実は「4WDは雪道無敵」じゃない!? 昔の定説は通じない? 過信禁物な雪道運転…事前に知っておくべきコトとは
くるまのニュース / 2022年12月24日 9時10分
あなたの「雪道知識」は間違っていませんか。昔からいわれている対策方法のなかには現在では通用しないものもあるようです。雪道を運転するうえで事前に知っておきたいコトとは、どのようなものなのでしょうか。
■「実は間違っているかも!」 雪道運転知っておきたいコト
本格的な冬シーズンとなり、地域によっては積雪しており、そのような場所に出向くことも多くなります。
昔からいわれている対策方法のなかには現在では通用しないものもあるようですが、どのような部分に気をつけておけば良いのでしょうか。
また「4WDだから雪道に強い」という話を聞きますが、それは本当なのでしょうか。
基本的に雪道を走るうえで、駆動方式に関係なく注意したいのが「急のつく動作はしない」という、急ハンドル・急ブレーキ・急アクセル操作をしないということです。
これらはすべてスリップに繋がります。もしクルマが滑りはじめているのであれば、「全身全霊でブレーキペダルを踏む」ことです。
昔は「ポンピングブレーキをおこなう(小刻みにブレーキを踏むこと)」などと習ったものですが、現代ではそれはNGです。
現代のクルマには、ほぼABSが標準装備となっており、ABSはタイヤのロックを感知すると、ブレーキを油圧で調整して、自動的にポンピングブレーキのような状態を作ります。
ABSは、タイヤがロックすればするほど利くという特質を持っているため、ひたすらブレーキペダルを踏み続けたほうが短距離で停止することができるのです。
もうひとつ重要なのは、コーナーの最中にアクセルを戻さないことです。
アクセルを戻すとバックトルクが始まり、ギアのポジションによっては前輪、後輪の順で急激に減速を始め、瞬間的にタイヤがロック状態となり、グリップを失います。
そのためコーナーに入る前には、ポンピングブレーキ気味に優しくペダルを踏み、長い距離をかけて減速していきます。
コーナーに入ったら、アクセルを一定の状態で踏み続け、コーナーの終盤になったら再び踏み込みます。
そして、雪道を走るうえでよく聞く話として「僕のクルマは4WDだから雪道に強い」というような台詞です。
※ ※ ※
3シーズン(春・夏・秋)では、大雨のときくらいしかありがたみを感じませんが、冬になると絶大な威力を発揮してくれるのが四輪駆動、いわゆる4WDシステムですが、雪道でスリップしないわけではありませんし、スタックもします。
昨今は、軽トラックから超高級SUVまで4WDの設定があり、雪道だけでなく、ダートや不整地、スポーツ走行までさまざまなシーンでドライバーをアシストしています。
4WDというと、4本のタイヤにエンジンの力が伝わっていると思いがちですが、実はシステムよって異なります。
まず『パートタイム4WD』と『フルタイム4WD』では、まるで違い機構が採用されています。
さらに、フルタイム4WDのなかにも、『パッシブトルクスプリット』と『アクティブトルクスプリット』の2タイプがあり、価格帯によって採用されるシステムが異なります。
実際にパートタイム4WDを採用している現行車はというと、スズキ「ジムニー」やトヨタ「ハイラックス」、ジープ「ラングラー」ですが、ラングラーにはフルタイム4WDモードが付いているため、厳密にはジムニーだけになります。
パートタイム4WDは、通常はFRですが、トラランスファーをシフトすると4WDに変化するシステムです。
4WDにおいても、通常走行用の4WD-High(4H)と、超不整地走行、脱出、牽引用の4WD-Low(4L)というギア比を選べるのが特徴です。
この4Lはクラッチを傷める恐れがある、深雪走行やスタック車の牽引で絶大な威力を発揮してくれます。
ちなみに、パートタイム4WD車で4WDに切り替えるタイミングですが、道路上に雪片が落ちていたり、極端に道が濡れていたら、その先は積雪している可能性があります。早めに切り替えをしておくと安心です。
パートタイム4WDは、前後対角線上の2輪が空転(対角線スタック)しなければ前進できるという特徴がある一方で、実は凍結路など低ミュー路のコーナーでは運転に注意が必要です。
というのも、パートタイム4WDには前後輪の回転差を吸収するためのセンターデフが装備されていません。
そのため、Rの大きなカーブにハイスピードで入った場合など、後輪からスリップを始める場合があります。
リカバリーが早ければコントロールできますが、場合によっては四輪がグリップを失って、車両がアウト側に飛び出すことも。
腕に自信がある人は別として、パートタイム4WDを雪道でドライブする場合は、ハイスピードにならないようにしたほうが無難です。
加えて注意しなければならないのが、深雪。強力な駆動力で深雪をグイグイと進んでしまうため、スタックしたときは簡単に脱出できないような状況になることが多々あります。
■実は種類があるフルタイム4WDの特徴は?
