「タクシー」は“自家用車”として所有可能!? 意外と「頑丈」「便利」「安価」! 「違反」になる行為とは?
くるまのニュース / 2023年1月4日 20時10分
街中でよく見かける“はたらくクルマ”の筆頭といえば「タクシー」でしょう。そんなタクシーとして使用されていた車両を「自家用車」として乗る場合には、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。元タクシー車両を実際に所有する筆者が紹介します。
■元タクシーを愛車に?
タクシーといえば、都心部から郊外、観光地や地方都市に至るまで、全国津々浦々で重要な社会インフラを支える存在です。
そして、過去から現在まで数多くの車種がタクシーとして活躍してきました。今回はそんな”タクシーあがり“の車両を実際に購入し、自家用車として所有している筆者(「わすことセンパイ」のセンパイ)が、タクシーを愛車にする際のメリットや注意すべき点などを解説します。
「タクシーといえばセダン」と言うイメージもひと昔前のことになりつつあります。
トヨタや日産など、商用車として長らく販売を続けていた3ボックス形セダンの生産が終了したり、タクシーとして使用できる車両の規制が緩和されて以降、コンパクトからミニバンタイプまで様々な形状のタクシーを見かけるようになりました。
また、夏季オリンピック・パラリンピック東京大会(東京2020)以降では、ユニバーサルデザインタクシー用として販売されているトールワゴンタイプのトヨタ「JPN TAXI」も都市部を中心によく目にするようになりました。
それでも、まだまだセダンタイプのタクシーは健在であり、現役でタクシーとしての使命を全うしています。代表的な車種を挙げると、トヨタ「コンフォート」や姉妹車の「クラウンコンフォート」「クラウンセダン」、日産「セドリック営業車」「クルー」などがあります。
特にコンフォートやセドリック営業車などは、タクシーだけに限らず教習車として使用している自動車学校も多かったため「初めてハンドルを握ったクルマはこの車種だった」と言う方も多いのではないでしょうか。
■元タクシーの中古車ってどこで買う?価格は?
さて、タクシーを自家用車として乗りたい場合、まずは車両を見つけるところから始めなければなりません。
といっても、タクシーの中古車は個人の需要より事業者間での需要が大きいため、中古車販売の店頭にはそもそも並ぶ機会が少ないのが現状です。そのような場合は、業者オークションなどに出品される車両を中古車販売業者さんに直接探してもらう方法のほか、「ヤフオク!」などのインターネットオークションサイトや総合中古車検索サイトで掲載されている車両を見つける方法もあります。
ちなみに筆者はインターネットオークション経由で事業者の方から直接落札しました。購入したのはトヨタ「クラウンセダン」です。
価格は、車体の状態や年式でもちろん変動しますが、状態の良いもので100万円前後。通常50万円程で購入が可能です。安い場合10〜20万円台で入手可能な場合もあり、中古車の値段が著しく上昇している昨今の背景を鑑みると、比較的割安な値段で入手できると言えるかもしれません。
■ざっと地球10周分!? 過走行でも大丈夫?
中古車としてタクシーを買うと、まず驚くのはその走行距離です。毎日走り回っていたクルマなので、個人の所有車に比べれば必然的に走行距離が伸びるのは想像できるでしょう。
タクシーが中古車として市場に出る場合、その走行距離は少なくとも10万km超え、下手をすると40万kmオーバーも珍しくありません。これは地球10周分の距離に相当します。
筆者の愛車も、購入した時点で走行26万キロを超えていました。
一般的なクルマならば、10万km超えというと、買い替えを検討するような一つの区切りになるような走行距離にあたりますが、タクシー向けとして生産されていた車両は、どれもハードな現場に耐えうる堅牢な設計になっており、故障率も低く、たとえ10万kmを超えていてもまず致命的なトラブルは起きにくい構造になっています。
ただしこれは、日常的にメンテナンスがしっかりとなされていることが前提です。
特にコンフォート/クラウンコンフォートシリーズなどは、40万km以上の走行にも耐えうる車両として設計されているというのですから驚きです。
また、タクシーの中古車に共通していえることは、「運転席周辺の損傷が激しい」「小キズが多い」「ステッカーなどの貼り跡が残っている」ということです。
やはりこれも“はたらくクルマ”ならではの症状で、この部分は実際にそのクルマが歩んできたヘリテージとして寛大に捉えることが重要になります。加えて、オーディオやナビ、オートエアコンなど、一般的に装備されている快適装備が無い場合が多いのも気になるポイントかもしれません。
■高耐久でもメンテナンスは必須!豊富な部品に支えられる
ひとえに壊れにくいタクシーといえども、細やかなメンテナンスはもちろん不可欠です。
タイヤやオイルなどの交換はもちろん、ブレーキパッドや電球、パッキンなどの消耗品類などの交換は普通の自家用車と同様にやらなければなりません。
そうなってくると気になるのが補修にかかわる部品在庫や費用ですが、今日も商用車として日本中を走り回っているタクシーのメンテナンス部品は実に豊富で、例え故障してしまい部品交換が必要になってしまっても、数多くの在庫があり、値段も比較的割安な印象です。
また、整備性も良好な車種が多いので、自分で整備や修理にチャレンジしやすいという面もあります。
ちなみに車検は、特別な改造は必要なく自家用車として問題なく取得することが可能。また、普段の整備も一般的な自家用車と同じように正規ディーラーや民間の工場などに依頼することが可能です。タクシー車両だからと言って専門の場所で整備する必要はありません。
■燃料はガソリン…とは限らない?
