路線バスは「シートベルト着用ナシ」で良いのはなぜ? 安全性は大丈夫? 乗用車は「全席義務」だが進まぬ「後席着用」の実態とは
くるまのニュース / 2022年11月20日 7時10分
基本的に走行中の車内ではシートベルトの着用が義務付けられています。しかしその一方で街中を走る路線バスでシートベルトを着用している様子を見かけることはありません。なぜ路線バスはシートベルトを着用しないのでしょうか。
■路線バスではシートベルトをしなくても良いの? その理由とは
基本的にクルマに乗るときは座る席にかかわらずシートベルトの着用が義務付けられています。
しかし、路線バスではシートベルトの設置や着用が義務付けられていません。安全性が気になるところですが、なぜ路線バスではシートベルトを着用しなくても良いのでしょうか。
思わぬ交通事故にあったとき、命綱になるのがシートベルトです。道路運送車両の保安基準で定められているため、基本的にクルマに乗るときはシートベルトの着用が必須となっています。
2008年からは高速道路だけでなく一般道路でも後部座席を含む全席でシートベルトの着用を義務付けるようになり、病気といったやむを得ない理由を除いてシートベルトの着用は必須となったのです。
6歳未満の子どもや6歳以上であっても体格の事情により、シートベルトを適切に着用できない子どもにはチャイルドシートを着用します。
シートベルトは、交通事故にあった場合の被害を大幅に軽減させ、正しい姿勢を保つことにより、疲労を軽減させるといった効果があります。
なお高速道路で後部座席にいる人がシートベルトを着用していなかった場合、運転者に対して行政処分の基礎点数1点となりますが、後部座席のシートベルト着用率に関する課題もあります。
2021年に警察庁とJAFが合同でおこなったシートベルト着用状況調査結果によると、シートベルトの着用率は運転手および助手席は96%を超えていますが、後部座席は一般道路で42.9%、高速道路などで75.7%に留まっています。
後部座席に座っていてもシートベルトを着用する意識を高めていく必要があり、もし交通事故にあっても車内で全身を強打したり車外に放り出される恐れを減少させたりするシートベルトは重要なものです。
シートベルトを着用していなかったため、被害が拡大した場合は、被害者の過失になる場合があります。被害者であっても、損害賠償にて十分な補償が受けられなくなる可能性もあります。
ただし、これだけ重要だといわれるシートベルトですが、路線バスではシートベルトを着用しません。その理由について、国土交通省の担当者は以下のように話します。
「厳密に定められた理由があるわけではないのですが、一般的な路線バスは高速道路を利用せず同じ区間を行き来します。そのため、速いスピードでの走行が想定されていないことが大きな理由のひとつです。
また、路線バスは人の乗り降りが激しく、立ち席も存在します。そのため、シートベルトの設置や着用を義務付けることによって、路線バスの利便性が損なわれる可能性があります。
こうした安全性と利便性を考えた折衷案といった形で、路線バスにはシートベルトを設置しなくても問題ないと考えられています」
※ ※ ※
前述の通り、シートベルト着用を義務づけることによって、人が乗り降りするたびにシートベルトを着用することによって、時間がかかるなどのデメリットが生じます。
そもそも、人が立って乗車することを許容していることからも、シートベルトの装着を義務づける意味や必要性がないといえます。
ちなみに、前出の担当者は「路線バスにシートベルトが設置されていないからといって、利用者から『危ないからシートベルトを設置してほしい』という声をいただいたことはありません」といいます。
■同じバスでも…高速バスや貸切バスはシートベルト着用必須?
路線バスでは、シートベルトがなくても安全性が保証されていることや、シートベルトを装着することによって利便性を損なってしまうため、設置や装着義務はありません。
しかし、気を付けたいのが高速バスや貸切バスの乗車についてです。高速道路を利用することも多い高速バスや貸切バスではシートベルトが必ず設置されており、着用が促されています。
過去に起きた貸切バスの事故の状況を考慮した結果、安全な運行をするためにはシートベルトが必要と考えられたのです。
高速バスや貸切バスに乗車したときは、シートベルトの着用を促す車内アナウンスが流れます。
2016年には道路運送車両の保安基準等の改正が発表され、これまでシートベルトの設置義務から除外されていた補助席にもシートベルトの設置が義務化されました。
路線バスには特有の事情はあるが…乗用車では必ず全席でシートベルトを着用しなければならない
シートベルトは思わぬ交通事故にあったとき、自分の身体を守ってくれる命綱です。
大きなけがをするリスクを最小限にしてくれるため、路線バス以外のクルマに乗るときは必ず着用が必要です。
違反した場合、運転者やバス運営会社などが責任をとる必要がありますが、シートベルトを着用しないで交通事故にあって、被害が大きくなった場合は被害者の過失になります。
シートベルトを着用していなかったことを後悔することのないよう、たとえ後部座席であっても短時間のドライブであっても、シートベルトはきちんと着用しましょう。
※ ※ ※
ちなみに、警察庁が公表している「後部座席シートベルト着用・非着用別致死率」によると、後部座席シートベルト非着用の致死率は、高速道路で着用時の約19.4倍、一般道路で約3.5倍と、高くなっています。
このことからも、いかにシートベルトが事故における命綱の役割を果たしているかがわかります。
どんな状況であっても、どこに着席していたとしても、自分や大切なひとの安全を守るためにも、シートベルトは必ず着用しましょう。
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