なぜ「歩行者に譲られたのに…」違反認定? 妨害ではないのに青キップの謎! 警察の見解はいかに
くるまのニュース / 2022年8月8日 9時10分
信号のない横断歩道で歩行者に譲られて進行したクルマの運転手が「横断歩行者妨害」として取締りを受けたケースがSNSで話題となっています。基本的にクルマは一時停止し、歩行者に進路を譲ることが義務付けられていますが、歩行者側から「お先にどうぞ」と合図を受けて進んだ際でも違反となるのはなぜなのでしょうか。
■「お先にどうぞ」に困る! 取締り撤回の事例も?
信号のない横断歩道に歩行者がいる場合、基本的にクルマは一時停止し、歩行者に進路を譲ることが義務付けられています。
しかし、ときには歩行者側から「お先にどうぞ」と合図を受けることもあります。SNSではこのように譲られて走り出した結果、取締りを受けたというケースが話題になっていますが、このような場合、クルマが先に通行しても良いのでしょうか。
信号のない横断歩道で横断しようとする歩行者などがいた場合、その手前で一時停止して進路を譲ることはドライバーとしての義務です。
道路交通法38条1項には「横断歩道等における歩行者等の優先」として、以下の内容が定められています。
「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」
つまり、信号のない横断歩道にさしかかる際、歩行者などが付近にいればすぐに停止できる速度で通行する必要があり、横断しようとする人や横断している人がいる場合は、必ず横断歩道の手前で一時停止し、横断を待つことが求められています。
万が一、違反した場合には「横断歩行者妨害」として、2点の反則金9000円(普通車)が科されます。
冒頭でも述べたように、この法令は多くのドライバーにとって当たり前に認識されているものであり、ほかの交通に配慮することは道路を走行する際のマナーともいえます。
一方で、横断歩道の手前で一時停止した際に、歩行者から「お先にどうぞ」と道を譲られる機会があるかもしれません。
これは、歩行者側に横断する意思がなかったり、なんらかの事情でクルマに先に通行してほしかったりとさまざまな要因が考えられますが、基本的に「お先にどうぞ」と譲られたら「先に通行してしまおう」と考えるのが普通です。
しかし、なかには、実際にこうしたやり取りをしたうえで歩行者より先にクルマが通行してしまい、取締りを受けたケースもあるようです。
さらに、現在、SNSではそうした取締りの撤回を求めた事例が話題となっています。
話題となった事例では、対応にあたった弁護士が一部始終をSNS投稿にしており、結果として、1か月間の係争の末に「横断歩行者妨害」の処分は撤回となったようです。
この件について、SNSでは「歩行者がいるなら赤信号と同等」「交通法規はドライバー側が釈然としない曖昧なものも割りと多いからしっかり改正してほしいですよね」「過去にどれだけ、誤認で切符切ってきたんだろう」などの意見が飛び交っています。
■実際にはどう? 歩行者に譲られても…基本は「歩行者優先」なの?
では、実際のところ、一時停止後に歩行者に道を譲られクルマが先に進行するのは、取締りの対象になるのでしょうか。
まず、首都圏の警察関係者は、横断歩行者妨害の前提について以下のように話します。
「正直な結論といたしましては、そのときの道路の状態や、歩行者に及ぶ危険がどのくらいあったのかといった、状況によってしまうというのが実情です。
基本的には、横断歩道や交差点などでは、クルマは徐行し、渡りそう、もしくは渡っている歩行者がいないかを確認するために一時停止してください。
もし、そうした歩行者がいた場合には歩行者を優先し、いないことが確認できた場合にはクルマがそのまま通行するというのは、交通ルールとして必ず守ってください」
このように、横断歩行者妨害については、ケース・バイ・ケースとなることが多く、一概に取締りになる場合と、取締りにならない場合を線引きすることは難しいようです。
信号がない横断歩道で歩行者から譲られても…基本は歩行者優先?
では、横断待ちの歩行者から、クルマが「お先にどうぞ」と譲られた場合ではどうでしょうか。前出の担当者は、次のように説明します。
「歩行者に『お先にどうぞ』と道を譲られた場合であっても、歩行者が道を譲ったにもかかわらず、クルマが動き出すまでにかかる時間の間で歩行者がいきなり渡ってきたり、ほかの歩行者が急に歩き出してきたりという事例が多く見られます。
たとえ歩行者に道を譲られたとしても、そこでクルマが走行したことによって、もし歩行者に危害が加わってしまった場合には、違反に該当してしまう恐れがあります。
基本的には、歩行者の進行を妨げてはならないというのは鉄則であるため、クルマ側は、『譲られたとしても歩行者に譲り返す』というように、歩行者優先を心がける必要があります」
※ ※ ※
歩行者側は、「進路を譲ってもらって申し訳ない」「ゆっくり渡りたいからクルマに先に通行してほしい」「急いでないから先に譲ってあげよう!」などの事情からクルマに進路を譲っているケースもあり、横断しない場合は誤解を招かないように横断歩道から離れた場所にいるのが良いでしょう。
前述とは別の警察関係者は「基本的には歩行者に譲られた場合でも、歩行者側を優先して頂ければと思います。また歩行者側で渡らない意思があるのであれば、1、2歩下がって頂くなどをして頂くのが良いかと思われます」と話しています。
また、前述のように歩行者の意思でクルマに進路を譲ったにもかかわらず違反と判断された場合、ドライブレコーダーなどの映像を持って警察署などに相談するのが良いかもしれません。
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