レクサス新型「RZ」を速攻試乗! 「次世代のモビリティだった!?」 渡辺新プレジデントの「想い」詰まったBEV専用モデルの魅力とは
くるまのニュース / 2023年3月15日 12時10分
2023年春に発売が予定されているレクサス初のBEV専用モデルとなる新型「RZ」。チーフエンジニアも兼任する渡辺剛新プレジデントはどのような想いでRZを開発したのでしょうか。
■レクサス初のBEV専用となる「RZ」とは? そして新プレジデントはどんな人?
BEVによるレクサスブランドの新たな幕開けとして、2022年4月20日に世界初公開された「RZ」。
今後のレクサスを象徴するモデルかつ電動化戦略をけん引する存在として、日本でもまもなくの発売が予定されています。
そんなRZそしてレクサスブランドは今後どうなっていくのでしょうか。
レクサスは2005年に発売された「RX」以降、HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)といった電動モデルを投入してきました。
また2019年に発表された電動化ビジョン「Lexus Electrified」に基づいて電動化技術を用いた基本性能の進化を進めており、その第一弾として2020年にブランド初のBEV市販モデルとなる「UX300e」を発売。
さらには2021年に次世代のレクサスらしいデザインや走りそして初のPHEVを設定した「NX」、2022年には新たな四輪駆動力システム「DIRECT4」の採用やPHEV第二弾となる「RX」を販売しています。
そうしたなかでRZは、レクサス初のBEV専用モデルとして電動化技術がもたらすレクサスらしいデザイン、走行性能などにより、今後BEVを軸とするレクサスブランドへの変革の起点となるモデルです。
2021年12月に行われた「バッテリーEV戦略に関する説明会」において、トヨタの豊田章男社長ならびレクサスの佐藤恒治プレジデント(当時)は、今後のレクサスについて「2030年までにすべてのカテゴリーでBEVのフルラインアップを実現」、「2035年にはグローバルでBEV100%の販売を目指す」という方針を打ち出されています。
約1年後の2023年1月26日には豊田章男氏が会長職、佐藤恒治氏が社長職に4月1日付けで就任することが明かされた他、その2週間後には佐藤恒治氏の新体制による役員人事および幹部職人事やこれからのトヨタ・レクサスの取り組みが公表されました。
その際佐藤氏は「足元でのラインナップを拡充するとともに2026年を目標に、電池やプラットフォーム、クルマのつくり方など、すべてをBEV最適で考えた『次世代のBEV』をレクサスブランドで開発してまいります」と述べており、その電動化を加速させるレクサスを率いることになったのがRZのチーフエンジニアを務める渡辺剛プレジデントです。
これまでレクサス「LC」「LS」の商品開発やGA-Lプラットフォームの開発に携わった他、2017年よりUX300eのチーフエンジニアを務め、レクサスの電動化を推進してきました。
そんな渡辺剛プレジデントは、前述の社長交代が発表された翌日に豊田章男氏に呼ばれレクサスプレジデントの内示を受けたといい、その時の様子を次のように話しています。
「豊田章男社長から『プレジデントをやってくれないか』ということで内示をいただきました。その時に豊田章男社長から言われたのはたったひとつだけです。
『みんなを笑顔にするクルマをとにかく作ってくれ』という、本当にそれだけでした。しかし、やることを明確に指示していただけたので良かったなという風に思ってます。
次の時代の電動化ということで、BEVに限らずどんな電動化の方向性があるのか、実はこの5年くらいはいろんな準備を進めてきました。
その中でしっかりと電動車のモデルを展開していくというテーマにおいて、用途が比較的に都市部などに集中したコンパクトSUV『UX』のパワーユニットをコンバージョンすることにしました。
一方のRZは、次世代を担うBEV専用モデルを通じて、レクサスがどんなブランドになることを目指していくのかという世界観を示しています。
そんなRZでは、乗って安心感があり、触れて心地よく、操って楽しい、そんなレクサスらしいBEVの実現を目指したいという想いで開発を進めてきました」
レクサスのプレジデントに就任した渡辺剛氏
※ ※ ※
このような流れで誕生したRZとはどのようなモデルなのでしょうか。まず、ユーザーが気になる部分は同じプラットフォーム「e-TNGA」を使うトヨタ「bZ4X」とスバル「ソルテラ」との違いかもしれません。
基本的な開発体制は、まずbZ4Xとソルテラで両社のエンジニアが所属するZEVファクトリーにて開発が進められ、RZはレクサスインターナショナルにてデザインや各種性能、走りの味付けがなされています。
パワーユニットはbZ4Xとソルテラが2WD/AWDを設定するのに対して、RZは前後独立モーターの「ツインモーターAWD」のみとなり、同じAWDでもbZ4Xとソルテラ(フロント80kW/リア80kW)と比べてRZ(フロント150kW/リア80kW)と高出力化され、バッテリーはすべて71.4kWhとなっており、グレードや仕様により異なりますが一充電走行距離は500kmから550kmとなっています。
またRZの特徴としては、前述のRXにも採用された電動化技術を活用する四輪駆動力システム「DIRECT4」とドライバーの意図に忠実なステアリング制御が可能となる「ステアバイワイヤシステム」を組み合わせた仕様を設定していることです。
■クルマ側の制御だけではない…ドライバーがもっと走りたくなる、「ワォ」と言える施策とは
このようにレクサス初のBEV専用モデルとなるRZですが、2023年2月中旬にクローズドサーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)にて試乗することが出来ました。