フルタイム4WDはさらに注意が必要となります。もちろん、FFやFRに比べれば安定した走りが可能ですが、盲信は危険です。
まずパッシブトルクスプリット式4WDは、主に軽自動車やコンパクトカーに採用されおり、フルタイム4WDですが基本的にはFFで走行しています。
前輪の空転を感知すると、そこで初めて後輪に駆動力を伝達。ようやく四輪駆動になるのです。
しかも、2WD→4WDの切り替えには、若干のタイムラグがあるため、直進状態ならいいのですが、コーナーで4WDになったときにはすでに遅しという場合が少なくありません。
駆動方式は4WDになっていても、それはあくまでも補助的な機構と考えるのが無難です。
凍結路での坂道発進やちょっとした深雪からの脱出などに役立つと考えた方がいいでしょう。
一方で現代の自動車工学の粋を集めているといえるのが、アクティブトルクスプリット式4WDのメカニズムで、「4WDのSUBARU」に多く採用されている方式でもあります。
そのテクノロジーは年々進化し、昨今はトラクションコントロールとの連係などが密となり、運転技術やタイヤの性能、路面状況に関わらず、驚くほどの走破性を発揮します。
実はフルタイム4WDはセンターデフの影響によって、四輪のうち1輪が空転してしまうと他の3輪は停止するという弱点があります。
これを解消するためにさまざまな電子バイスをサポートに当てているのが、現在のアクティブトルクスプリット式の4WDです。
その多くシステムは車内のインターフェイスで路面をセレクトすると、それに合わせたエンジン出力、制動力、駆動力配分をECUが制御。
一般的に、深雪などからの脱出時にはTSCやESCをOFFにする必要がありますが、最新のシステムの場合はそういった操作さえもシステムが代行してくれるようになっています。
また1輪が空転してしまうようなシチュエーションでも、ブレーキLSDトラクションコントロールの作動により空転を抑え、ほかの3輪に駆動力が伝わるように自動制御してくれます。
どんなクルマでも雪道ドライブに油断は禁物!
さらにアクティブトルクスプリット式の1種で、HV(電気自動車)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、EV(電気自動車)に採用されている「モーター式4WD」はさらに優秀です。
前輪をエンジン、後輪をモーターで、もしくは前後を別々のモーターで駆動させるモーター式4WDは、駆動配分のタイムラグがほぼないため、車両の状態に合わせた細やかな制御を実現しています。
三菱のツインモーター4WDなどは、バリアブルかつスピーディな制御で、さらにさまざまな制御メニューも用意。タイヤ性能さえも超える制御プログラムは、まさに至高の4WDです。
アクティブトルクスプリット式は最強の4WDシステムともいえますが、もちろん弱点はあります。
まず車両の最低地上高を超える積雪のなかを走ると、カメの子状態になって完全にスタックする恐れがあります。
またタイヤ性能の限界を超える路面状況でも電子制御がフォローしてしまうため、その域を超えてしまうと大惨事に陥ることがほとんどです。
※ ※ ※
どのタイプの4WDにも共通していえることですが、タイヤのトラクションやグリップを身体で敏感に感じながら、あくまでも安全な速度域のなかで走行することが大切です。
またカーナビで案内された道でも除雪されていないところには基本的に入らないようにしましょう。
パートタイム、フルタイム限らず、タイヤの1/3以上が雪で埋まってしまうようなところは、危険と考えておき、除雪用スコップやけん引ロープなどレスキューグッズを携行することも忘れてはなりません。
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