トヨタ新型「クラウン」なぜ一部グレードしか納車されない? ユーザーは選びづらい!? 時間差で発売する事情とは
くるまのニュース / 2023年2月7日 17時10分
最近の新型車はグレードによって発売や納車の時期が異なるモデルが増えました。なぜすべてのグレードが同時に発売されないのでしょうか。
■クラウンもCX-60もなぜすべてのグレードが同時に発売されない?
一般的にクルマには複数のグレードが設定されており、購入するときは自分が必要とするスペックや装備などをいくつかのグレードのなかから選択することができます。
そして通常は全グレードを同時に発売しますが、最近は時間差を設けて、段階的に発売する車種が増えました。
たとえばトヨタでは、2022年に発売された「クラウンクロスオーバー」が段階的に生産を開始しています。グレード名に「アドバンスト」と付くグレードは早期に生産を開始しましたが、それ以外は2023年4月以降の生産予定とされました。
「シエンタ」も「Z」グレードなどの生産は早期に立ち上がり、それ以外のグレードで特定のオプションを加えると、生産開始が2023年4月以降と案内されています。
例えばマツダ「CX-60」は2022年4月に日本仕様の概要を発表して、販売店では予約受注の前段階ともいえる受注を開始しました。この後、6月に「正式な予約受注」を始めて、9月に販売を開始。
そして納車の開始は、クリーンディーゼルターボ+マイルドハイブリッドは10月頃でしたが、ほかのグレードは2023年に入ってからとなり、プラグインハイブリッド、ディーゼル、ガソリンエンジンの順に納車されることになります。
日産は「セレナ」を2022年11月に発表しており、ガソリン車は、すでに生産を開始して納車も始まっています。しかしハイブリッドの「e-POWER」はまだ納車が開始されていません。
日産の販売店は次のようにいいます。
「セレナe-POWER」は2023年2月時点で発売されていません。販売店ではお客さまの注文を受けていますが、生産の開始時期や納期は未定です。一方、ガソリン車は納期が早く、注文をいただいて3か月から6か月で納車できます」
レクサス「RX」はほかの車種に比べてグレードの数が限られています。2.4リッターターボの「RX350」は2種類のグレードがありますが、2.4リッターターボ+ハイブリッドの「RX500h」、2.5リッタープラグインハイブリッドの「RX450h+」は、各1グレードだけです。従ってグレードは合計4種類に限られ、「NX」の合計8グレードを大幅に下まわります。
このようにグレードごとに発売タイミングが異なったり、種類を抑える理由は何でしょうか。
メーカーの開発者に尋ねると次のように返答されました。
「今は半導体などの不足で新車の納期が全般的に長いです。この状況で全グレードの生産を一斉に始めると、納期がさらに延びます。
そこでグレードや仕様の生産開始時期に差を付けて、生産の立ち上がりは特定のグレードに絞り、なるべく早く効率の良い納車をおこなえるようにしています」
例えばクラウンクロスオーバーの場合、納期の遅延を抑えたいならアドバンストを選びます。逆に納車が遅れても良いユーザーは、アドバンスト以外の好きなグレードも選択できるわけです。
レクサスRXの開発者は次のように述べました。
「RXには(ほかのレクサス車で人気の高い)2.5リッターハイブリッドを搭載するグレードがありません。これもグレードの種類を減らすためです。
将来的に半導体などの供給状態が好転すれば、2.5リッターハイブリッド搭載車(RX250h)を用意するかも知れません」
以上のように、半導体の不足による納期の遅れを食い止める目的で、グレードの生産開始に時間差を設けています。
■不明なグレードがあるとユーザーが判断しにくい
ただし新型コロナ禍を発端に納期の遅れが始まる前から、グレードによって生産開始時期の異なる車種もありました。
例えば「マツダ3」は新型コロナ禍前の2019年5月に発売されましたが、パワーユニットに応じて生産開始時期が違いました。とくに「スカイアクティブX」は、2019年の発表時点では燃費などの数値が不明で、納期も大幅に遅れました。
エンジンのバリエーションが多い「マツダ3」
そしてマツダ3は2020年11月に早くも改良を実施していますが、この時も改良型の発売時期に差が生じました。改良型の発売時点で、スカイアクティブXと1.8リッタークリーンディーゼルターボはデータがそろっていませんでした。
このときにはマツダの販売店から次のような話が聞かれました。
「お客さまは車種を決めたら次にグレードを選びます。このときには、全車の性能、装備、燃費、価格などを知ったうえで、ご自分のニーズと予算に合ったグレードを決めます。不明なグレードがあると最適なグレードを判断しにくいのです」
マツダ車には全般的に選べるエンジンが多く、マツダ3では、ガソリンエンジンが1.5リッター、2リッター、2リッタースカイアクティブXで、1.8リッタークリーンディーゼルターボもあります。ボディタイプもファストバック(5ドアハッチバック)とセダンの2種類です。バリエーションが多く、開発にも時間を要するため、全グレードの一斉発売は困難でした。
しかも今は新型コロナ禍なので、順番の遅いグレードは、いつになっても発売できない心配があります。
例えば日産「アリア」は、先行発売した特別仕様車の「リミテッドシリーズ」を終了して今は一般グレードの販売に移りましたが、2022年2月上旬時点では、ベーシックな「B6」しか用意されていません。せっかく開発されたパワフルな4WDの「B9・e-4ORCE」などは購入できない状態であるうえ、一時的にB6の受注も停止しています。
この状況では、レクサスRXのように、グレードの種類を減らす必要も生じるでしょう。グレードの選択と集中をおこなってコストや納期を合理化するわけです。
そこで問われるのが、メーカーの国内市場に対する分析能力です。グレードの選択肢を少なく抑えるには、国内のニーズを的確に把握して、需要の高い商品を厳選して投入せねばなりません。
過去20年ほどの間に、日本のメーカーは、海外市場を重視した商品開発によって国内の売れ行きを下げました。納期遅延などにより、今後の国内市場がさらに冷え込むのか、それとも販売の下降を食い止められるのか、日本メーカーの国内市場に向けた熱意に掛かっているといえるでしょう。
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