車内清掃で「アルコール除菌」やっちゃダメ! 誤った使用でダメージも!? 内装の正しいお手入れ方法とは
くるまのニュース / 2022年9月11日 9時10分
新型コロナ禍による感染予防で手指をアルコール消毒する機会が増えましたが、クルマの内装の清掃にアルコールを含むクリーナーや除菌シートを使うのは適切ではないようです。一体どういうことなのでしょうか。
■アルコール消毒のつもりが… NGな車内清掃とは
新型コロナ禍による感染予防の観点からアルコール(エタノール)消毒液を日常的に使用するケースが増え、除菌効果がクルマにも最適と考え、アルコールを含む家庭用クリーナーや除菌シートなどで車内を拭いている人もいるのではないでしょうか。
しかし、アルコールを含んだもので内装を拭き続けると、内張やダッシュボードなどを傷めてしまうことがあるようです。
クルマのインテリアにはさまざまな素材が使われていますが、ダッシュボードやセンターコンソールなど多くのパーツは「ポリプロピレン(PP樹脂)」と呼ばれる、プラスチックでできています。
ポリプロピレン自体はアルコールで溶け出すようなことはないとのことですが、クルマのインテリアでは使わないほうが良いと教えてくれたのは、都内にあるコーティング専門店スタッフのIさん。一体どういうことなのでしょうか。
「多くのポリプロピレン製パーツには高級感の演出やインテリアのデザインの関係もあり、表面を塗装しています。この塗料がアルコールによって溶けたり剥がれてしまうことがあります。
市販の除菌シート程度の量では極端に塗装が剥がれてしまうことはないと思われますが、たとえばゴシゴシ擦ったり、消毒用エタノールなどで塗装部分を拭いてしまうと、文字が滲んだりかすれたりしてしまうんです」
塗料は原則的に脂が主成分なので、アルコールによって分解(溶解)されますが、それと同じ現象が内装でも起きるということです。
「でもポリプロピレンならまだマシです。もっと被害が大きくなるのが『合皮』の部分で、拭くだけでもけっこう大きなダメージを受けてしまいます。
合皮はナイロンやポリエステル生地の上にポリウレタン樹脂などでコーティングしたもので、薄くて丈夫なので多くの部分に用いられていますが、表面に艶を出しているコーティングがアルコールで化学反応を起こして取れてしまうんです。
そうなると、表面が白っぽくなったり、下地の色が出てしまうこともあります」(コーティング専門店スタッフ Iさん)
たとえ清掃に使用しなかったとしても、手の消毒用として備えておいたアルコールをうかりこぼしてしまったまま放置してしまうと、変色などを起こしてしまうそうです。
シートやダッシュボードに使用されている合皮でも、1度や2度拭いた程度ではすぐに変色することはないと思いますが、車内は太陽光で熱くなりやすく、合皮表面のコーティングも熱で柔らかくなっており、とくに夏の時期はいつも以上にダメージを負いやすくなっているといいます。
汚れ落としや除菌のためにアルコールでゴシゴシ拭いてしまうと、傷んだり劣化を早めてしまうことになるということです。
「とくに注意したいのは、メーターなどに使用されている透明なポリカーボネート樹脂製の部品で、アルコールで拭いてしまうと化学変化を起こして白くくすんでしまうことが多いんです。
内装用のクリーナーやお掃除シートは、用途や効果を認識したうえで使うのが良いでしょう」(コーティング専門店スタッフ Iさん)
ちなみにシートの中身のクッション部分は、ウレタンスポンジを使用していることがほとんど。こちらもアルコール耐性は強くないので、座席もアルコールを含む除菌シートなどで拭かないほうが良さそうです。
■車内の掃除に適した意外なものとは?
では、車内の清掃には何を使えば良いのでしょうか。家庭用のクリーナーもあまり良くないのでしょうか。
「掃除機などで車内のホコリやゴミなどを取り除いたあとは、精製水で湿らせたマイクロファイバーで車内を拭き上げるのが良いと思います。これだけでもかなりの汚れを取り除けます」(コーティング専門店スタッフ Iさん)
内装の掃除には精製水とマイクロファイバークロスが適している
「精製水」とは、蒸留やろ過などの工程を経て水道水などに含まれる塩素系の消毒剤やミネラルなどの不純物を取り除いた水のこと。不純物をできる限り取り除いた精製水を使うメリットとは、どのようなところにあるのでしょうか。
「一番のメリットは汚れを逆戻りさせないことです。通常の水道水だと、拭いた箇所に水道水の不純物を逆に付着させてしまうのですが、精製水なら水分に汚れを取り込み、マイクロファイバーで拭き取ることができます。
精製水と勘違いしがちなのが、ペットボトルなどの『ミネラルウォーター』ですが、これは車内清掃にお勧めできません。
カルシウムやマグネシウムなどミネラルが含まれているので、長期間使用しているとミネラルが機械のなかで残留物として残り、故障の原因にもなってしまうんです」(コーティング専門店スタッフ Iさん)
精製水+マイクロファイバーの組み合わせならどんなシート生地でも汚れがスッキリ取り除けるそうです。
とくに合皮や人工皮革などが多用されているダッシュボードやドアの内張には、家庭用クリーナーを使用するより良いのだとか。
「ちなみに窓の内側を拭くときも精製水がお勧めです。油分を含んだクリーナーを使用して油膜を無駄につけるより、何も含まれていない精製水と、しっかり水分を拭き取れるマイクロファイバーのほうがクリアな視界を確保できます」(コーティング専門店スタッフ Iさん)
※ ※ ※
昨今は手指のアルコール消毒が習慣になっていますが、クルマの内装掃除にはアルコールや油分を含んだクリーナーを使わずに、不純物がない精製水と拭き取り用のマイクロファイバーで清掃するのが良いでしょう。
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