トラック・物流業界の「2024年問題」とは何か ドライバーから見た問題点… 解決策はあるのか
くるまのニュース / 2023年4月13日 7時10分
昨今トラック・運送業界において「2024年問題」というものが話題となっています。報道の多くが法整備の側面や物流業界の内部事情の視点から語られるものが多いですが、1番影響を受けるのはトラックを運転するドライバーです。そうしたドライバー達はどのように「2024年問題」を考えているのでしょうか。
■トラック・運送業界が直面する「2024年問題」とは?
「2024年問題」というものが昨今トラック・運送業界において話題となっています。
報道の多くが法整備の側面や物流業界の内部事情の視点から語られるものが多いですが、1番影響を受けるのはトラックを運転するドライバーです。
そうしたドライバー達はどのように「2024年問題」を考えているのでしょうか。
2024年4月4日、UDトラックスは自社の大型トラック「クオン GW 6×4」の新型モデル発表会を開催しました。
その会場では、自社トラックの紹介だけでなく、それらを使うトラック業界に関するトークセッションも同時に実施。
そこで話されたテーマは、トラック・物流業界において話題となっている「2024年問題」というものですが、実際にどのような問題が懸念されているのでしょうか。
2024年4月1日以降に、働き方改革関連法によってトラックドライバーの時間外労働の上限規制が設けられます。
それによってドライバーの就労時間の削減と、それによる賃金の減少と働き手の不足が発生すると予想されています。
そして、ドライバーの不足によってトラックでの物流を利用しているあらゆる業界が影響を受ける可能性もあり、これら事象の総称を「2024年問題」と呼んでいます。
現在ではテレビや新聞などのメディアでも取り上げられる事が多くなり、ある種の社会問題といっても過言ではないでしょう。
2024年問題の報道やそれに伴った問題提起に関しては、法整備の側面や物流業界の内部事情の視点から語られるものが多い印象があります。
しかし、言うまでも無くこの問題で一番影響を受けるのは、トラックを運転するドライバー達であり、その人たちはどのようにこの「2024年問題」を考えているのでしょうか。
今回、UDトラックスでは、直接的に影響を受けるドライバーへの聞き取り調査を実施しました。
対象は全国の物流会社に所属するドライバー400名で、調査はインターネットを通じて行われたそうです。
本問題に対する現場のナマの意見と意識を集約した調査結果は非常に興味深い内容だといえます。
また、トークセッションではそれぞれ異なるポジションとアプローチで物流業界に関わっている有識者が登壇し、調査結果を元に自身の経験談や意見を提言していました。
2024年問題では何が懸念されているのか?
まず2024年問題についてドライバー達がどのように感じているか、UDトラックスが行った調査はどのようなものだったのでしょうか。
最初に現状認識として「運送業界の2024年問題という言葉が何を指すのか知っていますか」という大前提的な質問については、回答者の83.8%が「知っている」、残りの16.3%が「知らない」と回答。
これは2024年問題をドライバーの8割以上が認識しているということになりますが、アンケートのコメントによればその人々の考えはすべてが同じではないようです。
「知っていて、内容を理解している」という人もいれば、「聞いたことはあるが、内容までは理解していない」と、この問題についてのドライバーの受け方は様々だといいます。
2024年問題の影響として「あなたのお勤め先での残業規制に対する捉え方について」という具体例を上げた質問では47.1%%がポジティブ、53%がネガティブとなっており、就労時間の減少は半数以上のドライバーが否定的に考えていることが分かります。
ネガティブに捕えているドライバーに対して、懸念する理由を複数回答で聞いたところ、そのトップ3は1位が「給与が下がる(75.5%)」、2位が「運送業界の売上・利益減少(40.1%)」、3位が「無理なスケジュールを要求されること(35.8%)」となっており、労働時間の削減によるしわ寄せが、自身や会社への金銭的な影響になると考えているようです。
※ ※ ※
もともと2024年問題の切掛けとなったのは「働き方改革関連法(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」の成立でしたが、その目的は労働環境の改善といった働く人々へのメリットとなるものでした。
しかし、このアンケート結果を見る限りでは、運送業界のドライバーたちの多くは、これを好意的には捕えておらず、法規制による就労時間の減少を自身にはデメリットとして考えているようです。
自身もドライバーとして働いた経験のある橋本氏は「トラックドライバーは歩合制で働いている方が多く、必然的に働く時間が短くなれば給料も減ってしまうので、(2024年問題を)ポジティブに捕らえられないのでしょう」とコメント。
また、収入の減少に備えて副業を考えているドライバーも多く、トークショーに登壇したジャーナリスト・橋本愛喜氏の元に寄せられた相談によると「運転代行やUber eatsといった食品デリバリーサービス、さらにYouTuberというものまであった」といいます。
■待ち時間がストレス? 荷待ち時間の改善といった業界として取り組むべき問題点は?
しかし、法改正に反対や不安を感じつつも、ドライバーの多くは運送業界の現状に満足しているわけではないようです。
「今の業務を効率化させる必要があると思いますか。」という質問に対しては、78.6%が「効率化の必要あり」と回答(必要無しは21.6%)。
必要な対策としては「運送業界への新規参入者(人手)を増やす」が60.0%、「荷待ちの時間を減らす」が56.8%、「トラックの稼働率を上げる」が27.8%、という回答が上位を占めていました。
また、ここで注目すべきなのは2位の「荷待ちの時間を減らす」で、これはトラックに貨物を積み込む時に荷主側の都合で待たされる待機状態の事を指します。
ドライバーにとっては運行が中断されるロスタイムでしかなく、アンケートによればその平均待機時間は2.1時間で、全体の74.5%がこれをストレスに感じているそうです。
今回のアンケートで「待ち時間」がストレスだということが判明している
このようなにドライバーに負担を強いられる状態が日常化していることについては、そもそも物流業界が荷主優先で厳しい環境にあったことが指摘されており、トークショーに登壇したNX総合研究所常務取締役の大島弘明氏は次のように述べています。
「業界は荷主さんとの関係からすると非常に厳しい立場を強いられてきたと言えます。
1990年の規制緩和によって運送事業者は増えたものの貨物の量はそれほど増えていません。
競争が激しくなった中で、お客様を大事にしようということから、このような環境が長く続いてしまい、労働条件も上げることもできずに今に至ったということになります」
今後の対策として「この先は法規制だけでなく、トラックを新たに確保するという視点においても、ドライバーの労働条件の改善が非常に重要になっていくと思っています」と、大島氏は今後の対策についてもコメントしていました。
長距離ドライバーの場合、このようなキャビンのスペースで寝泊まりすることもある
※ ※ ※
今回のトークセッションは2024年問題について、現場レベルの意見や事象とフォーカスすることになりました。
この問題の解決については、法整備や業界としての対応が必要ですが、その対策の根本には「そこで働くドライバー目線」の意見も重要だといえます。
また同じく登壇した交通コメンテーターの西村直人氏は西村氏も「2024年問題と言われていますが、これはこれまで問題になっていたものを解決しましょうというスタートラインだと思います。問題が起きるのではなく解決をするタイミングなのだと」とコメント。
来年に迫った2024年問題が物流業界の問題解決だけでなく、個々のドライバーの労働環境の改善にも繋がっていくことを期待したいところです。
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