5ナンバーだけど「車中泊」も可能!? トヨタ 新型「シエンタ」がサイズを変えず室内を拡大した「マジック」とは
くるまのニュース / 2022年8月31日 6時10分
トヨタは小型ミニバン「シエンタ」のフルモデルチェンジでプラットフォームから全面に見直し、小型サイズを維持しながら室内空間を拡大しました。新型シエンタがおこなった新しいパッケージングの工夫をレポートします。
■「マジック」ではない! 地道な見直しの積み重ねで実現した空間の拡大
2022年8月23日、トヨタは小型ミニバン「シエンタ」をフルモデルチェンジしました。先代モデルと変わらぬ全長と全幅で5ナンバーサイズを維持しながらも、設計を全面的に見直しし、とくに2列目シートの空間を拡大したのが大きな変更点です。
また2列シート仕様は3列シート仕様とはシートアレンジも変え「車中泊」を意識した造りとなりました。そんなさまざまな工夫が凝らされた新型シエンタの「パッケージング」を紹介します。
シエンタは2003年デビューの初代以来、一貫して5ナンバー規格に収まる小型車サイズを維持しています。都市部などの狭い街中での扱いやすいコンパクトさから、一定の支持を集め続けています。
3代目となる新型のボディサイズは、全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mm。ホイールベースは2750mmです。
先代の2代目シエンタと比較すると、全長、全幅、ホイールベースの寸法は共通で、全高のみ20mm高くなっていますが、新旧でほぼ変わらないサイズといってよいでしょう。
ただし新型はパッケージング(車体のレイアウト配置)を見直し、先代モデルよりも室内空間を拡大させました。
それはけっしてマジックではなく、地道な設計の見直しを積み重ねたものです。
具体的には、後輪から後ろの寸法を5mm短縮し、逆に前輪前の寸法を5mm拡大したうえ、TNGA GA-Bプラットフォーム化でペダルやステアリング、シートの各部レイアウトの全面見直しを図っています。
さらに全高の20mm拡大で頭上空間を高めたうえ、側面窓の直立化により乗員の空間をさらに確保したのも大きな変更点です。後席(2列目)の頭上側方のヘッドクリアランスは、先代比でプラス60mmも拡大しています。
またシートレイアウトの見直し効果により、2列目シートの足元空間も大きく拡大させました。前席(1列目)と2列目シート間の距離(カップルディスタンス)も先代と比べ80mmプラスし、最大1000mm確保しています。
加えて、水平基調で低いベルトラインのデザインとし、窓からの視界も拡大したことで、広く解放的な室内空間をさらに効果的に演出しています。
先代シエンタのユーザーが新旧を乗り比べてみれば、後席の広々感の違いは明確に気付くことでしょう。
■2列・5人乗り仕様なら「車中泊」できる! 3列・7人乗り仕様との違いとは
ボディサイズをほぼ変えずに室内空間を拡大させた新型シエンタですが、同時に荷室の使い勝手も向上させています。
またユーザーの使い方の違いに合わせ、3列シート車と2列シート車では荷室空間のアレンジも異なる仕様としている点も特徴として挙げられます。
コンパクトサイズながら巧妙なパッケージングを成立させたトヨタ 新型「シエンタ」3列シート・7人乗り仕様車
まずは3列シート・7人乗り仕様の荷室から紹介します。
荷室拡大の際には、3列目シートを2列目座面の下に潜り込ませる巧妙なシートアレンジを先代同様に採用しています。
後席2列目シートは座面ごと前倒しするダブルホールディング式です。
荷室側のバックドア開口部の高さを15mm拡大し1070mmとしたことで、2列および3列目シートをたためば通学用27インチ自転車も容易に積載できる空間を確保しました。
2・3列目シートを収納した際の最大荷室長は1525mmと先代と同等の寸法ですが、前出の通り室内高が20mm拡大しており、拡大したバックドア高と相まって使い勝手は向上しています。
頻繁に3列目シートを出し入れするような使い方にはあまり向いていませんが、トヨタの調べでも多くのユーザーは日ごろ3列目シートを収納したまま荷室を拡大して使用しているといい、この方法が継承されたようです。
これに対して、2列・5人乗りの荷室アレンジは少し異なります。
3列目シートを収納する必要がないので、2列目シートは背もたれを前倒しさせ、同時に床面へ潜り込むように収納するチルトダウン式となっているのです。
背もたれの角度もより水平に近い角度に最適化したほか、シートと荷室床面のすき間を埋めるフラップボードも追加されたので、荷室面からほぼフラットな床面がつながりました。
前席シートを前倒しした際の荷室最大長(シート背からバックドアまでの長さ)は2045mm。前席使用時(背もたれを中立化した状態)でも1865mmを維持しています。
前倒しした後席シートが邪魔をし、じゅうぶんな荷室長を確保できない3列シート仕様とは異なり、2列シート車なら大人2名が車中泊することも可能な、長くて広い空間を確保しているのです。
3列目シートを使う用途がなく、広い荷室を常に使いたいと考えるのなら、2列シート・5人乗り仕様も検討するとよいでしょう。
※ ※ ※
歴代シエンタの特徴でもある後席両側のスライドドアも、改良が図られています。
フロア地上高は先代同様の330mmと低く、子どもや高齢者でも容易な高さを維持した新型シエンタでは、ドアの開口部の高さも60mm拡大し1200mmとしたことで、さらに乗り降りしやすくなりました。
また、キーを携帯した状態で足をフロア下に出し入れすると、スライドドアの自動開閉が可能な「ハンズフリーデュアルパワースライドドア」を新設定し、使い勝手もさらに向上させています。
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