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欧州が「2035年EV義務化」確定へ ハイブリッド天国の日本は「ガラパゴス」!? 国産各社はどうなるのか

くるまのニュース / 2022年11月4日 13時10分

欧州連合(EU)と欧州議会は現地時間の2022年10月27日に「2035年に欧州域内で販売される乗用車と小型商用車の100%をZEV(ゼロエミッションヴィークル)にする」法案について合意しました。ハイブリッド主流の日本メーカーはどう戦うべきなのでしょうか。

■欧州がついに「決断」!? EV「義務化」に至った背景とは

 ついに欧州がEV(電気自動車)義務化に動き出しました。この大波は、日本にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
 
 HV(ハイブリッド車)が主流を占める日本勢の「ガラパゴス化」リスクはどの程度なのかについて検証します。

 欧州連合(EU)と欧州議会は現地時間の2022年10月27日に、「2035年に欧州域内で販売される乗用車と小型商用車の100%をZEV(ゼロエミッションヴィークル)にする」法案について合意しました。

 これによって、EUの執務機関である欧州委員会が2021年7月に提案した環境対策パッケージ「フィット・フォー・55」を施行することになります。

 欧州では、環境問題に対して総括的に取り組む「欧州グリーンディール政策」を掲げていて、フィット・フォー・55はその一環です。

 具体的には、乗用車・小型商用車のCO2(二酸化炭素)排出量を2030年に2021年比で55%削減し、さらに2035年に同100%削減を義務付けるものです。

 つまり、事実上2035年に欧州域内で販売できる新車は、EV(電気自動車)またはFCV(燃料電池車)となり、HV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、そしてクリーンディーゼル車なども含め、内燃機関を持つ自動車の販売ができなくなる、という解釈です。

 これまで、国や大きな地域でEV普及を義務化してきたのは、1990年に米カリフォルニア州が施行したZEV法(ゼロエミッションヴィークル規制法)を皮切りに、中国政府がカリフォルニア州政府と協議しながら2010年代後半から開始したNEV(新エネルギー車)政策、そして2021年8月の米バイデン大統領による「2035年に新車50%以上を(プラグインハイブリッド車を含む)ZEV化」という大統領令などがあります。

 そのほか、欧州各国でも国や市などで独自の環境車政策を推進しているところです。

 こうした世界での状況を俯瞰するなかでも、今回決まった欧州2035年EV義務化のインパクトは極めて大きく、その影響が世界の国や地域に影響を与えることは間違いないでしょう。

■メルセデス・ベンツが早期の「100%ZEV化」を宣言した意味

 日本では、2020年12月に経済産業省が関係各省庁と連携して策定した「2050年カーボンニュートラルを伴うグリーン成長戦略」を打ち出しました。

 この中で、自動車・蓄電池産業については「乗用車は2035年までに新車販売で電動車100%」を掲げていますが、「ZEV100%」とまでは宣言していません。

 自動車メーカー各社の動きはどうなっているでしょうか。

メルセデス・ベンツは2022年9月、100%BEV(電気自動車)の新型セダン「EQE」の受注受付を国内で開始しているメルセデス・ベンツは2022年9月、100%BEV(電気自動車)の新型セダン「EQE」の受注受付を国内で開始している

 最も早く事業の転換を図っているのは、やはり欧州メーカーです。

 なかでも、ドイツのメルセデス・ベンツは2021年7月、欧州委員会がフィット・フォー・55を提案した少し後に、「市場の環境が整えば、2029年までにグローバルで販売する新車100%をEV化する」という事業方針を打ち出しています。

 じつはこれまでも、英国のジャガーやスウェーデンのボルボがEV専業化を発表していましたが、長年に渡り自動車産業の「大黒柱」であるメルセデス・ベンツが、「市場の環境が整えば」としながらも大きな決断を宣言したことで、業界全体に与える影響は計り知れないものがあります。

