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重要なのに知られてない「交通研」って一体なに? 新型車発売に欠かせない、日本の車社会を支える存在とは?

くるまのニュース / 2022年11月28日 18時10分

日本のクルマ社会を支える存在として「交通研」という機関があるのですが、一般的にはあまり知られていません。クルマに関して重要な役割を担う交通研とは、一体どのようなものなのでしょうか。

■重要なのにあまり知られていない「交通研」

 一般ドライバーはもとより、販売店の関係者、自動車メディア関係者、そして自動車メーカーや自動車部品メーカーの関係者でも「交通研」のことを知っている人は少ない印象があります。

 ただし、交通研は日本の自動車産業にとって大きな存在であり、ユーザーにとっても実は深い関係があるのです。

 交通研の正式名称は、「交通安全環境研究所」といいます。

 1950年に旧運輸省(現在の国土交通省)の研究所として発足。2016年4月1日には旧自動車検査独立行政法人と統合され、独立行政法人 自動車技術総合機構の交通安全環境研究所となりました。

 自動車業界や官公庁関係者は、以前から「交通研」という略称で呼ぶことが多いのが実状です。

 交通研の具体的な業務は、大きく3つあります。

 1つ目は、自動車に関する総合的な取り組みで、安全・環境に関わる基準案の作成、型式指定による基準不適合車の未然防止、リコール制度による基準不適合車の排除などです。

 2つ目は、国際的な連携確保の取り組みです。国際標準化の推進や自動車メーカーなどの海外展開を支援します。

 3つ目は、地域交通などに関する取り組みです。自動車だけではなく、鉄道などの安全・安定輸送を確保や、LRT(低床型次世代路面電車)など新しいシステムの導入促進により地域交通の活性化を図ります。

 こうしたなかで、自動車ユーザーが注目するべきは、型式(かたしき)指定と燃費計測だと思います。

 自動車には型式指定制度があり、車検証や自動車メーカーのウェブサイトに掲載されている諸元表には「型式」という項目があります。

 例えば、日産新型「フェアレディZ」の型式は「3BA-RZ34」です。クルマ好きは、そのモデルがどの世代なのかを示すときに型式で呼ぶことが多くありますし、自動車関連メディでも「R35(日産 GT-R)」とか「FD(マツダ RX-7)」といった表現を使います。

 国土交通省によると、自動車の型式指定制度とは「自動車製作者等が新型の自動車等の生産又は販売を行う場合に、予め国土交通省大臣に申請又は届け出を行い、保安基準への適合等について審査を受ける制度である」と説明しています。

 この審査とは、基準適合性審査として、ブレーキ試験や排出ガス試験、灯火器試験などがあり、そのほかには品質管理 均一性の審査もあります。

 こうした型式指定制度に基づいた認証審査をおこなう、日本で唯一の機関が交通研なのです。いうなれば、自動車メーカーにとって交通研は新車販売へ向けた関所のような存在だといえます。

■燃費の基準も交通研が深く関わっている

 こうした認証審査のなかで、ユーザーとしては燃費測定についても気になるところでしょう。

 交通研ではシャーシダイナモ装置を使い、車両を移動させずに駆動力をかけて燃費を計測しますが、さまざまな試験のすべてをこなすことは施設の設備体制や人員体制が限定的であることから、一部の試験は自動車メーカーがおこない、そのデータを交通研に提出する形をとっています。

実燃費で40km/Lを超える低燃費をたたき出すトヨタ「ヤリス ハイブリッド」実燃費で40km/Lを超える低燃費をたたき出すトヨタ「ヤリス ハイブリッド」

 そうしたなかで、例えば2016年に発覚した三菱自動車の軽自動車に関する燃費不正問題の際、メーカー側がおこなって交通研に提出したデータが改ざんされていたことが社会問題となりました。

 また、直近では日野自動車が数十年間にわたり、トラックやバスの多様な車種で燃費測定などについて不正があったことが大きく報じられたばかりです。

 国としても、こうした不正防止に向けて交通研の業務のあり方も含めた対策を進めているところです。

 燃費でいえば、以前は「10・15モード」また「JC08モード」、そして現在は「WLTCモード」と試験測定する際の走行速度や走行時間の規定が変わってきました。

 こうした燃費の基準で、基本的な手法案の策定や、国連などの場での国際連携についても、交通研が果たす役割が極めて大きいといえます。

 また、自動運転技術や高度運転支援システム(ADAS)に関しても、国連・欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の各種会議体で、日本からは国土交通省と交通研の担当者が出席し、議長や副議長など重要なポジションを占め、世界に向けて日本の考え方を主張しているのです。

 一般ドライバーにとって馴染みの薄い交通研ですが、日本のクルマ社会を支える縁の下の力持ちだといえるでしょう。

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