試乗の内容は、ノーマルステアリング(円形)でサーキット試乗、DIRECT4のオンオフ体験、ステアバイワイヤシステムの低速&高速試乗という流れです。
まずは、ノーマルステアリング(円形)でRZの素性を体感するためにサーキットを3周。1周目はノーマルモードで80km/hを目安に、2周目はスポーツモードで100km/hを目安にして走ります。
ドライブモードの切り替えは、タッチパネル上の「車両→ドライブモード」を選択するか、この画面であればステアリングスイッチで変えられます。
まず、ゼロ発進加速ですが、bZ4X/ソルテラよりも滑らかかつ力強く前に進んでいき、こんなに気持ち良い加速をするのかと驚きます。
2023年1月に同じ袖ヶ浦フォレストレースウェイにてトヨタ新型「プリウス」を試乗していますが、その2リッター(E-Four)とはまた違った心地よさを感じました。
アクセルペダルを踏み込んでいくとBEVなのに独特のエンジン音が車内に聞こえてきます。これはRZから発せられる音を組み合わせて速度域に応じた音をスピーカーから流しているといい、渡辺剛プレジデントは次のように続けます。
「クルマの運転において、五感っていうものがすごく大事だと思ってます。その五感の中の聴覚は、BEV時代であっても、クルマを運転するためにやっぱり必要な機能だと考えます。
そこにクルマとの対話だったり、クルマが今どういう状況なのかが音でちゃんと認識をすることが大切なのです。
元々RZが走っている音をサンプリングしたデータをそのシーンに応じて必要なサウンドにチューニングをしてスピーカーから流しています。
なので、ノーマルモードとスポーツモードでも違うほか、低速からアクセルを踏み込んだところは高トルクを出して力強く発進していくことを聴覚的にも伝えるため、電気系の音を比較的多めに流しています」
車両重量2トン超えとは思えないほどピタッと曲がっていく部分でDIRECT4の凄さを実感
また、速度域の高い中でのコーナリングでも、車両重量2トン超えとは思えないほどピタッと曲がっていく部分でDIRECT4の凄さを実感します。
DIRECT4とは、高トルク/高レスポンスが特徴となる高出力の「e-Axle(インバータ/ギア/モーターを組み合わせたもの)」を搭載することに加えて、地上最速の動物といわれるチーターのブレない動きからヒントを得た「レクサスらしい走り」によって、車両姿勢(目線)の安定化と荷重移動に応じた駆動力配分をする制御を指します。ブレずにピタッと駆け抜ける様子はまさに自分の意のままに操れる感覚です。
またタイトコーナーからの上り坂といった2トンには辛い状況においても、前後独立モーター(フロント150kW/リア80kW)のお陰で軽やかにそして力強く登っていく感覚で、まるでV8エンジンの大排気量モデルにでも乗っているような印象すら受けました。
次にDIRECT4のオンオフ体験では、今回特別にオン/オフのスイッチが付けられたモデルにて試乗を行います。基本的に市販車のRZは常にオンの状態ですが、オフにすることで前後の駆動配分を50:50にして走ることが出来ます。
50:50の場合は、前後が固定されような感覚で、自分が荷重移動をしなければスムーズなコーナリングは出来ません。
しかしオンにすればすべて自動的に適切な駆動配分を行うため、自分の運転が上手くなった気持ちになるのがわかります。
市販車においてオンオフが出来ると、ユーザーにもDIRECT4の凄さがより分かりやすいのではないかと思えますが、そのあたりは「最善最適のシステムを提供する」というレクサスの考えからオンオフは出来ないようになっているといいます。
新型RZ用のステアバイワイヤシステムでは、ステアリングの操舵角を今回のプロトタイプでは「+-150度」に設定している
最後に操縦桿のような造形をしたステアリングのステアバイワイヤシステムを体感します。
まずは低速でのスラロームや段差越え、駐車シーンなどを体感する特設コースですが、走り出しからどこまで曲がるのかという不安によって何回も操舵修正をするほどおっかなびっくりでしたが、2周目では慣れてきたため、少し速度を上げ滑らかに走り切ることが出来ました。
新型RZ用のステアバイワイヤシステムでは、ステアリングの操舵角を今回のプロトタイプでは「+-150度」に設定しています。
これにより、従来の円形ステアリングでは1回転回さなければ曲がれないコーナーでも、ステアリングを少し傾けるだけでクリア出来ます。単に先進性を表現している訳ではなく、操作量が少なくなることで、疲労軽減にも繋がるといいます。
サーキットでの試乗では、まるでゴーカートを運転しているようなクイックな操作性となり、ステアリング操作の遅れを気にせずに走ることが可能です。
また開発陣が意図していなかったという部分では、操縦桿のような形状のため円形ステアリングの上部だけや下部だけを持つような操作は出来ないため、正しい持ち方とされる「9時10分」や「10時10分」が基本となるなど、副産物的なメリットもあるように感じられました。
※ ※ ※
このように様々な面で新鮮な驚きを得られる次世代モデルのRZですが、レクサスブランドのけん引やBEV専用としての第一弾という以外に、カーライフの部分でも新たな取り組みが行われるといいます。
今回RZの発売から「Lexus Electrified Program」というオーナー専用のサービスを初めていくとし、BEVにまつわる不安を解消するサービスや、レクサスのBEVならではとなる独自の体験価値の提供を行っていくというプログラムを販売店などと協力しながら展開していくようです。
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