走行距離「10万キロ」超えた“クルマ”何が“ダメ”? 「過走行車」で注意したいポイントとは
くるまのニュース / 2023年1月1日 20時10分
クルマは機械である以上、いつかその寿命を迎えます。その寿命の目安であるとされる10年・10万kmを迎えたころ、クルマはどのような部分が故障するのでしょうか。
■10年10万km一体何が壊れる?
クルマは機械である以上、必ず寿命を迎えます。クルマの寿命はメンテナンスの仕方や車種などによって異なるものですが、国内では車歴10年、走行距離10万kmを一区切りと考える見方も多くあり、10万kmを超えたクルマは「過走行車」と言われることもあります。
それでは、10年10万kmを迎えるクルマはどういったところに気をつければいいのでしょうか。
日本車の品質向上や「故障してから修理」より「壊れる前に整備」の考えなどが浸透するなどし、メンテナンス不足からクルマに致命傷が及ぶことが減りました。
そんなことから、現在の平均車齢は11年を超えてなお長くなる傾向にあります。
現代のクルマであれば、新車から10年・10万km以内なら、エンジンオイルやタイヤなど消耗品を定期的に交換するなど適切なメンテナンスをしていれば、問題なく乗れることも多いです。
しかし、10年・10万kmを超える頃になってくると、痛んだり機能しなくなったりする重要な部品が徐々に出始めてきます。
単に部品を交換するだけで済むものから、故障が複合的で診断に時間や技術を要するものや故障を放置していると被害が拡大して整備費用がさらに増えてしまう部分、最悪の場合には二次災害や交通事故の恐れがある箇所まで、様々なことが起こると考えられます。
ユーザーの中には、クルマが動かなくなってしまうと仕事に支障が起こったり、気象状況次第では命の危険にかかわることもあります。
では具体的に、どのような部分が10年・10万kmで故障する傾向にあるのでしょうか。いくつか例を紹介します。
■スパークプラグ
スパークプラグは、エンジンの内部で空気とガソリンを混ぜた混合気に火をつける役目を担っています。
スパークプラグが摩耗すると、点火能力を発揮できなくなり、エンジンを始動できなくなったり、加速時にクルマが前後に揺さぶられるような、カーノック(ノッキング)という現象を発生するようになります。
スパークプラグは、かつて2万kmから3万km程度で摩耗したために、定期的に交換する必要がありました。
1982年以降、減りにくい白金プラグが順次採用され、自動車メーカーの指定交換時期は10万-20万kmに伸び、車検の際にも点検不要になっています。
埼玉県内で自動車整備業を営むMさんは、この件について以下のように付け加えました。
「自動車メーカーがスパークプラグの交換距離を20万kmにしていても、13万kmを超える頃になると点火能力を発揮できなくなってきます。特に寒くなり始める時期にエンジンの始動に失敗し、レッカー要請が来ることがあります。
当社で整備をしているお客さんには10万knごとの交換をお勧めしていますが、中古車を買って他社で整備をしているクルマの場合、必ずしも交換されていません。『安く車検を』とお客さんに言われると、無理に交換を勧められませんからそのままになってしまうのでしょうね」
スパークプラグの価格は高くても1本1500円程度なので、定期的に交換するに越したことはありません。
■ハブベアリング
ハブベアリングは、車軸とホイールの間に入るベアリングです。
車重を支え、路面からの衝撃を受け、コーナーでは横からの力を受ける、縁の下の力持ち的部品です。
ハブベアリングは小型化される一方で、クルマ自体の車重が増しているうえ、タイヤも太く高性能になり、エンジンがハイパワーになるなど、より厳しい環境にさらされるようになってきています。
ハブベアリングが寿命を迎えると、カーブや突起を乗り越えた際に、「ガタゴト」、「ゴーゴー」などと音が発生したり、摩擦で発熱したりします。
車検の際にもがたつきがないか点検しますが、症状が発生すると急激に劣化が進むようです。
一般の方が交換作業を行うことは難しいですが、整備士さんにとってはごく普通の作業です。
それよりも、走行安定性が損なわれたり発火事故を起こしたら大変です。クルマの定期点検を怠らず、お店から交換を勧められたら早めに交換すると良いでしょう。
■サスペンションのジョイント部
サスペンションは、コイルスプリングとショックアブソーバー、各種のアームやジョイントで構成されています。
アームやジョイントは、人間に例えると体の各部の関節に相当する部品。クルマの操縦性向上のために、アームやジョイントは正確に動くことが求められています。
