「違反切符切られる」以外のパターンも? 取締りの「指導警告」とはいったい何? 元警察官が明かす“区別の基準”とは
くるまのニュース / 2022年9月6日 11時10分
警察官が交通取り締まりをおこなう光景は度々見かけることがありますが、なかには交通切符を切られたケースと指導警告のみで済む場合があります。これにはどういった違いがあるのでしょうか。
■「違反切符」と「指導警告」ふたつの違いは?
街中で警察官が交通取り締まりをしている光景を見かけることがあります。
警察官にクルマの停止を求められて、ドキッとした経験をした人もいるかもしれません。
停止した後、交通切符を切られたという場合と、指導警告で済んだ場合という異なるケースがたびたび聞かれます。
ではこのふたつの状況にはどういった違いがあるのでしょうか。取り締まりの経験を持つ元警察官に詳しく話を聞きました。
今回は交番勤務6年、生活安全部門で2年携わってきた経験を持つ元警察官のBさんが取り締まりでの違いについて、以下のように教えてくれました。
交通違反に関して警察内部では「取り締まり基準」が定められています。
これにより、交通取り締まりの結果に差が出るのは、この基準を満たす交通違反については切符処理、基準に満たない交通違反については指導警告することになっています。
そもそも警察が交通取り締まりをおこなうのは、道路交通法第1条で「この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」と述べられている通り、悪質な違反や危険性の高い違反を取り締まることで、交通事故などの発生を抑えるためだといえます。
悪質な違反や危険性の高い違反とは、交通事故につながる無免許運転や飲酒運転、著しい速度違反、信号無視、横断歩行者妨害、一時停止違反などが該当します。
仮に、ドライバーが道路の制限速度を時速1kmオーバーしたとしましょう。
厳密には交通違反となってしまうのですが、速度超過が時速1km程度であれば、ただちに交通に危険を及ぼすとは考えにくく、取り締まり基準を満たさないため、切符を切るには至らないものと判断されます。
このように、切符を切るには至らない違反については指導警告となる可能性が高いのです。
一時停止違反についても、停止線で止まらずにゆっくりじわじわと進むクルマを見かけることがあります。
一時停止とは、完全にクルマの車輪が停止することを意味するので、ゆっくり進んだとしても交通違反です。
しかし、こちらについても「時速○km程度のスピードで停止線を通過したクルマについては切符を切る」というように、取り締まり基準に従って取り締まりをおこなうため、その結果に差が出てくるのです。
一時停止違反は、ドライバーが思っているよりも停止できていないケースが散見されるので、しっかり止まるという意識を持って運転すると良いでしょう。
また、警察官が取り締まりをおこなう際には「警察官の現認」、つまり違反を確実に見ていることが重要です。
例えば、一時停止があることを見落として速度を落とさずに停止線を通過してしまったとします。
近くに警察官がいてその場面を見られていたとしても、警察官の位置から停止線が見えないような場合は切符を切ることができません。
なぜならば一時停止について、車両等は一時停止の道路標識がある交差点では、その交差点の停止線の直前で一時停止しなければならないと道路交通法第43条にて定められており、停止線で止まったかどうかが違反の判断基準になるからです。
このような場合には、警察官に呼び止められたとしても切符処理ではなく、指導警告となる可能性があるのです。
ここで気になるのは、警察の取り締まり基準が公表されているかどうかということです。
結論から言うと、取り締まり基準については公表されていません。
過去には、埼玉県や奈良県などでこの取り締まり基準の開示請求がおこなわれていますが、いずれも不開示という結果になっています。
取り締まり基準が公表されない理由としては、公表してしまうと「基準の範囲内なら違法ではない」という誤った認識や、「警察が違反を容認している」との誤解を招くおそれがあり、結果として交通違反の助長につながる可能性がある点があげられます。
※ ※ ※
警察の取り締まりには基準があり、そのため切符を切られる場合と指導警告で済む場合など処理に差が出ることが分かりました。
取り締まりの基準は公表されていませんので、あくまで参考程度ととらえ、交通違反をしないよう安全運転を心がけましょう。
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