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物流の「2024年問題」って何? 一般消費者も無関係じゃない! ドライバーの働き方改革がもたらす影響とは

くるまのニュース / 2023年5月12日 20時10分

物流業界において「2024年問題」が話題となっています。2024年にトラックドライバーの働き方改革の法律が施行されるのですが、これによってどのような影響が予想されるのでしょうか。

■トラック・運送業界が直面する「2024年問題」

 最近、「2024年問題」という物流に関する大きな社会問題が、インターネット、テレビ、新聞など各種メディアで取り上げられる機会が増えてきています。
 
 とはいえ、乗用車のユーザーなどの一般消費者が物流について深く考えることはあまりないかもしれません。

 そのため、2024年問題といわれても、自分の生活と具体的にどう関わっているのかが分かりにくく、なんとなくピンと来ない人が少なくないと思います。

 しかし、2024年問題は物流業界に直接携わる人たちに関する短期的な課題ではなく、もっと根が深い社会全体の長期的な課題だといえます。

 物流の変革の必要性について、順を追って見ていきましょう。

 まず、大きな動きとしては、国が「2024年問題対策への本気度」を示したことが挙げられます。

 2023年3月31日、岸田総理が議長を務める、第1回「我が国の物流の革新に関する閣僚会議」が開催されました。

 そのなかで岸田総理は「物流は国民生活や経済を支える社会インフラですが、担い手不足、カーボンニュートラルへの対応などさまざまな課題に直面している」と切り出しました。

 そのうえで、トラックドライバーの働き方改革の法律が適用されるまであと1年となること、それによってドラックドライバーひとり当たりの労働時間が短くなることを指摘しました。

 仮に、そうした社会変化に対して国や民間企業が何も対策を打たないと、物流が停滞しかねない、「いわゆる2024年問題に直面する」という説明です。

 岸田総理がいう、働き方改革の法律とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。

 これは、2018年6月に改正された「働き方改革関連法」に基づき、自動車の運転業務の時間外労働で、「労働基準法」で定める上限が、これまでの「なし」から2024年4月1日以降に「年960時間」と規制されることを指します。

 また、労働時間と休憩時間を合わせた拘束時間についても、「貨物自動車運送事業法」での改善基準告示という形で、1日あたり、また1か月あたりで、これまでよりも少なくなります。

 例えば、1日あたりでは、これまでが原則13時間以内・最大16時間以内(かつ15時間超は1週間に2回以内)だったものが、原則13時間以内・最大15時間以内(かつ14時間超は1週間に2回以内、また宿泊を伴う長距離運行は週2回まで16時間)に制限されるのです。

 こうした各種制限による対策を講じない場合、社会に大きな影響が社会に及ぶと予測されています。

 例えば、制限が行われた直後の2024年度には、輸送能力は約14%不足し、そのままの状態が続くと2030年度にはなんと約34%不足するというのです。

 国が2019年度データから推計したところ、不足する品目別では、第一に農産品や水産品の出荷団体が最も大きく、次いで紙・パルプ製造業、建設業・建材製造業、飲料・食料品製造業、卸売・小売り・倉庫業、自動車・電気・機械・精密・金属などの製造業、そして化学製品製造業と続きます。

 地域別で、中国、九州、関東、中部、近畿、北海道、北陸信越、四国、そして東北の順になるとされています。

■物流業界の変革に向けた対策とは?

 そもそも、トラックドライバーに対する働き方改革が実施される背景には、トラックドライバーの就業状況がとても厳しいという現実があります。

 全産業と比較すると、トラックドライバーの年間労働時間は2112時間で約2割長く、年間所得額は446万円と約1割低く、さらに有効求人場利率は全産業が1.1倍なのに対して2.0倍と、全産業と乖離している状況です。

高速PAに駐車するトラック高速PAに駐車するトラック

 こうした厳しい現実があるにもかかわらず、2024年問題に対して具体的な取組をすでに実施している運送関連の事業者は約5割に留まっているのが物流業界の実状です。

 そのため、国としては、2024年問題に対する認知度をこれから一気に高めると同時に、具体的な対策を短期間に導入することになったのです。

 2024年問題は物流業界の体質的な課題の一部が表面化したにすぎず、長期的な視点で物流業界の抜本的な変革が必要だということでしょう。

 では、物流業界の変革に向けた対策とはどういったことなのでしょうか。

 国の考えでは、荷主・物流事業者間の商慣習の見直し、物流の標準化、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)といった最新技術の活用、そして荷主企業が消費者の行動変容を促す仕組みが必要だとしています。

 このうち、DXについては、トヨタ、いすゞ、ダイハツ、スズキなどによるCJPT(コマーシャルジャパンパートナーシップ)がすでに表明しているような、車両情報や配送情報などをデータ基盤で共有するシステムが進んでいくでしょう。

 ここに、運送事業者の荷物管理システムが融合することが考えられますし、また物流で使用する様々な荷台や機材などの標準化も進むことになるでしょう。

 また、高速道路による都市間輸送では、レベル4自動運転トラックの活用が考えられます。経済産業省と国土交通省が2024年度から、新東名高速道路で夜間に自動運転車専用レーンを設定した実証試験を始め、早期の実用化を目指します。

 そのほか、高速道路のIC近くに、自動運転トラックと近距離輸送用トラックとの結節拠点を整備する計画も、運送事業者と道路事業者が連携して実証をおこなう運びとなっています。

 一方で、変革へのハードルがあるのが、業界の商慣習の見直しでしょう。商慣習にはさまざまなことがありますが、そのなかには明文化されていないものが少なくないと思われます。

 ここに、データによるファクトを重視した変革の議論を持ち込み、商慣習を抜本的かつ早期に変える必要があるでしょう。

 そして、消費者の行動変容も、物流変革に向けた大きなポイントではないでしょうか。

 近年、多くの消費者にとって、スマホやパソコンでの電子商取引が普及し、その際の送料無料とか、当日配達といった、数年前には考えられなかったことが常識化しています。

 しかし、物流量の急速な増加と2024年問題を含めた物流変革に対して、消費者側が物流に対する過剰な要望をしないことも必要になってくるかもしれません。

 例えば、郵便では2021年10月2日から、普通扱いの郵便物・ゆうメールは土曜日配達を休止しました。また、ヤマト運輸は2023年6月1日から、一部区間で宅急便の届け日や指定時間帯を変更し、届け日がこれまで翌日だった一部区間で翌々日配送となることを発表しています。

 その理由について「社会や地域のお客様のニーズ・ご要望に今後も安定した品質でお応えし続けるため」としています。

 こうした物流事業者の事業方針の転換によって、消費者側が物流の変革に対する理解をするという点で、行動変容することが大事な時代になったのだと感じます。

 次世代の日本に向けて、さまざまな方法で物流変革が進むことを期待したいと思います。

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