なぜ「巨大すぎる“乗用車”」日本で乗る? 最近は“意外”と乗りやすい!? アメリカンな“ラージカー”オーナーの心理とは
くるまのニュース / 2023年5月10日 20時10分
道路を走っていると、たまに「巨大な乗用車」を目撃することがあるでしょう。おおよそ日本の交通事情に合っているとは思えないこれらのクルマに“日本で乗る”理由とは何なのでしょうか。
■アメリカンフルサイズ…巨大すぎる乗用車なぜ乗る?
クルマのボディサイズで「アメリカンフルサイズ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。アメリカンフルサイズは、アメリカ合衆国内の自動車業界のカテゴライズであり、「ミッドサイズ」に対してのクラス分けです。
1970年代にできた言葉ですが、現在では「ラージカー」という呼び方が一般的になっています。では、どんなクルマがフルサイズと言えるのかという定義ですが、実は明確になっているわけではありません。
20世紀には全長5m以上、エンジン排気量が5L以上というザックリな定義がありました。しかし、現在のEPA(アメリカ環境保護局)が定めたラージカーの定義は、セダンは車内空間が120立方フィート以上、ステーションワゴンは160立方フィート以上のクルマとされています。昨今では北米市場におけるフルサイズのダウンサイジング化が進んでおり、全長5mを切る車種でも、EPAがラージカーと認定しているようです。
すでにアメリカメーカーのフルサイズセダンは皆無となりましたが、フルサイズのピックアップトラックやSUVは、相変わらず北米で人気があるようです。
では日本はというと、そのようなクルマは“並行輸入車”市場で人気を博しています。
トヨタ「タンドラ」などのアメリカンフルサイズを多く扱っている『アップルさいたま岩槻インター店』に聞いたところ、店に入ってくるクルマはすぐに売約となるんだとか。日本国内では少々持て余してしまう感があるアメリカンフルサイズですが、購入するユーザーはどのようなところに魅力を感じるでしょうか。
「やはり、日本にはない大きさと迫力ですね。タンドラなどを検討するお客様の多くは、国産車だとトヨタのアルファード/ヴェルファイアを考えていた人が多いです。しかし、いくら“アルベル”が大きいとは言え、アメリカンフルサイズには及びません。それに北米専売モデルは、日本で見かけることがあまりないので、優越感にも浸れるというわけです」(同店・原田彰人店長)
原田氏によれば、最近のアメリカンフルサイズのクルマは、一昔前のように“燃費がめちゃくちゃ悪い”というわけではなく、アルファード/ヴェルファイアとほぼ同等の燃費になったことも、日本のユーザーが安心して買える要因になっているといいます。
同じく、アメリカンフルサイズのピックアップトラック、SUVを扱っている『PUTデポ』の金原崇雄社長は、優れた実用性を理由に挙げます。
「最近ではボートやオートバイ用トレーラー、キャンピングトレーラーを牽引する人が多いですが、そういったユーザーにしてみれば、日本国内で売られているクルマではパワーやトーインキャパシティが十分ではないわけです。
用途によっては全長20フィートを超えるトレーラーを牽(ひ)くわけで、そんなトレーラーだとランドクルーザー300系でも不安があるわけで。だから、ウチにアメリカンフルサイズを買いに来られる方は、ほとんどがトレーラーで何かを牽くという目的があることがほとんどですね」
アメリカンフルサイズの魅力は他にもあります。アメリカという広大な土地を長距離走ることを想定して造られているので、ピックアップトラックと言えども車内が豪華で快適です。後部座席も広く、ゆったりと移動時間を過ごすことができます。
またエンジンパワーに余裕があるため、地形の変化に合わせて頻繁にアクセルを開閉する必要もありません。乗り味はと言えば、もちろん北米向けらしく直進安定性に優れ、さらに昨今のモデルはスポーティなサスペンションが装備されているのでワインディングロードでもしっかりと走ってくれます。車体は大きいですが、意外と前輪の舵角が大きいので、そこまで日本の道路で気を遣うこともありません。
何より、荷台や車内荷室が広く、乗員が4人乗っていても、オートバイや水上バイクなどを軽々と積むことができる実用性は、国内で正規販売されるトヨタ「ハイラックス」にはない部分です。
ちなみに両店舗にオーナー像を聞いたところ、1000万円近くする車両価格もあって、購入者のほとんどが富裕層なんだとか。駐車スペースの確保にもコストがかかるため、さすがにオーナーに庶民はあまりいないというのが実情。
都内で大型車が駐められるタワマンの住人や、地方の広い駐車スペースが付いた別荘の所有者だといいます。でも、そんな特別感こそがアメリカンフルサイズの魅力になっていることは間違いなさそうです。
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