公道走行中に「空車表示灯(スーパーサイン)」を点灯するのはNG?
クルマの燃料と言えば、ガソリンが一般的です。また、クリーンディーゼル車ならば軽油を給油しますが、どちらも一般的なガソリンスタンドで手に入る燃料です。
しかし、タクシーで使用される車両の多くはLPGガスを燃料として使用しており、一般的なクルマの燃料タンクにかわり、ガスボンベを備えている場合があります。
そのため、燃料の補給にはLPGガス専用のスタンドにてガス充填が必要になり、もし購入したい車両がLPG車であった場合は、近場のLPGスタンドを探さなくてはなりません。都市部などタクシーが多く走っている地域ならば近場にLPGスタンドを見つけることは難しくはありませんが、郊外などLPGスタンド自体が無いという場合もあるので、ドライブの際には事前に調べておくことが重要です。
また、LPG車はガスボンベの容器検査というものがあり、基本的には6年に1回(タンクの製造年によっては2年に1回)検査を受ける必要があります。検査切れの場合は車検を取得することが出来ないということも注意点の1つです。
ちなみに、LPGガスの燃料代は1Lあたり100円を切るなど、レギュラーガソリンに比べてとても割安な印象です。しかし、容器検査の費用として6〜14万円ほど掛かってくるので、距離を多く乗るユーザーでないとトータルコスト的には高くつく場合があります。
また、LPG車は満タンで400kmを超える走行が可能ですが、都市間移動など遠出をする際は前出の通り、途中や訪問した土地でLPGガスを充填出来る場所があるか事前に調べる必要もあります。
通常のガソリン車のように手軽に燃料を補給出来ないという点は注意が必要です。
■行灯やメーターなど、タクシー専用装備はつけたままでいいの?
では、タクシーを中古車として購入したのち、タクシー専用の装備を搭載したまま自家用車として乗っても問題無いのでしょうか。
まずは「行灯(あんどん)」です。
これはタクシーの屋根に設置されている会社名などが入った看板ですが、これは本物のタクシーを連想させるため、誤解を生まないためにも基本的には取り外した方が無難です。
次に「空車表示灯(スーパーサイン)」です。
これは看板やフィルム幕、LEDなどで「空車」や「賃走」「回送」を表示する装置のことですが、こちらの装備は表示(点灯)させたままでの公道走行はNGです。しかし、表示(点灯)させた状態で公道を走行しなければ、装備として設置しておいても問題はありません。
そして「タクシーメーター」。
これぞまさに“タクシー”という装備ですが、こちらに関しては通常、稼働できる状態で装備していても問題はありません。もちろん、実際に人を乗せてメーターを回し、金銭を収受する行為(白タク行為)は絶対にNGです。
それ以外にも「後部左側自動ドア」や「防犯板」(運転席の背もたれに設置されているアクリル板)、「ルーフウィンカー」、「アンテナ」、「ウィンカーレバー内蔵型ハザードスイッチ」など、タクシー専用と呼べる装備はたくさんありますが、どの装備も公道走行に関して問題はありません。
※ ※ ※
タクシーは、開発思想から仕事をするクルマとして設計されている甲斐あってか、長時間運転していても疲れにくく、乗り心地も良好な車種が多くあります。
また、後部座席や荷室に充分なスペースがあり、ボディの大きさも5ナンバーサイズに収まる場合が多く、取り回しのし易さに加え、後輪駆動車(FR)特有の小回りの効きと運転する楽しさも同時に味わうことが出来ます。
そして、レトロを感じる商用車特有の飽きのこないデザインも魅力的なポイントの一つで、何と言っても“はたらくクルマ”を所有するという非日常感が気分を高めてくれます。
社会の重要な“脚”として日々活躍しているタクシーを自分専用の“脚”にするのも選択肢の1つです。
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