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新型「セレナ」なぜ残価率がランクル並みに高い? トヨタとホンダのライバル車に対抗する日産の秘策とは

くるまのニュース / 2023年1月9日 11時10分

トヨタ「ノア/ヴォクシー」、ホンダ「ステップワゴン」といったミニバンの全面刷新が相次ぐなか、日産「セレナ」が遅れて登場しました。後から出た新型セレナには不利な状況ですが、ライバル車に対抗する作戦があるようです。

■ミニバンが次々にフルモデルチェンジ

 2022年は「ミニバンの年」でした。1月にトヨタのミドルサイズミニバン「ノア/ヴォクシー」、5月にホンダ「ステップワゴン」、11月には日産「セレナ」がフルモデルチェンジを実施したほか、コンパクトミニバンでは、8月にトヨタ「シエンタ」も一新されました。

 同じカテゴリーの車種が、示し合せたように同時期にフルモデルチェンジをするのにはどのような理由があるのでしょうか。

 各メーカーの開発者に尋ねると、「ミニバンは国内専売で、コンパクトカーも国内の販売比率が高いカテゴリーです。各メーカーが同じお客さまに向けて商品を開発しているため、似通った時期に同じカテゴリーの車種が一新されるのでしょう」という返答が多く聞かれました。

 そこで改めて考えたいのは、同じカテゴリーの新型車が相次いで登場したことにより、ユーザーにどのようなメリットが生じるかです。

 今は新型コロナ禍の影響で半導体などの供給が滞り、新車の納期も長引いています。販売競争をしたくても困難な状況ですが、それでも冒頭に挙げたミドルサイズミニバンは、互いに比べられるライバル同士です。

 ミドルサイズミニバンのライバル競争で有利な車種は、2022年に入って真っ先に発売されたノア/ヴォクシーでしょう。逆にもっとも遅かったセレナは不利です。ミニバンを欲しい人達が、ノア/ヴォクシーやステップワゴンを購入し始めた後で、新型セレナが登場したからです。

 そこで日産は、新型セレナに用意される残価設定ローンの残価(残存価値)を高めました。

 残価設定ローンとは、契約時に数年後の残価を設定して、残価を除いた金額を分割返済するローンです。仮に3年後の残価が新車価格の45%なら、残りの55%を3年間で返済。返済期間を満了しても車両は自分の所有にはなりませんが、少ない返済額で使って返却できます。価値が減る分のお金を支払うため、リースに近いローンともいえるでしょう。

 そして残価が高ければ、残りの返済額は減るため、月々の支払い額をさらに安く抑えることができます。

 一般的に3年後の残価は新車価格の43%から48%ですが、新型セレナの「e-POWERハイウェイスターV」は67%と際立って高いのです。5年後の残価率は、一般的には35%から40%ですが、新型セレナのe-POWERハイウェイスターVは56%です。

 ここまで残価率が高い車種は珍しく、予約が殺到し受注を停止する前にトヨタ「ランドクルーザー」が提示していた、3年後で70%の高い残価率に匹敵します。残価率の高さでランドクルーザーに対抗できるのは、新型セレナだけでしょう。

■“お買い得感”を強調する新型セレナ

 次は新型セレナとライバル車で、月々の返済額を比べてみましょう。

 まず、新型セレナ e-POWER ハイウェイスターVの価格は368万6100円で、3年後の残価率は前述の67%です。3年間の均等払い(実質年率4.9%)なら月々の返済額は5万500円になります。

「ノア ハイブリッドS-Z」の価格は367万円で、3年後の残価率は55%。3年間の均等払い(実質年率5.8%)で月々の返済額は6万1400円です。金利の違いもありますが、月々の返済額はセレナに比べて1万900円(比率に換算すると22%)高いです。

「ステップワゴンe:HEVスパーダ」の価格は364万1000円で、3年後の残価率は54%です。3年間の均等払い(実質年率3.5%)で月々の返済額は5万6600円と、月々の返済額はセレナよりも6100円(比率に換算すると12%)高くなります。

セレナのライバル車であるトヨタ「ノア/ヴォクシー」セレナのライバル車であるトヨタ「ノア/ヴォクシー」

 これらの3車種で取り上げたグレードは、いずれも機能に対して価格が割安なハイブリッドの買い得仕様です。その価格はすべて360万円台に集中しており、各車が買い得グレードの価格を限界まで下げて、熾烈な販売合戦を展開していることが分かります。

 そうなると、価格がほぼ同じでも、残価設定ローンの残価率を高めれば、月々の返済額がライバル車よりも下がって“お買い得感”を強調できます。

 日産の販売店では「今は新車を購入されるお客さまの半数近くが、残価設定ローンを利用されます」といい、ライバル車よりも遅れてフルモデルチェンジを受けたセレナにとって、残価率を高めて残価設定ローンの返済額を抑えられることは、強力な販売促進対策になるのです。

 残価率が高くなると返済額を減らせるためユーザーのメリットは増えますが、日産のリスク負担は重くなります。数年後に返済期間を満了して顧客がセレナを返却したとき、中古車市場における流通価値が高くないと、残価設定ローンの収支に損失が生じるからです。

 つまり新型セレナの残価率を高めた以上、日産は、中古車市場で高値を保てる人気車にしなければなりません。

 そのためにもセレナは、SUV風のクロスオーバーなど、魅力的なバリエーションを投入することになるでしょう。

 そうなるとノア/ヴォクシーやステップワゴンも対抗して商品力を高めますから、ミニバンはますます魅力的になっていきます。

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