東京都の「軽自動車税に提言」から1年… 実は「自動車関連の税収」が足りていない? 賛否ある日本の税制問題のいま
くるまのニュース / 2022年12月9日 9時10分
東京都税制調査会(都税調)は、2022年度の報告書を2022年10月27日に公開されました。2021年度には「軽自動車税の増税」を提言したことで話題となったこの報告書ですが、2022年度はどのような内容が盛り込まれたのでしょうか。
■CO2排出量を課税基準に?将来的な走行距離課税の可能性も
2022年10月27日、東京都税制調査会(都税調)がとりまとめた2022年度の報告書が公開されました。
2021年度には、軽自動車税の増税を提言したことで話題となったこの報告書ですが、2022年度はどのような内容が盛り込まれたのでしょうか。
2000年に、当時の石原慎太郎都知事によって設立された都税調は、都議会議員や有識者によって構成された諮問機関です。
提言に法的拘束力はないものの、税制改革に与える影響は大きいといわれており、その動きには毎年注目が集まっています。
2021年度の報告書には、軽自動車の増税が提言されたことが話題となりましたが、2022年度の報告書にはそのことに直接触れた内容は盛り込まれていません。
一方、2022年度の報告書における自動車関連税制における提言の中心となっているのは「脱炭素化に向けた自動車関連税の在り方」についてです。
都税調は、自動車関連税制について「今後、電気自動車や燃料電池自動車等のシェアが高まっていくことが考えられるが、自動車税種別割の現行の税率は、排気量1000cc 以下の最低税率で課税されており、公平性等の観点から、課税の在り方を検討する必要がある」と前置きしています。
2035年までに、新車販売台数における電動化率100%を目指している日本ですが、東京都では走行時に排出ガスを一切出さない「ゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)」の割合を2030年までに5割まで引き上げ、2050年には東京都内を走るクルマのすべてをZEVにするという、より厳しい独自の方針を示しています。
そうしたなかで、排気量を基準とした従来の自動車税制では、電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCV)などのZEVは排気量がゼロであることから、最低税率での課税となっています。
それに加えて、シェアリングエコノミーが発達することが予想されているなかでは、クルマを所有することを前提とした従来の自動車税制を見直す必要があることも、都税調は指摘しています。
こうした現状に対して、都税調ではまず「環境損傷負担金的性格」が強まりつつある車体課税について、「CO2排出量の要素(基準)を取り入れるなど、積極的に環境税制として位置付けていくことが極めて重要」としています。
車体課税とは、自動車税や軽自動車税、自動車重量税など、クルマの取得や保有に対して課税される税金の総称です。
都税調では、すでにCO2排出量を課税基準としている欧州諸国と同様に、CO2排出量にしたがって税額が決定されるような自動車税制とすることを提言しています。
さらに、中長期的な方向性として、「例えば、課税標準を車体重量若しくは走行距離に、又は CO2排出量・重量・走行距離の組合せとする方法を検討する必要がある」としています。
車体重量を課税基準とすることは、将来的に新たな動力源を用いたクルマが登場した場合にも対応できることや、課税基準がわかりやすいといったメリットがあると、都税調は述べています。
走行距離課税についても、道路利用への受益や道路や環境への負荷を考えると、「望ましい公平な税制度である」としているものの、地方部のユーザーへの負担が大きくなりやすいことや、走行距離の測定にかかわる個人情報保護の問題など、多くの問題があるとしています。
■税収が足りない?東京都の実態とは
こうした都税調の提言に対して、多くのユーザーは批判的な意見を示すかもしれません。
これまで、さまざまな税制優遇施策によってBEVやFCVの普及を促進してきたにもかかわらず、車体重量や走行距離によって課税されるのであれば、結局のところ「とりやすいところからとる」という姿勢と見られるかもしれません。
しかし、都税調によれば、道路の新設維持補修などに関わる自動車関連の歳出は、自動車関連税による税収を大きく上回っており、少子高齢化による人口減少が予測されるなかで、既存の税制では将来の税収はさらに低下するといいます。
具体的には、2016年の決算額における東京都の自動車関連の税収は約3.4兆円ですが、道路の新設や維持補修に対して約4.1兆円、交通安全対策に対して約1.1兆円、救急に対して約0.2兆円と、合わせて約5.5兆円の行政サービス費用が発生しています。
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さらに、電動化や自動運転化が進むなかで、道路の白線標記の品質維持などの仕組みづくりや、充電設備の充実といったインフラ整備など、新たな費用負担が発生することも予測されています。
「受益者負担」の原則にのっとれば、こうした費用は自動車ユーザー負担すべき性格のものであり、自動車関連に対する増税の根拠となっています。
自動車関連の税金は、国税や地方税の双方にまたがるため非常にわかりにくいという課題はありますが、今回の都税調の報告書を見る限り、自動車ユーザーに対するさらなる増税は避けられないようです。
※ ※ ※
今回の提言によって、東京都の自動車関連税制が、すぐに大きく変化するということはありません。
重要なのは、こうした自動車税制の見直しは20年から30年といった中長期的な視点に基づいているものです。
過去20年間でクルマの電動化が大きく進んだように、次の20年でクルマを取り巻く状況は大きく変化することはいうまでもありません。
それに対して、現在の視点で批判してしまうと議論は噛み合いません。
自動車関連の税制は、すべての自動車ユーザーが考える必要のある大切な課題であるからこそ、正しい前提に基づいた議論が求められています。
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