なぜエンジン停止前に「ブオン!」!? 「空ぶかし」は“今”のクルマには必要ない? 本当に必要なクルマとは
くるまのニュース / 2023年5月18日 11時10分
エンジンを停止する前にアクセルを一度「ブオン!」と踏む「空ぶかし」。最近では、「空ぶかし」はされなくなったのでしょうか。反対になぜ以前は「空ぶかし」が必要だったのでしょうか。
■エンジン停止前に「ブオン!」何の意味がある?
エンジンを停止する前にアクセルを一度「ブオン!」と踏む、「空ぶかし」と呼ばれるこのアクション。最近ではそれを行なっているドライバーに遭遇しなくなりました。
ではなぜ最近、「空ぶかし」はされなくなったのでしょうか。反対になぜ以前は「空ぶかし」が必要だったのでしょうか。
結論から言うと、現在のクルマでは「空ぶかしの必要がなくなったから」です。
電動化が進んでいるクルマの世界ですが、それでもまだ、燃料を燃やした際に発生する爆発的な燃焼力を源とする内燃機関=エンジンが主力であることに変わりはありません。
そのエンジンには、燃料と空気を混ぜた「混合気」をシリンダー内に送り込む「燃料供給装置」が必要なのですが、現在ではほとんどのクルマが、燃料と空気を最適な比率で混ぜることができる「電子制御式燃料噴射装置(インジェクション)」と呼ばれる装置を搭載しています。
しかし以前は、霧状のガソリンを空気に混ぜて混合気を生み出す「キャブレター」を採用するクルマが多く、1980年代においてもインジェクションは高級車やスポーツカー、大衆車の上位グレード、スポーティグレードに設定されるのみでした。
例えばトヨタ「カローラ」においては、ガソリンエンジンがすべて電子制御式インジェクション(トヨタではEFIと呼びました)に置き換わったのは、1991年の7代目から。エントリーカーの「スターレット」では、1996年以降にようやく全車EFI化がなされたほどです。
キャブレター車の一部には「電子制御式キャブレター」もありましたが、それ以外は機構のみならず噴射量などのコントロールもすべてアナログの機械式。インジェクションのような細かな調整は困難でした。
特に、高回転型エンジンのスポーツカーやチューニングカーなどでは、アイドリングを続けるとエンジン回転数が不安定になり、混合気に着火するスパークプラグ(プラグ)に燃料がかかったり、燃焼ススが付着して「カブリ気味」になる場合がありました。
そのため、エンジンを切る直前にアクセルを「ブオン!」とひと踏みすることでエンジンに残ったガソリンを燃焼して、プラグのカブリを防ぐために行われていました。
プラグがカブったままだと、火花を飛ばすことができず次回のエンジン始動が難しくなるためです。エンジンがかからないとバッテリーも磨耗してしまいますので、クルマによっては必要な「儀式」だったと言えるでしょう。
■空ぶかしは、現代のクルマではほとんど意味がない
しかし、現代のクルマのほとんどが搭載しているインジェクションの多くは、エンジンを切った直後に燃料をカットしてしまうため、シリンダー内に混合気が入ることがありません。
しかもインジェクションでは、コンピュータが燃料と空気量の比率などをコントロールしてくれるので、難なくエンジンをかけられます。つまり「エンジン停止時の空ぶかし」は、ほとんどのクルマにおいてまったく無意味、ということになります。
なおかつて、高回転型エンジンほどにはカブリが発生しない、一般のキャブレター車でも「風習」として空ぶかしが行われることが多かったように思います。また、キャブレター車とインジェクション車が混在していた過渡期においては、インジェクション車でも空ぶかしをするドライバーは多数いました。
お恥ずかしながら筆者も、1991年に買った初のマイカーで、「4A-GELU」型インジェクションエンジンを載せた1986年型トヨタ「MR2(初代・AW11型)」では空ぶかしをしてからエンジンを切っていました。これはまさに、当時のエンジンを切る「風習」に沿ったものでした。
もし前述のような、空ぶかしが必要なクルマ以外でこれを行なっている場合、それは「昔はしていたから」という古い習慣や、「音がいいから」「レーシングカーみたいだから」「気持ち的にかっこいいから」などの理由でしかありません。空ぶかしは燃料の無駄になるだけでなく、停車場所によっては近隣への迷惑となることもありますので、避けたほうがよいでしょう。
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