本当に怖い「ハイドロプレーニング現象」なぜ起きる? 制御不能時にどう対応? 溝が減ったタイヤは要注意な訳
くるまのニュース / 2023年6月11日 14時10分
雨の日が多くなる梅雨の時期は、クルマの運転にはとくに注意が必要です。なかでも雨天時に起こりやすい「ハイドロプレーニング現象」は事故に繋がる恐れもあります。どう対処したら良いのでしょうか。
■「ハイドロプレーニング現象」って一体何?
雨の日の運転は、視界の悪さからくる情報不足やスリップなどの危険がともないます。
JAF(日本自動車連盟)によると、雨の日の運転は晴天時と比べると交通事故の確率が約5倍にも上昇するというデータもあります。
また、雨の日はブレーキの制動距離が長くなりやすいこともあり、運転にはより一層注意を払う必要があります。
そんな雨の日の運転でとくに気を付けなければいけないのは、「ハイドロプレーニング現象」です。
ハイドロプレーニング現象とは、水たまりなど水はけの悪い場所の上をクルマが通過するとタイヤの排水が追いつかず、タイヤと路面の間に水の膜が生じることで浮いたような状態になり、コントロール不能に陥る現象を指します。
近年のクルマは、タイヤや電子制御の性能が向上したこともあり、スリップしにくくなっていますが過信は禁物です。
とくに高速道路ではハイスピードで走行することからハイドロプレーニング現象が起こりやすいだけでなく、コントロール不能になってパニックに陥った時にハンドル操作を誤り、スリップして衝突や転倒といった大事故に繋がりやすいのです。
ハイドロプレーニング現象を防ぐ対策として、水が溜まりやすいアンダーパスやわだちでは減速したり、そういった場所を迂回するなどが有効でしょう。
それでも走行中にハイドロプレーニング現象が発生したら、どのように対応すれば良いのでしょうか。
水たまりを通過時にハンドル操作やブレーキ操作を受け付けないハイドロプレーニング現象を感じたら、慌てずにアクセルを戻しつつ、ゆっくりハンドル操作を行ないます。
ここで急ハンドルや急ブレーキ操作をすると、水が溜まった箇所から抜けた際にスピンする危険性が高まるので、グリップ力が戻るのを確認しながら少しずつ行なうことが重要です。
■ハイドロプレーニング現象はタイヤの状態も関係してる?
重大な事故に発展することもあるハイドロプレーニング現象ですが、タイヤの状態も関係するのでしょうか。大手タイヤメーカーであるブリヂストン広報部の担当者は次のように話します。
「ハイドロプレーニング現象は、水深・速度・溝の深さに影響をうけます。タイヤに関しては、溝が浅くなると、路面とタイヤの間にある水を掻き出す量が減るため、浮きやすくなります。
一般的に溝の深さが4mmを切ると急激に浮きやすくなり、制動距離が増すといわれています。そのため、溝の深さが4mmを下回っているとハイドロプレーニング現象を引き起こす危険性も高まります」
高速走行時はタイヤの排水が追い付かなくなってスリップしやすい
新品のタイヤの溝は約8mmですが、半分以下になると排水力とグリップ力が著しく低下するので、劣化したタイヤは交換することが望ましいです。
溝をチェックする際には、同時にヒビ割れのチェックと適正な空気圧の確認も行なうとより安心でしょう。
また、雨の日で濡れた路面を走行する際はハイドロプレーニング現象のほかにもスリップなどのリスクがありますが、最近のタイヤには何か対策が施してあるのでしょうか。前出のブリヂストン担当者は次のように話します。
「雨天時にスリップしないようにするためには、タイヤの排水性と濡れた路面でのグリップ性能が重要になります。
これらの性能でブリヂストンが開発時に工夫している点として、排水性は、『ULTIMAT EYE』というシミュレート&計測技術を用いて、水の流れを再現しながら最適なパターンを設計しています。
ウェットグリップは、『ナノプロテック』という技術を用いて、ゴムの構造をナノレベル(10億分の1)でコントロールしながら開発しています。
この技術を用いて作られたものを実車試験で確認し、社内基準を満たすレベルのものが実際の商品として、市販されています」
※ ※ ※
近年では、水の溜まりにくい透水性の高いアスファルト舗装が高速道路を中心に採用されていますが、ゲリラ豪雨などでは急激に水位が増すこともあり、ハイドロプレーニング現象による事故が発生することも少なくありません。
路面状況が悪い状態で走行するときは、急な操作にも対応しやすいスピードを抑えた運転が重要だといえます。
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