「家族の相棒」が超進化! トヨタの新型ミニバン「シエンタ」売れない理由が見つからない!?【試乗記】
くるまのニュース / 2022年9月15日 18時10分
トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」がフルモデルチェンジし、3代目となる新型が発売されました。内外装のデザインや使い勝手、走行性能、安全装備など、全方位で進化した新型シエンタにさっそく試乗しました。
■3代目シエンタは愛嬌のあるデザインに
トヨタの最小3列シートミニバン「シエンタ」は初代モデルが2003年に登場。愛嬌のある丸いヘッドランプが特徴でしたが2010年にその座を「パッソセッテ」に譲って生産終了と思いきや、パッソセッテの売れ行き不調により2011年に復活するという珍しい歴史を持った一台です。
2代目は2015年に登場。スポーティなデザインに加えてCMにサッカー選手(J・ロドリゲス)を起用するなど、スポーティでアクティブなキャラクターが特徴でした。
そして2022年、3代目となる新型が登場。歴代モデルの特徴である「5ナンバーサイズ」、「3列シート」はそのままに、トヨタのクルマづくりの構造改革「TNGA」をフル活用して全面刷新。シンプルながらも愛着が湧くようなクルマに仕上がっています。
エクステリアはスポーティでスタイリッシュさをアピールしていた先代に対して、ボクシーだけど優しさを感じる「シカクマル」をモチーフにしたデザインです。
それだけだとビジネスライクになってしまいますが、前後サイドのプロテクションモールや愛嬌のあるフロントマスクなどにより、ツール感を上手く演出しています。
ネット界隈ではフランスの某車に似ているという意見もありますが、筆者(山本シンヤ)は初代「ヴィッツ」の派生モデルのひとつ「ファンカーゴ」のイメージを現代流に解釈したデザインに感じました。
インテリアもエクステリア同様に「シカクマル」がモチーフ。デザイン優先だった先代と真逆で、シンプルかつ機能的な空間に仕上がっています。
ソフトパットではなくファブリック巻きを採用したインパネや、ソファーのようなざっくりとした風合いの生地を採用したシートなど、豪華さよりリビングのような居心地の良さを重視したコーディネイトに加えて、「これでもか!」というくらいの充実した収納スペースは嬉しいポイントです。
ただ、気になるところもいくつかあり、1列目シートは、高い位置に設定されたドアのプルハンドルが意外と使い勝手が悪いこと(咄嗟のときにパワーウィンドウ部に手がいってしまう)やインパネ右下に追いやられた電動スライドドアスイッチ。
2列目シートは、運転席背面のみに設置されたUSB電源付シートバックスマホポケット(助手席には未装着)や、子供は手が届きにくい、スライドドア下部に置かれたボトルホルダー(3名乗車だけど2名分しかない)、スライドドアの関係でドアにアームレストが未装着(体が保持しにくい)などなど。
開発陣は「用品をたくさん揃えたのでうまく活用してほしい」と語っていますが、家族が「おっ、いいね!」と思うような痒いところに手が届くようなプラスαが欲しいと感じました。
ボディサイズは全長、ホイールベースともに先代から変更されていせんが、3列シート7人乗りはもっとも活用される2列目シートがシートスライド量のアップ(+80mm)を実現しており、足元スペースは大人でも余裕たっぷり。
加えて運転席より着座位置を高めたシアターレイアウト、さらには大きいグラスエリアなどにより開放感は高いです。
3列目の絶対的なスペースは先代と大きく変わりませんが、プラットフォーム変更で足を入れるスペースがしっかりと確保され、大人でも短時間の移動であれば実用に足りると思います。
新型シエンタでは、先代で追加された2列シート5人乗り仕様も用意されました。シートスライド機構はありませんが、2列目シートバックの最適化により、シートを畳むと超フラットな空間が生まれます。
実際に寝てみましたが、身長170cmの筆者は余裕。180cmから190cmの大人でも体を曲げることなく寝ることが可能です。
欲をいえば、取り外した2列目シートのヘッドレストが枕になるような用品があったりすると完璧ではないでしょうか。
全高は先代+20mmとなっていますが、これには大きな理由があります。子供が立てる室内高の実現に加えて、通学・通勤用自転車の定番であるブリヂストン・アルベルト(27インチ)を倒さず収納するために必要な数値だったそう。この辺りも「家族の相棒」として大事な性能のひとつといえるでしょう。
■静かでスムーズ! 誰でも運転しやすい!
