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「空飛ぶクルマ」いつ実現可能? 日本は近未来モビリティで世界をリードできるのか?

くるまのニュース / 2023年1月18日 14時10分

「空飛ぶクルマ」が未来の乗り物として紹介されることが増えていますが、果たして本当に実現可能なのでしょうか。

■ドローンの普及で「空飛ぶクルマ」が一気に現実的に

 米・ラスベガスで開催された世界最大級のITや家電の見本市「CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)2023」では、さまざまな「空飛ぶクルマ」が出展されました。

 CESは近年、自動運転やEVの分野で世界に向けたショーケースとして注目されており、そうした流れのなかで、「空飛ぶクルマ」が未来の技術として紹介される機会が増えています。

 日本でも、2025年の大阪万博で実際に運航を目指すなど、日本発の空飛ぶクルマ産業を育成する動きがありますが、果たして空飛ぶクルマは近未来モビリティとしてどのように普及していく可能性があるのでしょうか。

 そもそも空飛ぶクルマとは何なのでしょうか。

 現在のところ、技術的または法的な定義はとくになく、あくまでも俗称です。

 飛行する高さで見れば、ドローンとヘリコプターの中間、といった空域をイメージした乗り物とする場合が多いでしょう。

 種類としては大きく2種類あり、ドローンやヘリコプターのように垂直に離着陸するもの。これを一般的に、VTOL(ブイトール:ヴァーティカル・テイクオフ・アンド・ランディング・エアクラフト)と呼びます。

 もうひとつは、飛行機のような固定翼があり、地上走行では固定翼を折り畳むモデルなどが考案されています。

 筆者(桃田健史)は今(2023年)から36年前の1987年に、米・カリフォルニア州内でFAA(米連邦航空局)の自家用双発機操縦免許を取得しており、その後は世界各地で空飛ぶクルマについて、メーカーや起業家、そして各国政府や関係省庁に対して定常的に取材をしてきました。

 2000年代までに取材した事例の多くは、初期的なプロトタイプや軍事関連での先行開発構想といった感じで、コストや事業性の観点から、それらの実用化は難しいといわざるを得ませんでしたが、2010年代に入るとドローンの普及によって状況は大きく変化します。

 テレビや動画サイトの撮影用、土木関連での測量用や検査用、そして一部では娯楽用としてドローンの普及が一気に進み、高性能な量産ドローンの価格も下がってきました。

 また、サービス事業として、グーグル(親会社はアルファベット)やアマゾンなどの大手テック企業もこれまでさまざまなサービス事業の実用化に向けた検討をしています。

 そうしたなかで、「人が乗れるドローン」という発想として、電動VTOLの量産を目指すベンチャーが世界各地で生まれました。

 近年では、そうした複数の電動モーターを使ったVTOLを空飛ぶクルマと呼ぶことが増えている印象があります。乗員数は1人から、10人前後までといった比較的小型のイメージです。

 メーカーとしては、世界各地にさまざまなベンチャーがおり、また、大手企業ではボーイングやエアバスなど航空機メーカーのほか、自動車メーカーではホンダが自社による研究開発を公表していますし、トヨタやステランティスは現時点では投資案件という視点で事業の構築を考えている印象があります。

■空飛ぶクルマが量産化されるまでのハードルとは

 空飛ぶクルマは、いつ、どのように実用化されていくのでしょうか。

 日本の場合、経済産業省が「空の移動革命に向けた官民協議会」を2018年9月から2022年2月まで合計8回開催しています。

 最終的に示された「空の移動革命に向けたロードマップ」(改訂版)によると、2022年度から大阪万博がある2025年度にかけては「試験飛行から商用運航の開始」とし、その後は2020年代後半に向けて「商用運航の拡大」、さらに2030年代以降に「サービスエリア、路線・便数の拡大」という流れを想定しています。

ホンダが開発を進める「eVTOL」ホンダが開発を進める「eVTOL」

 使用されるケースとしては、都市部や都市と郊外を結ぶ移動、離島や山間地域での移動、
そして救急に係る移動が考えられています。

 こうした産学官連携による一連の協議を俯瞰(ふかん)してみると、最初は海外で一気に進むドローン(空飛ぶクルマ)の実用化に向けた動きに対して、日本が出遅れまいとする雰囲気がありました。

 それが直近では、「必要なケースをしっかり捉えて、現実的な対応をしていこう」という姿勢に変わってきているように感じます。

 こうした議論の変化は、自動運転やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)でも同じに思えます。

 議論の全体像として、目的は「社会課題の解決」と「産業競争力強化」の大きく2本立てなのですが、詳細な議論に入ると「技術開発」と「法規制対応」などの深堀りが優先され、「事業性を踏まえたうえでなぜ必要か?」という出口戦略に対しての議論が“帳尻合わせ”になりがちです。

 そのため、さまざまな実証試験をやっても、最終的には実際の需要とマッチせずに、いわゆる「実証のための実証」で終わるケースが数多くあるのが実状です。

 空飛ぶクルマの場合、自動運転(や地上で)のMaaSと比べると、高い安全性と飛行性能を担保したハードウエアを適格な価格で量産するまでのハードルがとても高いといえるでしょう。

 ところが、空飛ぶ“クルマ”という表現を使うため、一般的なイメージとしては自動車産業とのつながりが強く、そのため自動車産業が国の主体産業である日本には空飛ぶクルマのハードウエア研究開発や販売においてグローバルで優位に立てる、というイメージを持つ人がいるのかもしれません。

 しかし、航空産業を考えれば、日本で使われている飛行機やヘリコプターは欧米など海外製が主流で、航空に係る日系企業は旅客や貨物などのサービス事業に集約されているのが実状です。

 そうした日本での現実を踏まえると、日本製空飛ぶクルマは、ひとつの方法論ですがそこにこだわりすぎず、既存の航空産業に近いかたちでのサービス事業を優先することに重きを置くことをより深く議論しても良いのではないでしょうか。

 実際、ホンダは2021年9月に「Honda eVTOL」の技術詳細を明らかにした際、(EVのような)オール電化する電動化は、(当面の間の技術において)バッテリー容量による航続距離が(かなり短いという)課題がある」と指摘し、ジェットエンジンを発電機として使うモーター駆動を想定しています。クルマでいうならば、シリーズハイブリッドに相当します。

 ホンダは、量産型のホンダジェット事業があり、空を飛ぶことの難しさを十分に理解したうえで、こうした空飛ぶクルマの現実解を示したといえるでしょう。

 いずれにしても、空飛ぶクルマについては「誰が、いつ、どのように使うのか?」という目的をしっかりと踏まえ、製造業として、またはサービス業として成立するビジネスモデルを描くという、事業設計の基本中の基本を常に考えることが重要です。

 すでに空飛ぶクルマは単なる夢物語のステージは終わっており、事業としての高い精度が求められる時代に入っているのだと思います。

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