシフトパターンは、「P‐R‐N‐D」であることが一般的ですが、なぜこの配列が多く見られるのでしょうか。
運転免許を所有している人であればイメージがつきやすいかもしれませんが、AT車のシフトレバーには「P」「R」「N」「D」といったアルファベットの記載があり、それぞれシフトがどのギアに入っているのかを目視できるようになっています。
例えば、「P」は「parking(駐車)」、「D」は「drive(運転)」を示しています。
アルファベットの表記を理解しておくことは、運転者にとって大前提ともいえる知識のひとつです。
そんなAT車のアルファベットの配列、すなわち「シフトパターン」には、AT車が普及し始めた当初より「ストレートタイプ」が多く見られます。
ストレートタイプは、シフトパターンが一直線に並んでいる形状となっており、基本的に上から「P‐R‐N‐D」の順番で配列されています。
これは、メーカーやモデルに限らず、ストレートタイプで非常に多く見られる配列です。
なぜ、ストレートタイプには、「P‐R‐N‐D」の順番のシフトパターンが多いのでしょうか。
ホンダの広報担当者は「これには法規的な要素が関連しています」と説明します。
日本工業規格(JIS)では「自動車?変速機のシフトパターン」として、AT車のシフトについて規定している項目があり、そのなかの「4.シフトパターン」には、以下の3点が記載されています。
——
・中立位置がある場合には、前進位置と後退位置との間になければならない
・中立位置から前進位置への操作における変速レバーノブの移動方向は、フロアシフト式の場合には、自動車の前進方向に見て後方とし、コラムシフト及びインストルメントパネル式の場合には、下方とする
・駐車位置がある場合には、シフトパターンの最も端にあり、かつ後退位置と隣接していなければならない
——
ここでいう「中立位置」とは、すなわち「N」を示しており、そのほかにも「前進位置」は「D」、「後退位置」は「R」、「駐車位置」は「P」を表します。
つまり、この内容に則って考えると「『N』は『D』と『R』の間」であり、「『N』は『D』の次の位置」、そして「『R』はシフトパターンの端で、『R』と隣り合わせる必要がある」ということになります。
そうなると、おのずと各ギアの位置関係は決まったものとなり、結果として、AT車のストレートタイプのシフトパターンは「P‐R‐N‐D」の配列であることが多くなるのです。
■ストレートからゲート…さらに進化が進む最近のAT車のシフトはどうなってる?
前述したように、AT車のシフトには、ストレートタイプが多く見られますがほかにも「ゲート式」が広く普及しています。
ゲート式では、シフトパターンの配列はストレートタイプと同様に「P‐R‐N‐D」になっているものの、ギアの配列がギザギザとしているのが特徴的です。ストレート式と違って、各ギアでシフトが固定されやすくなっているので、シフトミスを防ぐというメリットがあります。
もとは、メルセデス・ベンツが特許を有していたシフト形状となっていたため、ほかのメーカーが活用することはできませんでしたが、特許の期間が失効したことで、幅広いメーカーで採用されるようになりました。
また、近年では、電気信号を用いてシフト操作をおこなう「シフト・バイ・ワイヤ方式」が普及しています。
シフト・バイ・ワイヤ方式では、ミッション本体とシフトセレクターを機械的につなぐ必要がないため、好きな場所にシフトを設置でき、シフトノブの形状や大きさなども自由にデザインできます。
自由度の高いシフト・バイ・ワイヤ方式の普及によって「スイッチ式」、「ダイヤル式」、「ジョイスティック式」など、最近のAT車のシフトはバリエーションが豊富になっています。
16代目となるトヨタ新型「クラウン」はシフト・バイ・ワイヤ方式を採用したことで配列が変わっている
ただし、シフト・バイ・ワイヤ方式のシフトを採用しているクルマであっても、ガソリン車の場合は従来の「P‐R‐N‐D」の配置を変えずに引き継いでいるモデルが多いのが実情です。
これには、シフトの操作ミスを防ぐという重要な役割があることが考えられます。
これまで長らくクルマを運転してきたユーザーにとって、シフト操作は目視でおこなうものではなく、感覚的におこなうものとなっています。
もちろん、目で見てシフトの位置を再確認する人もいるかもしれませんが、それはあくまでも念のための確認であり、基本的にアクセルやブレーキペダルを操作するのと同様に、シフトは目視しながら操作するものではありません。
そのため、運転に慣れているベテランであればあるほど、「P‐R‐N‐D」のシフト感覚が手に強く残り、ほかのパターンになっていたときに、思いがけずシフトミスをおこしやすいという可能性があります。
なお、ダイヤル式では、縦方向のギア配列ではなく、横方向のギア配列になっているモデルが多く見られますが、そうした場合でも横方向に「P‐R‐N‐D」が並んでおり、ほかのシフト形状と同様のイメージで操作できるようになっています。
シフトの形状は多様化していますが、ユーザーの運転のしやすさを考慮するとシフトパターンの変化が急激に起こることはなさそうです。
※ ※ ※
ちなみに、モデルによっては、「P‐R‐N‐D」のあとに「B」や「L」のギアも設定されている場合があります。
「B」は「brake(ブレーキ)」、「L」は「low(ロー)」を表しており、どちらも勾配が急な上り坂など、パワーが必要な走行時に活用できるようになっています。
モデルによって、シフトパターンは異なるため、初めて運転するクルマや運転が不安な場合には、走行前にシフトの確認をしておくのが良いかもしれません。
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