大昔のクルマでは、道路事情が良くなかったためにサスペンションにある程度あいまいさを持たせて、摩耗する箇所を減らしていました。
しかし、現代の高性能車はアームの数を増やして正確な動作を目指した結果、間接に相当するジョイント部分が増えてきました。
さらに、車重の増加やタイヤの高性能化、コストダウンなどから、ジョイントの部分の摩耗が早期に起こる場合があるようです。
ジョイントが摩耗すると、ハブベアリング同様にカーブや突起を乗り越えた際に音が発生します。
走行距離が10万kmに近づくと、ジョイント摩耗の可能性が高まります。
定期点検を受けることはもちろんですが、整備への心構えと費用の準備が必要です。
■ラジエーターファン
販売開始から10年が経過したホンダ「N-ONE」
エンジンが発生する熱は、冷却水を循環させてラジエーターで冷やしています。
低速時など走行風が弱い時に備えて、ラジエーターには電動式のラジエーターファンが装着されています。
また、エアコンのスイッチをオンにしたときにもエアコンコンデンサという放熱器を冷やすために、水温にかかわらずラジエーターファンを作動させます。
近年では、気温や天候にかかわらずエアコンを常時使用する人が増えたため、ラジエーターファンの稼働時間も長くなりました。
ラジエーターファンは十分な耐久性をもつように設計されていますが、それでも作動時間が長くなると故障する可能性が高くなってきます。
すると、状況によってはエンジンの冷却水温度が上昇し過ぎて、最悪の場合にはオーバーヒートを起こしてしまいます。
水温計や高水温警告灯にドライバーが気づけばよいのですが、気づかずに運転を継続するとエンジンがオーバーヒートを起こしてしまい、状況によってはエンジン修理不能になってしまうことがあります。
すると、エンジン自体の交換が必要となり、費用が数十万円に到達、もちろん作業に要する時間も長くなります。
あらかじめラジエターファンを交換する必要はありませんが、10万kmを超えたクルマの場合には冷却水温に気をつけながら走行した方が良いでしょう。
余談ですが、10年10万kmは冷却水温を安定させるサーモスタットも寿命に近づく頃なので、なおさら水温に注意するに越したことはありません。
■ハイブリッドシステム冷却装置
街中には、すっかりハイブリッド車が増えました。
このハイブリッド車の高電圧装置はエンジン以上に高温に弱いために、専用の冷却装置を装着しています。
ハイブリッド関連装置は、車両走行可能状態では常時作動するために、冷却装置も作動時間が長くなっています。
冷却装置には、ウオーターポンプ、冷却水、冷却ファン、フィルターなどがあります。
ウオーターポンプと冷却ファンの点検は、定期点検の際に作動しているかどうか確認するのみ。なので、その故障はあるとき突然起こることが多くあります。
万一、これらの冷却装置が故障した場合でも、モーターの出力を抑制して故障が拡大することを防いでいます。
しかし、登坂路や高速道路でクルマの出力が抑制されてしまうと、周囲の車との速度差から危険な状態になることもあります。
この冷却部品もラジエーターファンと同様、故障前にあらかじめ交換する必要はありませんが、10年10万kmに近づく時期には、交換時期が迫っていることを考えておきましょう。
※ ※ ※
部品の寿命や重要性を考えて、すべての部品を故障前に交換することは、経済性の点でなかなか難しいこともあるでしょう。法定点検を必ず受け、整備士の方のアドバイスをよく聞きくことが大切です。
そして普段の使用中でも、これまで聞こえなかった音が聞こえたり、メーターや警告灯の状態に気を付けるようにしましょう。
おかしな点を感じたら、かかりつけの整備工場に相談されることをお勧めします。
そして、車齢に伴う出費の増加とクルマ全体の痛みなどを考えながら、そのクルマに何年間乗るのか、計画的に維持管理しつつ、大型部品の寿命が来る前に買い替えることが理想的です。
また、いざ故障した際の整備に伴う部品代や工賃は、クルマの高機能化により上昇する傾向にあります。
万一の際に備えて、少しずつ費用を積み立てるのも良いですが、手段の一つとして保険も挙げられるようになってきました。
大手損害保険会社では、故障したクルマのレッカー費用に加える形で、故障整備費用も補償する特約を設けるところが出てきました。
月々の少しづつ出費していくことで、安心を買うこともできるようになったといえるでしょう。
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