「ブゥン」と減速! クルマの「エンブレ」どう活用? 間違えると悪影響も! 推奨される場面とは
くるまのニュース / 2023年1月8日 20時10分
クルマの運転で、じつはあまり知られていないのが「エンジンブレーキ」です。通常のブレーキとどう違い、どのタイミングで使うのでしょうか。
■「エンジンブレーキ」は通常のブレーキとどう違う?
クルマの「ブレーキ」と聞くと、一般的にはブレーキペダルを踏んで減速・停車する「フットブレーキ」や、駐車時や坂道発進で使用する「パーキングブレーキ(サイドブレーキ)」をイメージします。
一方で、そのふたつのブレーキと比べるとあまり知られていないのが「エンジンブレーキ」です。
ブレーキペダルを踏んで作用する「フットブレーキ」は、「摩擦」と「油圧」によってクルマを止めようとはたらきます。
ドライバーがブレーキペダルを踏むと、その力は「マスターシリンダー」という機構へと伝わります。マスターシリンダーは「ブレーキフルード(ブレーキオイル)」というオイルで満たされており、オイルがシリンダーによって圧縮されると高い圧力(油圧)をともなった状態となります。
その後、高められた油圧は各車輪のブレーキ機構へと配管を通して伝わり、車輪と接続され回転している「ブレーキドラム」または「ブレーキディスク」を、油圧の力で「ブレーキパット」や「ブレーキシュー」が押さえつけて摩擦を発生させることで、クルマを動かす運動エネルギーが熱エネルギーへと変わりクルマが静止しようとします。
単に人が車輪を押さえつけるだけでは重量のあるクルマの動きを止められないので、これらの機構を持つことによりペダルを踏んだ力をパワーアップさせているのがフットブレーキの機構となります。
一方パーキングブレーキはレバーを引くタイプや足で踏むタイプなどがあり、これらはフットブレーキとは違い油圧は関わっていませんが、ブレーキシューがブレーキドラムを押し付けて止めていることに変わりはありません。最近では電動タイプも一般的になっています。
では、「エンジンブレーキ」とは何なのでしょうか。
これはエンジンの回転数が高まった際に回転を下げようとする抵抗を利用して、減速させる仕組みです。
エンジンが回っている限り、普段の運転をしていてもアクセルを離すことでエンジン回転数は下がろうとするので、エンジンブレーキは作用します。
さらに強いエンジンブレーキの減速力を使用したい場合は、AT車では「2」「L」「S」などのポジションに落としたり、シフトレバーに「O/Dボタン」が備わっている場合は押すと低速のギアへと切り替わるため、エンジン回転数が上がってエンジンブレーキが発生します。
エンジンブレーキはこのような操作をすることで、フットブレーキを使わずにクルマを減速させることができます。
■使いすぎはNG!? でも積極的に使ったほうがいい場面とは
エンジンの回転抵抗を利用したエンジンブレーキ。一見すると、フットブレーキよりも活用したほうが良いようにも思えますが、多用することでクルマに対してどのような影響はあるのでしょうか。
熱によるブレーキ性能低下を予防するためにエンジンブレーキは活用したい
自動車整備士は以下のように説明します。
「エンジンブレーキを使用すること自体には、クルマにとって問題にはなりませんが、負荷のかけ方によっては悪い影響をもたらします。
たとえば、速度がかなり出ているときに低すぎるギアにシフトダウンしてしまうと、エンジン回転数が急激に上昇するため、クルマへの負荷は大きくなります。
とくに、エンジンブレーキを使うたびにギアチェンジがおこなわれるため、トランスミッションに負荷がかかります。故障すると、数十万円の費用が発生することもあります。
フットブレーキは一般的にブレーキパットやブレーキディスクが消耗される程度なので交換費用は数万円程度ですが、トランスミッションの故障のことを考えると、エンジンブレーキの使用が積極的に推奨されるようなシチュエーション以外では、あまり過度に使いすぎないほうがいいと思います」
エンジンブレーキの使用自体には特段影響はないようですが、使用方法を誤るとクルマに対し悪影響をおよぼすリスクもあるというエンジンブレーキですが、どのような状況で活用するのが有効なのでしょうか。
エンジンブレーキの活用が推奨されるケースとして、長い下り坂や連続する下り坂を走行する場合が挙げられます。
下り坂でフットブレーキを多用しすぎると、ブレーキが熱を持ってしまい性能が低下する「フェード現象」の発生や、ブレーキの熱がブレーキフルードへと伝わり沸騰して気泡が発生する「ベーパーロック現象」が起こるためです。
このような事態を避けるために有効なのが、エンジンブレーキです。
フットブレーキの作用とは関係なく、エンジンの回転抵抗により減速できます。
峠道や山道など、下り坂が連続する区間や、高速道路の長い下り坂では「エンジンブレーキ使用」「低速ギアにチェンジ」「エンジンブレーキ併用せよ」などの警戒標識が設置されていることもあります。
※ ※ ※
このようにエンジンブレーキは、フットブレーキのように平坦な街中や高速道路などで常時使うことは推奨されませんが、急な坂道が連続しフットブレーキの負荷がかかるような状況では、補助する役割としてエンジンブレーキを有効活用することで、安全運転につながります。
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