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トヨタグループ「日野自動車」に何が起きた!? 「上にモノがいえない」異常な企業風土 エンジン不正の調査報告からみえたこと

くるまのニュース / 2022年8月3日 17時10分

日野自動車は2022年8月2日、エンジン認証の不正があった問題に対し、外部有識者による特別調査委員会の調査報告書を関係省庁に報告しました。課題は日野の企業体質にも言及され、根深い問題であることが示唆されています。

■新たな虚偽報告も発覚! 不正な認証手続きは20年も前から続いていた!?

 日野自動車(以下、日野)の認証不正について、驚きの事実が明らかになりました。
 
 日野が2022年3月4日公開した、トラックやバス向けのエンジンの認証について不正があった問題に対して、外部有識者による特別調査委員会は8月2日、全277ページに及ぶ調査報告書をまとめて関係省庁に報告しました。

 何が驚きかといえば、不正は2000年代から行われていたことが分かり、またその原因が「上に物を言えない」という企業風土にあると、特別調査委員会が結論付けた点です。

 調査は、認証不正に影響があると思われる部門の社員、元社員、また認証不正が判明した期間の歴代社長など幹部など101名(のべ243回)のヒアリング調査、また日野に所属する従業員合計9232人を対象としたアンケート(回答率22.6%)を実施しています。

 まず、不正が行われていた対象エンジンですが、2022年3月4日の会見時点では、対象エンジンは中型エンジンが1機種と、大型エンジン4機種であり、それぞれ2016年度排出ガス規制(ポスト・ポスト新長期規制)であるとしていました。

 ところが、今回の調査では、事態はもっと深刻なことが判明したのです。

 なんと、認証不正は、2003年度排出ガス規制(新短期規制)から確認され、その後の2005年度(新長期規制)、2009年度(ポスト新長期規制)、そして2016年度(ポスト・ポスト新長期規制)にかけて20年近くも継続して行われていたことが分かったのです。

 具体的には、車両用ディーゼルエンジン(オンロードエンジン)については、排気ガス規制については、2003年度・新短期規制以降に「幅広い機種において、主に劣化耐久試験に関する不正行為が判明」しました。

 燃費については、2005年度・新長期規制の以降に、「主に大型エンジンにおいて燃費測定に関する不正が判明」しています。

 燃費不正については、2009年4月から導入されている、環境性能に優れた自動車に対する税に対する特例措置のエコカー減税が導入されており、その基準達成のために、例えば燃料流量校正値を操作するなど、様々な手口によって燃費測定値を改ざんしていたということです。

 また、産業用ディーゼルエンジン(オフロードエンジン)でも認証不正が見つかり、排気ガス規制について、2011年度規制(3.5次規制)以降の「幅広い機種において、主に劣化耐久に関する不正行為が判明」したのです。

 このように、過去20年ほどの間に日野が生産した多種多様なエンジンのほとんどで何らかの認証不正が行われていたことになります。

※ ※ ※

 それからもうひとつ、今回の調査で明らかになったのが、いわゆる「2016年問題」に対する虚偽報告です。

 日野が2022年3月4日に実施したオンライン会見の際、筆者(桃田健史)は当時の下 義生会長(2022年6月退任)に対して、「2016年に三菱自動車工業等が軽自動車の燃費不正が発覚した際、国土交通省から日野を含むメーカー全社に、(道路運送車両法に基づいて)認証取得時の排ガスや燃費の不正に対して社内調査書を国土交通省に提出することが義務付けました。その時点で、御社は認証不正はないと報告していると思いますが、この点をどう考えていますか?」と聞いています。

 これに対して、下会長(当時)は、2016年の報告書では不正がないと報告しているが、タイミングとして不正が行われていた可能性も考えられるため、特別調査委員会で詳しく調査する、との主旨で回答していました。

 今回の調査では、2016年問題の国土交通省に対する報告について、「不適切な事案はない旨を回答。しかし、その報告の根拠とされるデータや、認証申請時の資料や試験データが存在しなかったために調査に回答する時点で作出されたものや、認証申請の時点で既に数値が不正に調整されていたものであったことが判明した」という、不正の上塗りによる虚偽報告であったと結論付けています。

■「上意下達」「パワハラ」が横行… 認証不正は日野の「風通しが悪い企業体質」が原因!?

 調査報告で、日野の組織体系や、商品の企画、開発、実験、認証などのプロセスについて詳しく触れています。その中で、”不正の舞台”となったのが、パワートレイン実験部であるとしています。

 同部に従事する人は、業務の経験と高い専門性が要求されるために人事異動も比較的少なく、社内でもパワートレイン実験部は”ブラックボックス化”してしまい、そのため様々な不正行為が継続してしまったと分析しています。

 問題なのは、パワートレイン実験部から出たデータについて、品質保証に関する部署の認証に対するチェックの甘さ(または行っていない)など、社内のクロスチェック機能が働いていなかった点です。

日野 大型路線バス「ブルーリボン ハイブリッド」日野 大型路線バス「ブルーリボン ハイブリッド」

 また、不正が日野全体としての組織的な行為だったかについては、パワートレイン実験部の担当役員や、社長などの経営陣が不正の事実を把握した証拠は見つからなかったとしています。

 だからといって、本事案をパワートレイン実験部や、関与した個人を非難するような声が多いかといえば、全従業員アンケートの中では「必ずしもそうではない」、とのことです。

 多くの日野従業員が感じていたことは、日野全体の企業風土や企業体質に根本的な問題があるという点です。

 調査報告書では、今回の問題の真因を大きく3つ挙げています。

1.みんなでクルマをつくっていないこと

2.世の中の変化に取り残されていること

3.業務をマネジメントする仕組みが軽視されていたこと

 一般ユーザーの視点では、にわかには信じがたい言葉が並んでいますが、これが日野の実態であるということでしょう。

 また、特別調査委員会の榊原一夫委員長が会見の中で、何度も「上意下達の気風が強過ぎる」という言葉を使ったことが印象的でした。

 調査報告書の中でも、「上に物をいえない」「できないことをできないと言えない」風通しの悪い組織になっていたと分析しています。

 さらに、従業員アンケートからは「日野のパワーハラスメント体質を問題視する回答が数多く寄せられた」として「日野は、残念ながら、パワーハラスメントに対する社会の認識の変容に付いていけなかったために、結果として、古くから社内の一部に蔓延るパワーハラスメント体質をいまだに抱えているように思われる」と、かなり厳しく批評しています。

 日野はすでに、一連の認証不正に対する再発予防策を発表していますが、調査報告書にあるように、問題の本質は極めて根深く、従業員の意識改革を伴い企業として再編するためには今後、かなりの年月が必要になりそうです。

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