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日本では売ってない「日本車」!? 国内導入の可能性はある? ワイルドすぎるスバル「ウィルダネス」とは

くるまのニュース / 2023年4月8日 6時10分

シンメトリカルAWDや水平対向エンジンなど強い個性で独自の存在感を示す「スバル」ですが、米国ではオフロード仕様「ウィルダネス」が独自設定されています。2023年4月には第3弾モデルとなる新型「クロストック ウィルダネス」が世界初公開されるなか、日本への導入は実現するのでしょうか。

■北米だけで導入されるオフロード特化型仕様「ウィルダネス」

 スバルは米国現地時間の2023年4月5日、ニューヨーク インターナショナルオートショーで新型「クロストック ウィルダネス」を世界初公開しました。
 
 このニュースを知った日本のスバルファンの多くは「またか…」というあきらめにも近い感情と共に、「日本導入を真剣に考えて欲しい!」という期待値がさらに高まっているのではないでしょうか。

 ウィルダネスは、スバルが主に北米市場で展開するサブブランドです。

 現行「アウトバック」で初採用され、その後「フォレスター」にも追加。今回のクロストレックで第三弾となります。

 アウトバック ウィルダネスが登場した時点では、北米向け特別仕様車、または北米向けのグレードのひとつという見方をした日本のユーザーが少なくなかったでしょう。

 通常のアウトバックに対し、ウィルダネス独自の設定項目は多岐にわたります。

 まず外観では、オフローダーっぽさを強調するボディデコレーションが車体全体に施され、室内も同様にシートを含めた各所がオリジナルの装飾となるほか、アウトドアでの使用にも耐えられるタフな仕様となっています。

 ウィルダネスは内外装の装飾に留まらず、走行面でも大きく手が入ります。

 オフロード重視でオンロード走行も十分に可能なタイヤの採用に加え、足回りは最低地上高を上げています。さらにファイナルギア比や四駆制御ソフトウエアの変更など、数々のチューニングが施されました。

 こうした、アフターマーケットメーカーが手がけるようなボディパーツや走り系のライトチューニングを、スバルは生産ラインで実現したのです。

 価格も比較的リーズナブルです。

 アメリカ現地でのアウトバックは、「ベース」が2万8395ドル(1ドル131円換算で372万円)ですが、「プレミアム」、「Onyxエディション」、「リミテッド」などウィルダネスを含みグレードは9つもあり、ウィルダネスは3万8445ドル(504万円)とグレード別で見ると「中の上」という価格設定になっています。

 そのうえで、今回の登場したクロストレックにより、ウィルダネスは「単なるグレード」ではなく、北米向けサブブランドとしての立ち位置を確立したといえるでしょう。

 では、スバルはなぜ、北米向けにウィルダネスを構築したのでしょうか。

 筆者(桃田健史)がこれまでスバル本社関係者に取材してきたところでは、多くの人が「ウィルダネスはSOAが主導して企画されたものだ」と言い切ります。

 SOAとは、スバルの北米法人であるスバル・オブ・アメリカのことです。

 北米での事業について、市場の実態を身近で感じることができるSOAが、商品企画に対し強い発言力を持つのは当然として、そもそも現在スバルの屋台骨を支えているのがSOAという現実があるため、「SOAの意向」がスバル本社でも最重要視されることになります。

 直近の決算である2022年3月期のデータを見ると、スバルの売上収益2兆7445億円のうち、71%が北米事業によるものです。

 日本は24%であり、アメリカの1/3にとどまります。つまりアメリカ重視の姿勢が、スバルの経営実態だと筆者は考えます。

 そんなスバルにとっての最重要地域であるアメリカはSUV発祥の地としても知られます。

 現状では、乗用を主体とするピックアップトラックとSUVで構成される「ライトトラック」部門が、アメリカ市場全体の7割以上を占めています。

米国ならではの雄大な自然をひたすら走る冒険旅のスタイル「オーバーランド」の世界観を具現化したスバル「ウィルダネス」[写真は新型「クロストック ウィルダネス」]米国ならではの雄大な自然をひたすら走る冒険旅のスタイル「オーバーランド」の世界観を具現化したスバル「ウィルダネス」[写真は新型「クロストック ウィルダネス」]

 ここで時代を少しだけ振り返ってみます。

 スバル本社は2000年代中盤から後半にかけて、思い切った「アメリカシフト」を念頭に置いた商品開発戦略に舵を切りました。

 その結果2010年代に入り、欧米メーカーが手薄だったアメリカの中小型SUVセグメントで、スバルはシェアを拡大していきます。

 ただし、トヨタ・ホンダ・日産という日系ビッグ3や、フォード・GM・ステランティス(旧クライスラー)という米国系ビッグ3、さらに欧州や韓国メーカー、そしてテスラもSUV「モデルY」を投入するなど、中小型セグメントでセダンからSUVへのシフトが加速化。スバルにとってライバル車が多数存在する時代に突入しました。

 そうしたなかで、2010年代後半頃からアメリカのSUV市場で顕著になってきたのが、「オーバーランド」と呼ばれる冒険心をあおるようなオフロードのカテゴリーです。

 米国の広大な砂漠や森林といった道なき道をひたすら長距離移動する旅にも対応可能な、タフな仕様が求められます。

 ウィルダネスはまさに、スバルとしてオーバーランドの世界感を具現化したものだといえるでしょう。

※ ※ ※

 もうひとつの要素として、アメリカと日本における「スバル商品ラインアップでの違い」があります。

 それは「STI(スバルテクニカインターナショナル)」です。

 STI本社幹部は「アメリカではSTIをサブブランドとしてとらえず、ひとつのグレードというイメージが強いです」と指摘します。

 一方でひとつのグレードではなく、アメリカでのサブブランドに成長したウィルダネスは、STIと正反対の状況にあるといえるでしょう。

 もともとアメリカにおけるSTIブランド展開は、これまであまり上手く動いてきませんでした。

 これは、STIブランド構築の基盤となったWRC(世界ラリー選手権)に対するアメリカのユーザーの認知度が、日欧に比べ高くないことが要因だとされています。

 そのためSTI本社は2019年、スポーツセダン「WRX STI」をベースにエンジンや足回りを専用開発したチューンドモデル「S209」を北米専用として導入するなど、アメリカにおけるSTIブランド再構築を目指してきました。

 一方SOAとしては、量産各モデルに対して、日本ほどはユーザーの認知度が高くないSTIグレードを設定せず、アメリカ独自のサブブランドであるウィルダネスを拡充させているというわけです。

 こうしたアメリカでのウィルダネスの実状から考えると、スバル本社としては、現段階で日本にウィルダネスを導入するのは、日本ユーザーのブランドイメージの分散につながりかねず、時期尚早と考えているのかもしれません。

 ただし近年のアウトドアブームにともなう本格派志向の盛り上がりとともに、日本国内でユーザーや販売店から「どうしてもウィルダネスが欲しい」という声がさらに高まれば、状況は変わるかもしれません。

 例えば台数限定の特別仕様車として登場する可能性も残されていると筆者は見ています。

 今後のスバルの動向を注意深くウォッチしていきたいと思います。

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