なぜトヨタ「ランクル」人気はなぜ続く? タフな4WD「70再々販」の噂でに注目集まるが… 「ヨンマル・ナナマル」の魅力とは
くるまのニュース / 2023年5月5日 6時10分
トヨタ「ランドクルーザー」は長い歴史を持ちますが、とくに40系と70系は人気を誇ります。なぜいまでも注目され続けるのでしょうか。
■未だ色褪せぬランクル「ヨンマル」「ナナマル」の魅力とは?
巷はトヨタ「ランドクルーザー70系」再々販の噂で盛り上がっていますが、中古車市場を見てもその人気は衰えません。
それどころか、コンディションのいい車両はプレミアが付き、年代を問わず多くの人に支持されています。70系だけでなく、40系の人気も普遍的です。いわゆるクラシック・ランドクルーザーは、なぜこんなにユーザ?の心を掴むのでしょうか。
ランドクルーザーの前身である「トヨタ・ジープBJ型」が誕生したのは1951年のことでしたが、警察予備隊(のちの陸上自衛隊)採用されなかったことから、民生用に舵を取り直します。その時に付いたモデル名が「ランドクルーザー」。
この名前に付いた直後にモデルチェンジを行い、そして登場したのが「20系」。
このモデルはいかにも軍用車然としたスタイルでしたが、さらに5年後により民間での使いやすさを追求して登場したのが40系、通称:ヨンマルです。
当時の四輪駆動車としては快適性と高速性能がアピールポイントだったヨンマルは、日本よりも北米で高い評価を得たクルマで、トヨタの海外市場進出の足がかりを作った立役者でした。
ヨンマルの特徴は、何と言ってもそのスタイルです。
20系から踏襲したいかにも実用車らしいマスクを持ちながら、バンモデルは現在でも画期的な形状をしたラウンドボディとガラスをリアに採用。車両後方の死角を抑えて車内の開放感を得るための、トヨタの挑戦的な造形が見られました。
内装も、ライバルであった三菱「ジープ」や日産「パトロールG60」が軍用車の流れを感じさせる素っ気のないデザインであったのに対して、ヨンマルはエレガント。メーターは回転計を廃することで見やすくし、中央には各スイッチを整然と並べました。
また、オーディオスペースもインパネの中にきちんと設けるなど、単なる実用四輪駆動車とは一線を画しているという意思表示が、デザインの中に顕れていました。
さらに途中からは、タータンチェック柄のシートトリムを採用してファッション性も考慮するなど、実用性、信頼性だけではない商品力を身に付けていたのです。
ヨンマルの時代は24年間も続きましたが、1980年代に入ると排ガス規制も厳しくなり、また操縦安定性や乗り心地への要望も高まったことから、1984年に70系、いわゆるナナマルにバトンを渡します。しかし、このナナマルのデザインがまた秀逸でした。
ヨンマルのDNAを受け継いだと言えばそれまでですが、縦置きエンジンを収めるスペースの横に、別体でフェンダーを設置。
頭をシュッと絞ったように見えるシャープなデザインは、運転席からの前方視界を良好にする役割も持っていました。
インパネは、安全性を考慮したことから樹脂製パネルが全面に張られるようになりましたが、外観デザインに共通させたエッジの立った形状は、ヘビーディーティそのもの。
銃眼を思わせるルーバーとスクエアな形状の吹き出し口が、コクピットのような空間を演出していました。
またナナマルも、シートトリムに柄物のファブリックを採用して、全輪コイルリジッドサスに加えて、快適性をアピールしたのです。
ナナマルはデビュー20年で一旦は国内での販売を中止したものの、2014年には1年間の限定で再販。
さらに今年秋には再々販されるという情報で、ランクリストのみにならず、ヘビーデューティ4WDファンは沸き立っています。
■「ランクルBASE」店長が語る…ヨンマル・ナナマルの魅力とは
現代においては、快適性や安全性に寄せすぎていないヨンマルやナナマルのキャラクターは新鮮です。
現行型のスズキ「ジムニー」が登場した時も、加飾ぬきで機能のみを追求したデザインも旧モデルを知らないユーザーに大いに歓迎されました。
昨今のSUVが快適性や高級感を追求し過ぎる傾向にある中で、ヨンマルやナナマルが備えているのは「信頼できる相棒」「普遍的な道具感」といった価値です。
2023年1月、トヨタ車体が愛知県内にランドクルーザーのカスタムショップ「ランクルBASE」をオープンさせました。
店長を務める三浦正人主査によれば、来店者の4割がナナマルオーナー、そして3割がヨンマルオーナーで「とにかく、世間では語りきれないナナマル愛、ヨンマル愛を共有したくて仕方がない…というお客様ばかりですね(笑)」と語ります。
多くの人を惹きつける40系と70系の魅力を、三浦店長に聞いてみました。
「変えてはいけない価値観が明確だからなのではないでしょうか。
最新の300系もそのDNAを受け継いでいますが、ヨンマルとナナマルは原点。そこには自動運転機能とは180度ベクトルが違う操作性があるわけなんですが、そのアナログさが魅力となり、オーナーとの強い絆を築いていくんだと思います。
ヨンマルとナナマルはもはや普遍的な文化、伝統ですから、クルマと長く付き合いたいという人をグイッと引き寄せるんでしょうね」
ヨンマルやナナマルはアナログ感が魅力のひとつか?
ちなみに日本で再々販の情報があるナナマルは、ワゴンでATになるかもしれないとも。ユーザーフレンドリーになる一方で、ナナマルの価値が半減されないか心配です。
ヨンマルやナナマルを四半世紀以上販売してきた「PUTデポ」の金原崇雄社長は、その心配は皆無だと言います。
「もし情報のようなナナマルが発売されたら、ナナマルの世界の裾野が広がるだけです。
これまで縁の無かったユーザーはATやワゴンなら入りやすいでしょうし、従来のランクリストはさらにこれまでのモデルの良さを再確認すると思います。
また若い人でもNEWナナマルを見ることで、いままでのナナマルのほうがより道具感が強く魅力的と思う人も多いのではないでしょうか」
※ ※ ※
ドライブの負担を軽くしてくれる最新の安全装備は付いたクルマは魅力的ですが、日常でデジタルに支配されている私たちにとって、必ずしもリフレッシュしてくれる存在にはならないのも確かです。
時計もクォーツよりも手間がかかる機械式が魅力的なのと似て、ヨンマルやナナマルには人が入る余地が残るゆえに輝きがあるのかもしれません。
そしてヨンマルやナナマルの各部に感じられる、かつて日本が元気だった昭和という時代の香りがクルマ好きを惹きつけるのだと思います。ナナマル再々販、期待です。
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