 こうした欧州での本格的EVシフトを受けて、日本では2021年12月にトヨタが「2030年までに30車種のEVを登場させ、2030年までに(トヨタ全体の約1/3に相当する)350万台のEVを製造・販売する」という発表をおこなう流れとなりました。

 それまでトヨタは「2030年までにEVとFCVを合わせて200万台」といった方向性を示していて、それが一気に1.5倍となったのは、欧州の2035年EV義務化の影響が明確に現れたといえるでしょう。

 またホンダは「2040年までにグローバルで新車100%をZEV化(EVまたはFEV)」という方針を定めており、日本では唯一、完全なるEVシフトを明言しているメーカーです。

 そのほかトヨタを含めて、日産、マツダ、スズキ、スバル、ダイハツの各社における次世代環境車に向けた基本方針は「国や地域によって、社会情勢やインフラに違いがあるため、当面はさまざまなパワートレインを並存させて対応する」というものになっています。

■ガラパゴスにあらず!? 日本のスタンスは「環境対策はひとつじゃない」

 これを受ける形で、日本の自動車メーカーと二輪車メーカーでつくる業界団体の日本自動車工業会では、国の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に対して、「カーボンニュートラルに向けた取り組みはさまざまある」という姿勢を貫いています。

 具体的には、欧州のように完全EVシフトではなく、HVやPHEVに加えて、内燃機関の燃焼効率をさらに上げること、バイオディーゼル燃料の活用、そして既存の内燃機関を改良することで水素を燃焼する水素エンジンの実現など、日本が持つ多様な技術を総動員するという考え方です。

日本はコンパクトカークラスに至るまで広くHV(ハイブリッド車)が普及しており、実は世界有数の「電動化先進国」でもある[写真はトヨタの新型コンパクトミニバン「シエンタ」]日本はコンパクトカークラスに至るまで広くHV(ハイブリッド車)が普及しており、実は世界有数の「電動化先進国」でもある[写真はトヨタの新型コンパクトミニバン「シエンタ」]

 日本の次世代環境車に向けた研究開発の現場を、一般向けにも広く知ってもらうため、国内モータースポーツの「スーパー耐久シリーズ」に次世代車開発に特化したST-Qクラスを新設して、自動車メーカー各社が参戦しています。

 今回の欧州での完全EVシフト義務化などの動きを踏まえつつ、こうした日本メーカー各社の次世代車戦略に対して、「日本の考え方は、正攻法過ぎないのか」とか「このままでは日本は、ほかの国や地域から取り残され、ガラパゴス化してしまうのではないか」という声が、自動車産業や一般ユーザーのみならず、日本国内外の様々なところから聞こえてくるのも事実です。

 筆者の私見としては、日本が国としてEVシフトに対してどのような政策を打ち出そうとも、日本メーカー各社は、それぞれが事業の規模や、得意とする技術領域と仕向け地(販売する国や地域)に違いがあるため、グローバルでの事業においてはEVシフトや電動化に対するスタンスはかなり違うのだと捉えています。

 さらに踏み込んでいえば、モデル数が少ない(=パワートレインの種類が少ない)メーカーほど、思い切ったEVシフトを仕掛けることが可能である反面、これまで築いてきたブランドイメージをどう転換するのかが、メーカー(ブランド)存続のカギになるでしょう。

 いずれにしても、今回の欧州連合・欧州議会による決定を含めて、直近でのグローバルでのEVシフトは「ユーザー中心」または「技術革新中心」という観点より、株式市場や資源関連市場の動きと連動するかのような環境問題としての「企業の経済活動を念頭に置いた政治判断」が優先している印象が強くあります。

 見方を変えると、政治判断であるからこそ、今度も何度かの方針転換が再び起こる可能性があり、そうした動きを正確に予想することは難しいといえるのではないでしょうか。

 日本のユーザーとしては、EVを含めてこれからどのようなパワートレインを持つクルマを選ぶかは、ユーザー自身が世の中の動きをしっかり見据えたうえで、自己責任という意識を強く持って向き合う時代になるのだと思います。

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