驚き!? トヨタが「BEV電池戦略」を一挙公開! 「BEV価格」が一気に安くなる!? 航続距離もかなり伸びる?
くるまのニュース / 2023年6月13日 7時40分
トヨタは「トヨタテクニカルワークショップ2023」を開催しました。その際に今後のBEV展開ならび開発中の電池展開などを公開しました。
■驚き! 新型電池をドドッと公開! それぞれの特徴は?
「まさか、こんなに様々な新型電池を一気に量産する計画だなんて!」
トヨタが東富士研究所で開催した「トヨタテクニカルワークショップ2023」に参加した報道陣の多くが世界初公開された「新型電池の量産計画」に驚きました。
これで、BEVの普及が一気に進むことになるのでしょうか。
今回、実物が公開されたの新型電池は3種類もあります。
具体的には「次世代電池(パフォーマンス版)」(2026年量産予定)、「次世代電池(普及版)」(2026年~2027年量産チャレンジ)、「バイポーラ型リチウムイオン電池(ハイパフォーマンス版)」(2027年~2028年量産チャレンジ)、そして「全固体電池」(2027年~2028年量産チャンレンジ)です。
順に説明すると「次世代電池(パフォーマンス版)」とは、現行「bZ4X」用電池に比べて、満充電での航続距離は2倍となり、コストは20%減、そして急速充電については現在30分かかっている充電能力を20分でカバーできるといいます。
BEVの課題としては、「満充電での航続距離」、「コスト」、「充電インフラと充電時間」の大きく3つが挙げられますので、「次世代電池(パフォーマンス版)」では特に航続距離でのメリットが大きいことが分かります。
正極には、ニッケル・コバルト・マンガンを使う、いわゆる三元系となります。
コバルトとマンガンは、レアメタル(希少金属)として近年、価格が高騰していますので、「コバルトやマンガンの量を減らしても性能を担保できるような研究開発を進めてます」(トヨタ電池開発者)という説明です。
次に「次世代電池(普及版)」ですが、こちらは正極にリン酸鉄リチウムを用いたもの。
一般的にリン酸鉄電池は三元系電池と比べて材料コストが安いと言われています。
そのため、現行「bZ4X」用電池と比べてコストは40%減となる一方で、航続距離は20%増に留まり、急速充電の性能は30分以下。
また、正極と負極がひとつの集電体に備える「バイポーラ構造」とするのが特徴です。
ここまでを一旦まとめますと、「次世代電池(パフォーマンス版)」は航続距離と急速充電でのメリットがあるが、コストはまだ高めになりそうなため、上級BEVでの搭載が想像できます。
また、「次世代電池(普及版)」はその名の通り、コスト低減重視の電池なので、小型・中型の乗用BEVの新車価格を大きく下げることに繋がるでしょう。
さらにその先、「バイポーラ型リチウムイオン電池(ハイパフォーマンス版)」でニッケルを正極として使うパイポーラ構造があります。
これにより、「次世代電池(パフォーマンス版)」と比べて、急速充電の性能は20分と変わりませんが、航続距離をさらに10%増え、コストは10%減を実現できると言います。
こちらは、上級BEVモデルの中で使い分けされることになると予想されます。
BEV ファクトリープレジデント 加藤武郎氏
※ ※ ※
そして、全固体電池ついては、ついにその全容が明らかになりました。
これまで、自動車技術の展示会やトヨタ関連施設などで、全固体電池の基礎研究素材は展示していましたが、今回は初めて、全固体電池のセルと、複数のセルとBMS(バッテリーマネージメントシステム)を組み込んだモジュールを公開したのです。
なお、トヨタは2021年に行った技術説明で「全固体電池はハイブリッド車向けに量産する計画」と発表していました。
しかしその後、グローバルでの自動車産業界に係わる状況が大きく変化したことに伴い、全固体電池をBEVにも採用する決定を下したのです。
■ついに詳細が明らかになった全固体電池だが…メリットはどこに?
さて、一般的に「全固体電池になれば、BEVは一気に普及する」とか、「BEVの本格普及には全固体電池が必須」というニュースがテレビ・新聞・ネット・SNSなどで見受けられます。
そこで今回、トヨタの電池開発者に改めて「全固体電池のメリット」を聞いてみました。
すると「リチウムイオン電池は、正極と負極の間に液状の電解質が入っていますが、これが固体になることで、正極と負極の間のリチウムイオンの伝達性が速く、電池としての性能が高くなる」という点を強調しました。
また、電池になんらかの異常が生じ、温度が急激に上昇すると「液状の電解質は燃えるが、全固体は燃えないことが大きなメリット」という一般論については、「正確には燃えないのではなく、燃えにくい」と表現しました。
いずれしても、電池の温度管理などを行うマネージメントシステムの重要性は、液状の電解質を使うリチウムイオン電池と変わらないという解釈です。
また、課題としては状況によっては「割れる」という点も指摘しました。
リチウムイオン電池は充電や放電を繰り返す過程で電池全体の膨張と収縮が起こります。
これが液状の電解質の場合は柔軟に行えるが、全固体電池だと材質や管理状態によって固体部分が割れることもあるといいます。
こうした課題については、全固体電池については2027年~28年の量産にチャレンジするために今後、材料や構造に関する研究開発を加速させます。
以上見てきましたように、トヨタが2028年までに量産にチャレンジする5種類のリチウムイオン電池には一長一短があります。
様々な電池を公開! ユーザーのニーズに合わせた電池展開を行っていくという
これを、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)をベースとして、様々なパワートレイン搭載を可能とする「マルチパスウェイ プラットフォーム」によるBEVに搭載する、またbZ4Xから採用しているBEV専用のe-TNGAに搭載、そして今回明らかになった新工法による次世代BEVという、大きく3種類のBEVプラットフォームと上手く組み合わせることになるでしょう。
※ ※ ※
なおトヨタは新体制説明会にて2026年までに新たにBEVを10モデル投入し年間150万台の販売を目指すことを明らかにしていました。
今回トヨタのBEVファクトリーのプレジデントに就任した加藤武郎氏は、その先の具体的な販売目標も示しています。
2030年時点でトヨタBEVファクトリーが提供するグローバルBEV販売台数は、コンパクトサイズのセダン/ハッチバックが36万台、ミッドサイズのSUVが36万台、そしてラージサイズではMPV(マルチパーパスヴィークル)が12万台、SUVが60万台、セダン/ハッチバックが24万台で合計168万台とし、これにより2030年でのBEV全体の基準である350万台のうち、BEVファクトリー由来の次世代BEVの基準を170万台と設定しました。
パフォーマンス重視BEVや価格重視BEVなど、多彩なトヨタおよびレクサスBEVが2030年代に向かって次々と登場することになります。
最後に加藤武郎氏は「次世代電池を採用し、電費は世界Topに拘り、稼いだ原資で、お客様の期待を超える商品力向上を図り、収益を確保します。ぜひ『クルマ屋がつくるココロ揺さぶるバッテリーEV』にご期待下さい」と締めました。
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