新型シエンタのパワートレインは、ガソリン車が1.5リッター直列3気筒NA+ダイレクトCVT、ハイブリッドは同エンジン+2モーター(THS II)とヤリスと同じですが、車両重量アップに合わせて制御やギア比は最適化されています。
ガソリン車は3000rpm以上回してしまうとノイジーですが、1.3トンのボディを軽々と走らせる実力を備えています。自然吸気エンジンながらも実用トルクがダイナミックフォースエンジンの特性とダイレクトCVTの巧みな制御(ラバーバンドフィールが最小限)により、一般道ではそこまで回すことなく交通の流れをリードすることは可能です。
トヨタ新型「シエンタ」
一方のハイブリッド車は余裕すら感じるレベル。メーターに表示されるハイブリッドシステムインジケーターは「ECO」の領域を超えることなく交通の流れをリードできるパフォーマンスを備えています。
この辺りは唸るだけで進まない先代のハイブリッドシステムと比べると雲泥の差といえるでしょう。エンジン回転もガソリン車より抑えられているので、静粛性もより高いレベルにあります。
燃費は一般道~首都高を大人3人乗車+荷物を搭載してそれなりに元気に走らせた状態で、ガソリンは15km~16km/L、ハイブリッドは23km~24km/Lを記録。前面投影面積が大きい上に車両重量1.3トン越えの3列ミニバンとしては十分すぎる値です。
もう少し燃費を意識して走れば、高速道路であればモード燃費越えは余裕でしょう。
フットワークはどうでしょうか。
プラットフォームは「ヤリス」と同じ「GA-B」ですが、リアセクションとリアサス(トーションビーム式)はシエンタ専用設計となっています。
最大の特徴は車体に高減衰タイプの構造用接着剤&マスチックシーラー(ルーフに採用)の採用による“しなやか”ボディで、振動低減と剛性バランスが実現されています。ちなみにこれらのアイテムは価格アップがほぼゼロ……という嬉しいアイテムだといいます。
ステア系はハードの刷新+第3世代EPS制御採用により、女性でも扱いやすい軽い操舵力と操作に対する正確性や直結感を両立。重い操舵力なのにタイヤが宙に浮いた感覚の先代のステアフィールとは雲泥の差です。
ハンドリングはシエンタのキャラクターから決して機敏な動きはありませんが、操作に対して忠実に反応してくれます。
ロール量は先代とそれほど変わりませんが決定的な違いはコーナリング時の姿勢です。
先代はフロント2輪で強引に曲がろうとして結果的に思い通りに曲がらなかったのに対して、新型は4輪を上手に使いながら自然に素直に曲がってくれます。連続性あるクルマの動きなので過度な動きもないのでドキッとするような不安になるような挙動変化もありません。
その結果、スポーティな味付けではないものの基本素性を鍛えたことで、誰でも気負いなく高性能を実感できる走りといえるでしょう。
首都高速の左右にコーナーが連続するようなところで走らせると、3列シートのミニバンとは思えない軽快な走りで、ヤリスの仲間であることを実感します。
これに加えて、5ナンバーサイズの扱いやすいボディと最小回転半径5.0mなども「運転のしやすさ」に大きく寄与しているはずです。
乗り心地は凹凸乗り越え時の絶対的な入力の少なさに加えて、抑え込むのではなく逃がすようなショックの吸収の仕方による、優しいけど決してフワフワしていない快適性を実現しています。
車両重量や前後の重量バランスの違いからわずかに印象は異なり、ガソリン車はスッキリした足の動き、ハイブリッド車はシットリが高い足の動き、そしてハイブリッド車のE-Four(4WD)はストローク感の高さが印象的でした。
運転支援デバイスはコンパクトクラス初採用となる第3世代となる最新のトヨタセーフティセンスです。
検知範囲が拡張された「プリクラッシュセーフティ」に加えて、リスクを先読みして運転操作をサポートする「プロアクティブドライビングアシスト」は先に搭載されているレクサス「NX」やトヨタ「ノア/ヴォクシー」よりも制御は滑らかに感じました。
今やデフォルトとなりつつある全車速追従機能付きクルーズコントロールも用意されていますが、注意してほしいのは電子シフト採用の「ハイブリッドZ」のみ「停止保持機能有り」、メカシフトの他グレードは「停止保持機能無し」であることです。
この辺りは冗長制御のためのコストの問題が大きいですが、市場の要望が多ければ採用グレードは増えるでしょう。
※ ※ ※
見た目は「カジュアル」、走りは「骨太」と、開発コンセプトである「家族の相棒」にピッタリな一台で、正直いって新型シエンタが売れない理由は見つかりません。
価格は195万円から310万8000円と先代よりもアップしていますが、大幅レベルアップの基本性能と最新&便利な装備の充実を考えると、むしろ「コスパ」は高いと思っています。
残価設定ローンの残価率も高いので、毎月の支払いは想像以上に抑えられるはずです。
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