トヨタの「ハリアー」なぜ売れ続ける? 豪華な内外装デザインでも価格はそこそこ? コスパ高い「ラグジュアリーSUV」が人気のワケ
くるまのニュース / 2023年6月12日 10時10分
2023年5月の乗用車新車登録台数ランキングにおいて、単独の車種名称としてSUVのトップに輝いたトヨタ「ハリアー」。その人気の秘密はどこにあるのでしょうか。
■トヨタ「ハリアー」が好調? 何が人気の理由なのか
2023年5月の乗用車新車登録台数ランキングにおいて、単独の車種名称としてSUVのトップに輝いたのがトヨタ「ハリアー」。6193台を登録し、ランキング10位でした。
6193台という登録台数は、なんと前年同月比194.3%。伸び率に驚きますが、これは急激に販売が伸びたのではなく、部品不足によって生産減が続いていた1年前に比べて生産の状況が大幅に改善された結果といえるでしょう(現在の新車登録台数ランキングは人気を直接反映しているのではなく「生産できた台数」のカウントと捉えるのが正解です)。
実は今年に入ってから、ハリアーは単独車種名ごとのカウントとしては、登録台数がSUVトップの状態が続いています。最高位は3月の6位で登録台数1万1028台、前年同月比166.5%でした。
しかし、そんな状況になったのは今年に入ってから。昨年までは「ライズ」が単独車種名におけるSUVのトップの常連で、2022年通年(1月~12月)の状況を見ると、ライズが8万3620台を登録して年間登録ランキング5位だったのに対し、ハリアーはその半分以下の登録台数3万4182台で同18位でした。
何を隠そうハリアーの3万4182台という数字は今年の1月から5月までの登録台数(3万6947台)ですでに超えており、すなわちハリアーのデリバリーの勢いは大量に抱えていたバックオーダーを解消すべく今年に入って飛躍的に伸びているのです。
とはいえ、単に生産状況が回復したというだけではランキングの上位には食い込めません。そもそも車種自体に人気がなければ、生産台数は増えません。ハリアーは、人気がある上で生産が回復基調にあることで現在の状況になっているのです。
4世代目となる現行ハリアーが登場したのは2020年6月。すでに3年が経過しモデルライフ中盤に差し掛かっているので「新しいモデル」とは言い難いのですが、それにも関わらず高い人気をキープしている理由はどこにあるのでしょうか。
ハリアーの特徴であり魅力は、まず都会的なSUVということでしょう。
スタイリングはエレガントで泥っぽさは一切なく、オフロードよりも銀座や高級ホテルのほうが似合うほど。また今どきのSUVとしては一般的な、フェンダーのタイヤ周囲を覆う樹脂製部品がないのも特徴的です。
そのうえで、インテリアの上質さも魅力。ラグジュアリーなインテリアを持つSUVは近年では珍しくありませんが、馬の鞍をイメージしたセンターコンソールをはじめ、歴代ハリアーから踏襲された独特の“上級テイスト”が多くの人の支持を得ているといえるでしょう。
しかも価格は312万8000円からで、インテリアの質感が高まり装備も充実する「G」グレードでも350万円強からと、軽自動車の見積もりが200万円を超えることもある昨今の状況を考えると、比較的抑えられていると感じられます。この点も人気の理由と考えられます。
内外装に価格以上の高級感があること。それが所有欲を満たしてくれること。それがハリアー人気の大きな理由にとなっているのです。
一方で走ってみると、快適性の高さに唸ります。乗り心地がいいだけでなく、ガソリン車もハイブリッドモデルも動きが滑らかで同乗者がリラックスできる空間を作っているのは、多くの人の支持につながっているでしょう。
また、燃費の良さもライバルに対する大きなアドバンテージ。最大で22.3km/Lというハイブリッドモデルはクラスをリードし、15.4km/Lのガソリン車も兄弟車の「RAV4」と並んでクラストップ水準です。
まとめると、価格以上の高級感があって所有欲を満たしてくれるうえに、快適性は高く燃費でも満足度が高い。それがハリアー人気の秘密といえます。
かつてバブル期には、トヨタ「マークII」が爆発的なヒットを記録しました。その理由は「比較的手ごろな価格ながら高級感あふれる仕立てであり、知り合いや近所の人に『いいクルマを買ったね』と思われる」という、なんとも欲を満たす絶妙な商品企画だったからでした。ハリアーはその現代版と言っていいでしょう。
■そんなハリアーに欠点はないのか?
多くの人にとっては、欠点と呼べるほどのものはないでしょう。しかし、筆者のような運転好きにとっては少し物足りない部分もあります。それはドライバビリティ(=ドライバーに対する車両の応答性)です。
トヨタ「ハリアー」に欠点はないのか
たとえばガソリン車は2.0リッターエンジンにCVTを組み合わせますが、スムーズなのは間違いない反面、パワー感もアクセル操作に対する反応もおとなしく、運転する歓びはあまり感じられません。その部分は、ライバルであるマツダ「CX-60」のガソリン車やディーゼル車に劣っています。
ハイブリッドモデルでも、日産「エクストレイル」ほどのダイレクト感やキレ、そして伸び感がなく、比べると物足りない印象です。
またハンドリングでも、残念ながらエクストレイルやCX-60、そしてホンダ「ZR-V」などの躍動感と楽しさは感じられません。
今後のマイナーチェンジ、もしくはフルモデルチェンジなどでそこが改良されれば、より魅力的なクルマとなるでしょう。
ところで、冒頭では「単独車種名でSUVの1位」としたハリアーですが、実はそれを上回る登録台数を稼いでいるSUVもあります。
それはトヨタ「ヤリスクロス」。自動車販売協会連合会のランキングにおいては「ヤリス」に含まれていますが、ヤリス・ヤリスクロス・「GRヤリス」などのシリーズ中、ヤリスクロス単独での5月の登録台数は6740台ほどで、ハリアーを上回っています。
その人気の理由は「手ごろな価格」や「コンパクトなボディサイズ」と考えられ、ハリアーが売れている理由とは全く異なるものといっていいでしょう。
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