通行するだけで「4万円」なぜ? 突如として現る「この先、私有地」看板に困惑… 茨城「シーサイド道路」のトラブルはどうなった?
くるまのニュース / 2023年4月25日 9時10分
2006年から一部区間の通行止めが続いている茨城県神栖市の市道・通称「シーサイド道路」。これまで様々なトラブルが起きていましたが、2023年3月末に問題解決に向けた道筋が見えてきたといいます。では、現状はどのような状況なのでしょうか。
■日本に通行料4万円の道路があったって本当?
茨城県神栖市には、一部が私有地であるために2006年から通行止めが続いている市道・通称「シーサイド道路」があります。
2023年3月末にようやく問題解決に向けた道筋が見えてきたところですが、一体どのような内容なのでしょうか。
茨城県神栖市の海岸沿いを走る市道・通称「シーサイド道路」は、道路に私有地が含まれていることが原因で2006年から一部区間で通行止めが続いていました。
通行止めは神栖市の鹿島港方面から波崎漁港方面へ向かう途中の市道でおこなわれており、通行止め区間を通行しようとすると私有地の地権者から4万円もの通行料を請求されるという驚きの道路です。
通行止め区間付近には神栖市が設置した進入禁止の看板が数多く設置されているほか、地権者の男性が設置した「私有地につき通行止め 無断進入した場合は四万円を徴収します」、「支払いができない場合は車を預かります」などと記載された看板があります。
この場所の通行を巡っては通行しようとする人と地権者との間でたびたびトラブルが発生していました。
2022年11月には、警告看板を無視して私有地に入った会社役員の男性が地権者から通行料4万円を請求されたものの支払いを拒否し、口論の末に地権者の男性からクルマで衝突されて全治2か月の重傷を負うという事件も発生しています。
このようなこともあり、地元住民をはじめ多くの人はトラブル回避のため、神栖市が推奨する迂回路を利用しています。
実際に神栖市が2019年6月にホームページで掲載した「シーサイド道路の迂回案内」では「波崎RDFセンター付近から北に約5キロメートルの間の一部が通行止めです。迂回路をご利用ください」という文章と共に迂回図を掲載。
さらに周辺にあるキャンプ場のホームページでは「当キャンプ場北側の、海沿いの道路は当キャンプ場周辺が私有地のため一部通行止めの場所があります。誤って進入してしまった場合罰金を徴収される恐れがありますのでご注意の上走行してください」という注意書きまで掲載される状態となっていました。
この問題は市道と私有地が混在したことが原因で発生しましたが、なぜこのような事態になったのでしょうか。
そもそもシーサイド道路は1970年、近くにある鹿島臨海工業地帯へのアクセス道路として開通しました。
その後1994年に男性が沿道の土地を購入して測量した結果、シーサイド道路の一部がその土地にかかっていることが判明します。
これは神栖市になる前の旧波崎町がシーサイド道路を建設する際、建設地の中に私有地が含まれることを確認していなかったためと言われています。
1996年には土地購入者の男性が旧波崎町を相手取り、土地の境界線確定を求めて裁判を起こした結果、2004年にはシーサイド道路上の私有地が男性のものと認定されました。
裁判による判決後も旧波崎町や、市町村合併後の神栖市が地権者の男性と私有地の買い取りなどの話し合いを継続しますが、提示金額の条件が合わずに交渉は決裂。
そして2006年10月には男性が強硬手段として私有地付近の道路上にバリケードを設置し、通行を制限するようになったのです。
■バリケード&通行料設定…当初は500円が…気づけば4万円に、なぜ?
バリケードが設置されてからは通行料を支払って通行しなければいけない状況となり、通行料金も当初500円だったものが1万、2万・・・と増加し、最終的に4万円まで跳ね上がりました。
この事態の進展につながったのは2020年に地権者の男性が死去し、2022年2月に男性の長男が私有地を相続したことです。
神栖市は男性の長男と交渉を開始し、2023年3月に市が和解金1900万円と私有地の売買代金のほか、長男が所有する建物の移転補償費用などを支払い、市道部分とその周辺の土地を取得することで合意しました。
ただしこれで万事解決というわけではなく、通行止めの区間には別の地権者が管理する共有地も存在しており、神栖市は今後他の地権者とも交渉を行う方針を明らかにしています。
神栖市役所のホームページに掲載されている「シーサイド道路の迂回案内」(画像引用:神栖市役所ホームページより)
このシーサイド道路の事例のように、地権者が土地の測量をおこなった結果、私有地の一部に公道がかかっていたという事例は全国で発生しています。
昔は正確に測量せず、不動産登記が確実に行われていないこともあったため、各地で同様の事態が起きているものとみられます。
私有地の上に公道が通っているということで地権者が道路の使用料を自治体に請求するケースもありますが、道路法第4条では「道路を構成する敷地、支壁その他の物件については、私権を行使することができない。(条文を一部抜粋)」と規定。
もともとの土地の所有者から使用許可を得ている、登記はされていないものの私有地が寄付されているなどで適法に道路の使用が開始されていれば、土地の所有者であっても使用料や占拠に関する損害賠償は認められないことが多くなっています。
さらには公道にかかる私有地の部分を買い取りではなく、自治体から寄付するよう求められることもあります。
そういった意味では、シーサイド道路の事例は地権者の主張が認められた珍しいケースといえるかもしれません。
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