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岡山「用水路」で事故相次ぐ、なぜ? 気づかぬ「転落事故」多発も! 行政が進める対策案とは

くるまのニュース / 2022年8月30日 9時10分

かつて「人食い用水路」といわれた岡山の転落事故。岡山市消防局によると、2020年の救急出動件数は88件と2016年から3割減少したことが明らかになりました。また2022年になってもゲリラ豪雨などで度々氾濫する用水路が取り上げられ話題となっています。現在、どのような対策がおこなわれたのでしょうか。

■度々話題となる岡山県の「用水路転落事故」 なぜ起きるのか?

 用水路への転落事故が相次いで発生していた岡山県。死亡事故も多発したことから「殺人用水路」とも呼ばれ、これまでもさまざまな報道やSNSで度々話題とされてきました。
 
 県をあげて対策をすすめ、近年、事故は減少傾向にあるものの、今もまだ転落してしまう人は後をたたないようです。

 岡山県は、用水路への転落事故が多い県です。それが明るみになったのが2013年、用水路への転落死亡事故数が13件となり全国ワースト1位となったときでした。

 2013年から2015年の3年間では総計1143件もの転落事故が発生しており、うち79人が亡くなっています。

 さらに、2016年の大雨の際には、道路の高さまで増水し、境界のみえなくなった用水路にクルマが落ちて水没するというショッキングな事故まで発生。

 この水没事故については、世間的にも大きな話題となり、いつしか「殺人用水路」「人食い用水路」とまで呼ばれるようになりました。

 死亡事故のなかには溺死だけでなく、転落時に頭を打って亡くなるケースもあり、また命は助かっても後遺症が残る人もいるようです。

 なぜ用水路で転落事故の発生が多発しているのでしょうか。岡山県警察の担当者は、以下のように話します。

「特別原因や理由が判明しているわけではないのが実情ですが、“まっすぐな道を歩いていて急に用水路に転落する”という例はよくあります。

 また、高齢者の事故や、夜間の転落事故が多いため、“夜間で周囲がよく見えず、そのまま用水路に突っ込んでしまった”というケース。

“高齢者でハンドルやブレーキ操作がおぼつかず、用水路に転落してしまった”という事例が多いのではないかと思います」

 さらに続けて、前出の担当者は「岡山県は、用水路が多い土地ではあると思います。ほかの土地の用水路と比べても、比較的長いのも特徴です」といいます。

 実際、岡山県の歴史を辿ると、古くは江戸時代にかけて造成された新田開発の干拓地で、主要な稲作地帯を形成してきました。

 近代に入ると児島湾の干拓が進められ、水田地域が拡大していき、数多くの用水路が整備されていきました。そこに宅地開発も進んだため、用水路が張り巡らされた街並みとなったという歴史背景を持ちます。

 県内の用水路には、最大で幅1m・深さmを超える大きさの場所も存在。住宅地のすぐそばを流れる用水路もあり、あまりの数の多さから柵やガードレールもすべての用水路には設置されていないのが実情です。

 用水路で転落事故が多発する要因について、以前の取材時に岡山市の市役所の担当者は「用水路は総延長約4000kmとほかの地域と比較して多いことや、用水路が住宅地に隣接していること、そして柵のない用水路が多いなど、さまざまな原因が考えられます」と説明していました。

 とくに雨が降り水位が上がっているときや、夜間など視界の悪い時間帯にはやはり、道路と用水路の境界が認識しにくくなり、その道を普段よく利用する人でも転落してしまうこともあるようです。

■ どのような防止対策が施されている? 効果はあったのか?

 用水路への転落事故が相次いで発生していることについて、岡山県側も重く捉え、2015年には岡山県、市町村、県警などの県内関係機関が集まり、「用水路等転落事故防止対策検討会議」が開催されました。

「ストップ! 用水路転落」をスローガンに掲げ、2018年には用水路事故への対策をまとめた「用水路転落のガイドライン」も作成しています。

 ガイドラインに則り、柵、ガードレール、視線誘導標(デリネーター)、ラバーポール、区画線、大型反射材、道路照明などの設備を、危険な場所から優先して設置してきました。

 また、前出の岡山県警察の担当者は、このような用水路の転落事故における対策について、以下のように話します。

「用水路における事故が多発していることを重く受け止めており、実際に岡山県では交通安全講習などで、“用水路での事故には気をつけてください”というような注意喚起を強くしております。

 また、建設業者とも話し合い、用水路の周囲にはガードパイプを取り付けるなど、物理的な対策もとっています」

柵が設置されている場所も存在するが、すべてに柵などの物理的な対策をおこなうのは難しいようだ柵が設置されている場所も存在するが、すべてに柵などの物理的な対策をおこなうのは難しいようだ

 こうした転落防止対策が施されたことで、事故は少しずつ減少傾向にあるようです。

 前出の担当者によると、2022年の用水路における事故件数の母数は小さいといいます。

 また、2021年9月7日に岡山市は、用水路の転落事故による消防局の救急出動件数が、2016年の137件に対し、2020年は88件と、約50件減少したことを発表しています。

 しかしその一方で、前出の担当者によれば、クルマのほかにも、自転車やバイクなどの転落事故が多発しているといいます。

 かつてのようにクルマごと水没するというようなショッキングなトラブルはほぼ抑えられているようですが、こういった自転車などの転落事故はまだまだ発生しているようです。

 転落防止用の柵やガードレールの設置は進んでいますが、今もすべての用水路に設置されているわけではありません。用水路の近くを走行する際には引き続き注意が必要といえます。

 クルマを運転するドライバー側ができる対策として、岡山県警のおこなう安全啓発では「脇見をしながらハンドル操作を行なわない」「夜間は必ずライトを点け、道路をよく見て走行する」「道路が冠水するような雨天時には運転(外出)を控える」の3項目が挙げられています。

 どれも当たり前のことではありますが、これらの基本ができているか否かも、事故の発生を左右します。とくに雨天や夜間など、視界が悪くなる状況では、必要以上に注意したいところです。

※ ※ ※

 このような用水路の転落事故は、岡山県に限った話ではありません。用水路は全国各地にあり、他県でも用水路に転落して死亡する事故は発生しています。

 走り慣れた道路で転落するケースもあり、柵やガードレールが設置されていたとしても、絶対に安全とはいい切れません。

 用水路の近くを走行する際には、ドライバーや歩行者側が注意する意識を持つことが何より大切です。

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