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見えない敵の正体を暴く!? 見た目はただの装甲車? 実は凄い「化学防護車」の特徴とは

くるまのニュース / 2022年12月2日 6時10分

さまざまな車両を所有する自衛隊ですが、装甲車のひとつに「化学防護車」があります。どのような特徴を持つ装甲車なのでしょうか。

■「見えない敵の正体を暴く。化学防護車」

 自衛隊には、さまざまな車両が存在します。そうしたなかで装甲車のひとつに「化学防護車」があります。
 
 どのような特徴を持つ装甲車なのでしょうか。

「何~サリンだって?」。ニュースを聞いて変な声が出た日の事を今でも覚えています。

1995(平成7)年3月20日の地下鉄サリン事件です。サリンとは第2次世界大戦中に開発されたれっきとした化学兵器で平時の日本国内でしかも東京の朝の通勤時間帯の地下鉄で使われるとはとても想像出来なかったからです。

 事件直後出動した東京消防庁の化学機動中隊の現場調査では撒かれた毒物が何なのか分からず、正体が判明するまで暫く時間が掛かりました。

 警視庁科学捜査研究所の鑑定で有毒神経ガス「サリン」だと判明したのです。

 化学兵器であり殺傷能力は非常に高く、吸い込むだけでなく、ガスが皮膚に触れるだけでも体内に吸収されるのでガスマスクだけでは防げず気密性の高い防護服を着用する必要があるという厄介な代物です。

 陸上自衛隊では事件発生29分後に何らかの毒物が使用されたとの情報から、自衛隊中央病院などの関係部署に出動待機命令が発令され、化学科職種である第1、第12師団の化学防護小隊、第101化学防護隊、化学学校から部隊が派遣されました。

 毒物の正体が化学兵器「サリン」だと分かると対処は自衛隊の専門部隊である化学科の出番となり事実上の実戦初出動となりました。

 このなかに「化学防護車」という装甲車が含まれています。自衛隊内でもめったに見かけない化学戦用特殊車両です。

 化学防護車は核兵器使用による放射能や化学兵器による汚染状況がわからない地域に進出して汚染物質の特定や濃度、気象状況を偵察するのが役割です。「見えない敵=化学兵器の正体」を暴くのです。

 自衛隊には化学兵器のよる攻撃に備えて防毒マスクや防護服などの防護装備が用意されています。

 しかし「サリン」にも対応できるような防護服は着るだけでも大変で動きづらく体力を消耗し飲食も自由になりません。

 部隊にはとても負担で戦闘力は大幅に低下します。直接人を傷つけたりしなくても、化学兵器が使われたらしいとの情報があるだけで行動は大きく制限されてしまいます。心理的にも士気は下がります。これが見えない敵の効果です。

 化学科の役割は天気予報にも似ているといわれます。

 天気予報の精度を上げるのに大変な努力が払われています。雨になりそうだと予報されれば傘を用意しますが荷物になるし持ち歩きたくはないものです。

 傘は役に立ちますがストレスにもなります。傘を持っていくか、外出方法を変えるか、外出を止めるか。

 天気予報をどこまで信じるかという精度は行動に直接影響を及ぼします。

 部隊が敵の化学兵器の情報を受けたとき、嵩張る防護装備を持っていくのか、その地域を避けるのか、作戦を中止するのか。

 作戦立案の重要な判断材料になります。傘と防護装備では重みはまるで違いますが、ストレスの軽重は行動に影響し、どこまで信頼できるかという精度が必要という事情も似ています。

 少しでも精度を上げるため「化学防護車」は積極的に汚染地域に乗り込み、正確な状況を確認するいわば化学天気予報の先行観測車です。

 大きな6輪車輪が特徴の「82式指揮通信車」をベースとして車体は機密性が高く空気浄化装置を備えます。

 内部には作業スペースがあって乗員2名に機器操作者2名が車内で汚染物質採取、分析、表示などの作業をおこないます。

 武装は自衛用に遠隔操作できる12.7mm機銃を1基備えるのみですが、ほかの装甲車に見られない独特の装備がいくつかあります。

 まずは後部のマニピュレーターです。

 TVカメラや防護ガラス越しに外を見ながら土壌サンプルを遠隔操作で採取し、化学物質測定用ガスサンプラーや放射能測定用の線量計で分析して物質を特定します。

 もっともこのマニピュレーターは扱い辛くて細かい作業が出来ず、故障も多くて現場では評判は必ずしも芳しくないようです。

 汚染が判明すればそれを示す黄色の三角形のマーカーを設置していく装置もあります。

 地磁気方位計、気象観測装置、周辺環境センサーを備え、気象状況から拡散状況を予報することもできます。

 1987(昭和62)年に採用され、2009(平成21)年まで毎年1~4両ずつ合計47両が調達されました。

 1999(平成11)年度以降に取得した車両からは周辺環境センサーの位置変更や緊急車両に認定されたことから赤色灯、サイレンを装着してマイナーチェンジした「化学防護車(B)」となっています。

 しかし「化学防護車」には生物兵器を探知する能力はないので、別にトラック型の生物偵察車がありましたが、2010年(平成22)年度からNBC(核、生物、化学)兵器の偵察能力を高めた、より大型の「動くラボラトリー」ともいえる8輪のNBC偵察車が配備されています。

 NBC兵器は見えないだけに疑心暗鬼を生じます。正体を暴くことの重要性は、一時生物(C)兵器かもしれないとも囁かれた新型コロナウイルス(COVID-19)影響下で暮らす我々が実感しているところです。

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