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「格安車検」なぜ早くて安い? 金額だけで選んではいけない「車検」の実態とは?

くるまのニュース / 2022年8月31日 14時10分

クルマを保有し、公道を走行するうえで避けては通れないのが「車検」です。ディーラーなどに依頼して車検の取得代行をお願いする方法が一般的ですが、最近は安い費用で済む「格安車検」などが人気になっています。

■「格安車検」の内容は「ユーザー車検」と一緒?

 クルマを保有し公道で運転するためには「車検」が必要です。普通車であれば、新車登録から3年、その後は2年ごとに「保安適合基準」と呼ばれる公道を走行するうえで問題がないかを審査し、合格すると車検証が発行されます。

 この車検を受けるためには、各地域の陸運局の検査場に実際にクルマを持ち込み、灯火装置(ライトなど)、タイヤの残量、窓の傷の有無、保安基準が定められている内装の装備類、メーターに表示される警告灯での異常の有無などが検査され、販売店や整備工場などに取得代行をお願いするのが一般的です。

 そんななか、規制緩和によって約20年前から「ユーザー車検」という制度が誕生。クルマの所有者である「ユーザー」が自ら試験場に車両を持ち込み、検査を受け車検を取得するというものです。これにともない、手数料を安価に設定した「格安車検」も増えており、人気になっています。

 しかしこの格安車検はのちに故障やトラブルへと発展するケースが多いといいます。それは一体どういうことなのでしょうか。

 とくに国産車は故障が少なく、よほどひどい使い方をしなければどんな状況でもエンジンはかかり、エアコンもバッチリ効きます。

 これは、日本の風土に合わせた国産自動車メーカーの努力の賜物ともいえ、多少オイルが古くても、タイヤの溝が減っていても動いてしまうのです。

 にもかかわらず、ディーラーなどの販売店に車検を依頼すると、消耗品を交換したり整備点検という名目で余分にお金を取られている気がしてしまうのですが、でも実は、この故障前の整備・交換こそが突然の不具合を未然に防ぐ最大の対処法なのです。

 一方で、車検にお金をかけたくないけど、自分で車検を通す手間も時間もない人にとっては、費用をグッと抑えられる格安車検はメリットが大きいのですが、ここにいくつもの落とし穴があるようです。そのあたりを、埼玉県で整備工場を経営するF整備士に聞いてみました。

「最短〇〇分の格安車検という文字をよく目にしますし、ユーザー車検のほうがお得という意見もあります。

 格安車検は基本的に法定諸費用と陸運局での手続き費用と印紙代程度で済むので、車検を通すだけでしたら早くて安いほうが断然良いでしょう」

 それでは、なぜ販売店や整備工場での車検は高くなってしまうのでしょうか。

「販売店や整備工場の車検は、整備費用や消耗品の交換費用が含まれています。

 格安車検のように車検を通すだけではなく、不具合が出ないように予防的措置でメンテナンスしているからこその金額なんです」(F整備士)

 実際、車検証の裏に記載されている約款には、要約すると「現状では保安基準をクリアしているけど、次の車検(2年)までの安全性を保証するものではありません」とけっこう恐ろしいことが書かれています。

「近年は1台の保有年数が伸びています。つまり、劣化した状態のままで走り続けることも可能ということです。

 オーナーは、自発的に定期的なメンテや消耗品の交換をしないといけないということなんです」(F整備士)

■「早い」「安い」が魅力でも実は何もしていない!?

 格安車検の安さのカラクリが見えてきましたが、車検の検査場でおこなう検査項目をひと通りチェックはしてくれますが、今後トラブルにつながるかもしれない箇所があっても、とりあえず何も手を加えないというのが実態のようです。

車検(イメージ)車検(イメージ)

「1か月前にオイル交換したばかりとかタイヤを新調したばかりで、クルマのコンディションに自信がある人は格安車検でも良いと思いますが、タイヤのチェックも溝の残量(1.6mm)があるか、ヒビがないかを確認するのみ。

 ブレーキなどはパッド残量が3mmしかなくても一切ノータッチですし、バッテリーの電圧が下がっていても、エンジンブロックからオイルが滲んでいてもスルー。

 これでは実際のクルマのコンディションが良いのか悪いのかの判断もしていないと同じようなものです」(F整備士)

 ただし格安車検も状況によってはメリットもあります。

 たとえば、乗り換え予定ながらも目ぼしいクルマが見つからない、新車の納期が遅れているなどで、次に乗るクルマが決まる前に車検が切れてしまうケースや、単純に費用が捻出しにくい場合などは有効でしょう。

 それでも後日、きちんと整備はしておきたいところです。

 では、車検を通す以外で何をすべきなのでしょうか。やはり点検整備は必要なのでしょうか。

「『法定点検』として、12か月点検、24か月点検がありますが、実情は法定点検しなくても取り締まりの対象になることはないようです。

 一方、車検が切れた状態で公道を走行した場合は、違反点数が6点+6か月以下の懲役または30万円以下の罰金とかなり重い行政処分となります」(F整備士)

 この法定点検は、タクシーやバス、トラックなどのはたらくクルマは法定6か月点検が義務付けられており、検査項目は22項目あるのだそうです。

「自家用車の12か月点検では26の検査項目ですが、24か月点検では56項目もあります。クルマを安全に走らせるためには、それだけの検査とメンテナンスが必要ということなんです」

 法定12か月点検では制動装置(ブレーキペダルの操作やパッドの残量、ブレーキホースの漏れの有無など)の点検・整備、動力装置(エンジンやトランスミッション、トランスファーなどの油量チェックや漏れの有無、ファンベルトやパワステの緩みや損傷の有無)の点検・整備、電気系統(点火プラグやバッテリーのターミナル接続状況)の確認、走行装置(タイヤ残量やヒビ割れの有無、ナットやボルトの緩み具合)の点検に加え、プロペラシャフトやドライブシャフト、マフラー、ヘッドライトなどの灯火類の点灯状況、ワイパーの作動状況の確認などを検査します。

 24か月点検になると、上記に加えて緩衝装置(サスペンションの取り付けや連結部のガタつきの有無、ショック類の油漏れや損傷)の確認、原動機(排ガスや一酸化炭素濃度、エアーエレメント、冷却水の漏れ)の点検、さらにはエンジンオイルやブレーキフルードの残量や劣化具合の確認なども加わってきます。

「とくに油脂類はタイミング的にも交換を前提にチェックしてもらうほうが良いでしょう。

 またブレーキ関係もパッドの残量だけでなくブレーキフルードやペダルの操作なども点検してもらえば、より安心して走らせることができると思います」(F整備士)

 最近の半導体・パーツの素材不足で、修理したくても必要なパーツが入手できないこともあります。そうなる前に保安基準に適合した部品をできるうちに交換することで、大きな故障を未然に防ぐ効果も期待できそうです。

「足回りやエンジンなど走らせるうえで重要な部分はしっかりメンテナンスしてもらうほうが、圧倒的にトラブルの発生が少なくできるでしょう」(F整備士)

※ ※ ※

「販売店や整備工場に車検を依頼したほうが良い」というわけではありませんが、やはり素人やマニアがチェックするのは限界があるもの。その点プロにお任せすれば、自分では気付かなかったトラブルも回避できるケースは多そうです。

 車検は安く済ませたいものですが、トラブルを回避して結果的に維持費を安く済ませるためにも、その都度自分に最適な車検取得方法を選択するのが良いでしょう。

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